日本数学会出版賞

顕彰事業・日本数学会出版賞

日本数学会出版賞

受賞者リスト

第19回受賞者リスト(2023年度)

岡本健太郎『アートで魅せる数学の世界』(技術評論社、2021年)
美しい図版に溢れた魅力的な本である。数学の世界には視覚的に美しいものが数多く存在する。本書は視覚をきっかけとして数学の世界に存在する興味深い対象を紹介する著作で、各対象の背景にある数学的な内容を、まったく手を抜かずに、しかもわかりやすく解説する姿勢が貫かれている。さらに折り紙と関連する作業や、表計算ソフトを用いたグラフィックの演習など、単に見るだけではなく読者が自ら数学的対象を観察し、考えることができるような工夫がなされている。五感を通して数学を楽しむ機会を提供する良書であり、数学の普及に大きく貢献するものと期待される。
飯高茂
飯高茂氏は代数幾何学に関する本格的な教科書や入門書を執筆し、その分野の研究と教育において大きな役割を果たすとともに、数学を専門としない一般の読者にも楽しめるような書籍を執筆し数学の普及に貢献してきた。また、様々なシリーズの編集にも携わっており、その中の一つであるシリーズ「数学のかんどころ」は素朴な話題から専門的な対象までを取り上げ、数学ファンから専門的な数学を学び始めた学生まで幅広い層に向け、読者を引き込む工夫がなされた優れた書籍を多数刊行している。飯高氏の長年にわたる精力的な出版活動による数学の研究・教育・普及への寄与は出版賞に値するものである。
梅田亨
梅田亨氏による日本語の単行本には、月刊誌「数学セミナー」の連載から生まれた「徹底入門解析学」、「森毅の主題による変奏曲(上)(下)」の他に、放送大学のテキスト「代数の考え方」がある。いずれの著作も啓蒙的である一方で、読み物としての魅力にも溢れている。教科書でとり上げられる内容を扱ってはいるが、そこには独自の切り口による警句が満ちている。「連続函数のリーマン積分可能性には一様連続性が必要」だという<迷信>についての「歴史的」考察はその一例である。「思う存分時間をかける贅沢を味わってほしい」との意図のもとに書かれた、決して単純に「わかりやすい」わけではない本によってこそ伝えられる数学の醍醐味もある。梅田氏の著作は、学生のみならず広い分野の理系の研究者、そして数学ファンにとって貴重な資料であるだけでなく、研究・教育の道標であり、学問の深い喜びまでも提供してくれる。また共著「ゼータの世界」や共編著「多変数超幾何函数」などの著作活動を通しても、梅田氏の数学の教育・普及への貢献は大きく、出版賞に相応しいものである。

第18回受賞者リスト(2022年度)

加藤十吉
加藤十吉氏は位相空間、位相幾何学に関する良書を多数著し、数学を専門とする学部生、大学院生の教育・研究に多大な貢献をした。「集合と位相」は直感と結びつけながら無限と連続について理解を深めることを意図して著された教科書であり、見通しの良い明確な文章で書かれている。「位相幾何学」は線型代数以外の予備知識を仮定せずに読めるように構成されているが、単体的複体のホモロジー論にとどまらず特異ホモロジー論についても詳しく扱っており、さらに当時最先端であった研究対象の記述においても他の和書にはない特徴を持った書籍となっている。ここで挙げた2点以外にも「トポロジー」、「組合せ位相幾何学」を著したほか「トポロジー入門」(クゼ・コスニオフスキ著)を翻訳するなど数学の教育・研究に寄与しており、その功績は出版賞に相応しいものである。
「紀伊國屋数学叢書」
編集委員伊藤清三、戸田宏、永田雅宜、飛田武幸、吉沢尚明の各氏のもと、1974年から94年にかけて全33巻計35冊刊行された本叢書は、「現代数学の発展にとって重要であり、また既刊書で必ずしも重点が置かれていない」テーマを選ぶという方針のもと、一流の数学者によって執筆された。この様な編集方針は実に先駆的なものであり、出版された当時の最先端の成果の解説を含んだ各巻はオリジナリティが高く、現在まで活用され続けている。高水準で類を見ない本叢書は出版賞に相応しいものである。株式会社紀伊國屋書店におかれましては、本叢書刊行に比肩しうる貢献を継続していただくことを願いつつ、本叢書を現在もオンデマンド版として提供し続けていることに敬意を表したい。

第17回受賞者リスト(2021年度)

笠原晧司
笠原晧司氏は、大学1、2年生を主な対象とした教科書・読み物の執筆を通じて広く理学系の教養教育に多大な貢献をした。とくに、「対話・微分積分学」、「新微分方程式対話」などの会話形式による著作は、適切な題材を提供しつつ、初学者が抱く疑問に親切に答え、数学を楽しく学ばせてくれるものとなっている。1970年代以降今日に至るまで、数学の教育活動において果たした役割は、本賞に相応しいものである。
中央大学理工学部数学教室代表 三松佳彦、髙倉樹
集会 "ENCOUNTERwithMATHEMATICS"(以下 EwM)は1996年に三松佳彦氏により中央大学数学科で始められ1997年から髙倉樹氏も加わり現在までに74回開催されている。数学研究の最新の話題が専門家によって、深く、かつ、わかりやすく解説される場は、数学に携わる多くの研究者に分野にとらわれない交流を促し、また学部生、大学院生を含む次世代の研究者への大きな刺激となってきた。中央大学数学教室の後援のもとで今年度23年目をむかえるEwMを、三松、髙倉両氏が高い見識をもって安定的に運営していることは顕彰に値するものである。なお、出版賞の対象である著作活動としては、広く数学の普及活動という意味で授賞対象となった事例が種々あること、そしてEwMのホームページを通じて公開されている講義録の学術的価値をも考慮し、EwMを出版賞の対象とした。

