2011年度年会・総合講演と企画特別講演
総合講演
2011年度日本数学会賞春季賞受賞記念講演
志甫 淳(東大数理) |
過収束アイソクリスタル 概要 収束アイソクリスタルとは正標数の代数多様体から定まるp進解析空間上に定義されるある種のp進微分方程式である.過収束アイソクリスタルやp進微分方程式に対してAndré, Christol, Mebkhout, Kedlayaらにより証明された結果および筆者による関連する結果について説明する. キーワード 過収束アイソクリスタル, p進微分方程式 Abstract |
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中島 啓 (京大数理研) |
インスタントンの数え上げとドナルドソン不変量 概要 インスタントンのモジュライ空間を用いて定義されるDonaldson不変量と、モノポールのモジュライ空間を用いて定義されるSeiberg-Witten不変量が等価であるという、Wittenの予想は、未だ未解決です.この予想を、複素代数曲面の場合に証明したGöttscheと吉岡氏との共同研究について、紹介します.また、この研究で幾度ともなく使われた固定点公式について、専門外の方に分かるように紹介を試みます. キーワード インスタントン, ドナルドソン不変量, モノポール, サイバーグ・ウィッテン不変量, 固定点公式 Abstract |
企画特別講演
特別招待講演(台湾数学会)
王 金 龍 (国立台湾大数学) |
Analytic continuations on quantum cohomology 概要 キーワード Abstract |
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筬島 靖文 (BNPパリバ証券) |
数理ファイナンスと実務への応用 概要 ボラティリティスマイルのモデリングは,実務的にも中心的な課題のひとつで、オプション市場の高度化と共にそのモデルも進化を続けている.また,数学的にも,多様体上の熱核展開や,マリアバン解析を用いた漸近展開理論と結びつくなど,興味深い問題を提供し続けている.この講演では,そうしたいろいろな側面を解説していきたい. キーワード ボラティリティスマイル, 確率解析, ローカルボラティリティモデル, 確率ボラティリティモデル, マリアバン解析, 漸近展開 Abstract |
特別招待講演(日本応用数理学会)
櫻井 鉄也(筑波大システム情報工) |
非線形固有値問題に対する周回積分を用いた数値解法 概要 非線形固有値問題は,時間遅れをともなう微分方程式の安定性解析,量子ドットの電子状態計算,粒子加速器の設計などさまざまな分野で現れる.これらの数値シミュレーションや解法で現れる行列は大規模になることが多く,並列計算機での利用を想定した数値計算手法が求められる.本講演では,解析的行列関数の固有値問題に対して,周回積分を用いた解法を紹介する.この方法は階層的な並列構造をもつため,超並列型のクラスタシステムに適しており,とくに大規模計算で性能を発揮する.これまでモデル化の段階で非線形固有値問題への帰着は避けられる傾向があったが,効果的な解法を提供することでモデル化の制約が低減されることが期待される. キーワード 非線形固有値問題, 周回積分, 並列解法 Abstract |
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小 磯 深 幸 (九大数理) |
非等方的平均曲率一定曲面の幾何 概要 曲面の各点の向きに依存して決まる非等方的表面エネルギーの臨界点である非等方的平均曲率一定曲面を,微分幾何的立場から紹介する.また,軸対称なエネルギー汎関数に対し,非等方的平均曲率一定回転面の表現公式を与え,平行な二平面上に自由境界を持つ曲面に対するエネルギー極小解を決定する. キーワード Wulff 図形, 非等法的平均曲率 Abstract |
内山 充 (島根大総合理) |
Loewner の定理と応用―行列順序,多項式系,ガンマ関数,Korovkinの定理― 概要 Karl Löwner はプラハからアメリカに渡ったのち Charles Loewner と改名した. Loewner は実関数 $f(t)$ による「関数計算」によって定義される行列(作用素)関数 $f(X)$ の単調性を $f(t)$ の解析接続によって特徴づけた. この定理を嚆矢として発展した作用素不等式, 多項式の零点のmajorization, 直交多項式, ガンマ関数, Korovkin 定理への応用を紹介することがこの講演の目的である. キーワード Loewner の定理, 作用素単調関数, マジョリゼーション, 多項式, ガンマ関数, Korovkin の定理 Abstract |
宮西 正宜 (関西学院大理工) |
ホモロジー平面と関連する話題―アフィン代数幾何学の発を垣間見る― 概要 ホモロジー平面と代数幾何学の関連は,約40年前にC.P. RamanujamのAnn. of Math.論文で,消去問題と関連して見出された.位相的には複素アフィン平面と同じ性質をもつ非特異な代数曲面であるが,代数幾何学的性質はかなり異なった性質をもっている.それらは消去問題だけでなく,ジャコビアン予想や多項式に関係する問題の正否を判断する試験材料としても価値がある.最近になって理論のおおよその概要が見えてきたので,その内容を解説する.それらはアフィン代数幾何学と呼ばれる分野の発展と深く結び付いており,代数的変換群論や特異点論などとも関係している. キーワード ホモロジー平面 Abstract |
吉川 謙一 (京大理) |
解析的捩率とBCOV予想 概要 3次元Calabi-Yau多様体上の楕円曲線の数え上げの母関数とそのミラー族の解析的捩率の等価性を主張するBershadsky-Cecotti-大栗-Vafaの予想を解説する. キーワード 解析的捩率, 3次元Calabi-Yau多様体, BCOV予想 Abstract |
松村 昭孝 (阪大情報) |
粘性と熱伝導性を持つ理想気体の一次元運動の長時間挙動について 概要 キーワード Abstract |