第16回受賞者リスト(2020年度)

神保道夫『量子群とヤン・バクスター方程式』(丸善出版、2012年;シュプリンガー、1990年初版)
量子群の概念の登場後、早い時期に日本語による優れた教科書が存在したことはこの分野の研究者層の厚みを確保するのに貢献したものと思われる。最短コースで量子群の基礎を学ぶには現在でも最も適している。一つの分野へ大きな影響を及ぼした著作である。
冨永星
一般読者向けに書かれた海外の啓蒙書や数学入門書を数多く翻訳し、数学の普及に大きく貢献していると評価できる。翻訳は適確かつ分かりやすく、たいへん読みやすいものである。氏の訳本は数学の様々な分野におよび、良質で特徴のある原著が選ばれている。
山本義隆『小数と対数の発見』(日本評論社、2018年)
著者は科学史方面に多数の著作があり、例えば「古典力学の形成」では微分積分学の成立の過程を深く考察している。対象作では、天文学をはじめとする科学の発展に伴って、小数と対数の概念が確立していく様子が丁寧に描かれている。一次資料に丹念にあたりながら、分かりやすい説明によって読者を導く良書である。

第15回受賞者リスト(2019年度)

Tokyo Journal of Mathematics
Tokyo Journal of Mathematicsは河田敬義氏らにより1978年に刊行され、以来、東京地区の公立・私立大学により維持運営されている。国内で刊行される雑誌として非常に大きな役割を果たしており、日本における数学研究の幅と厚みの双方を拡大することに貢献してきた。多数の大学数学教室が合同して一つの数学雑誌を運営するという数学雑誌の今後の方向性を指し示すものと評価され、本賞に相応しいものである。
本間龍雄
位相幾何学・トポロジーという概念がほとんど知られていない時期から、一般向けに、これらの概念を紹介する書物を出版し、トポロジーの面白さ、不思議さを多くの人々に伝えることに大きく貢献してきた。本間氏の啓蒙書は執筆当時での最新の研究成果を盛り込んでいる点に大きな特色があり、今日でも学部生の教育に活用できる水準であることも氏の著作の特色であり、本賞に相応しいものである。
斎藤毅、河東泰之、小林俊行 編『数学の現在』(全3巻、東京大学出版会、2016年)
数学の研究を志す人や、数学を楽しみとする一般の数学ファンにとって、本当の数学はかなり遠くに位置し、それに触れる機会はほとんどない。本書は大学3年生・4年生あるいはそれらより若い読者を対象として、執筆者の各研究分野をオムニバス形式により、できる限り平易に解説している。専門的な数学を解説する書物は難度が高く、その一方で数学ファンを対象として出版される書物は単なる読み物にとどまることが多い。非専門家向けに書かれた書物で、数学の広い領域に渡り、深淵な数学の本質に迫るものは近年ほとんど見当たらなかった。本書は、この溝を埋める特徴的なものに仕上がっており、数学の教育に対する大きな貢献と評価され、本賞に相応しいものである。

第14回受賞者リスト(2018年度)

遠藤寛子『算法少女』(ちくま学芸文庫、筑摩書房、2006年/初版は岩崎書店、1973年)
安永四年に刊行された和算書「算法少女」の成立をめぐる史実を下敷きにして、千葉あきという13歳の少女を主人公に、江戸時代において和算がいかに庶民のあいだに広まっていたかを生き生きと描き出した少年少女向けの歴史小説である。本書は、和算のみならず学問の魅力が一般向けに描かれていること、和算の雰囲気をなるべく正確に伝えていること、本書を原作とした漫画・アニメーション作品も発表されていることから、誰にでも楽しめる数学啓蒙書であり、本賞に相応しいものである。
受賞者のことば(「数学通信」23巻2号)
奥村晴彦、黒木裕介『LaTeX2e美文書作成入門』(技術評論社、第7版、2017)
本書は1997年に初版が刊行されて以来、改訂を重ねているロングセラーの書籍である。LaTeXのオーソドックスな基礎知識かつ最新情報を得られる書籍として定評があり、長年にわたって数学関連分野におけるLaTeXの普及に多大な貢献をしたと考えられる。
日本語LaTeXは本書で紹介されているアスキー系のpLaTeXのほかに、NTT-JTeXなど多くの先達の努力の積み重ねによって発達したものであり、そうした過去の取り組みについても大いに評価しなければならないが、本賞が「出版活動などの著作活動」を対象としていることに鑑みて、本賞に相応しいものである。
受賞者のことば(「数学通信」23巻2号)

第13回受賞者リスト(2017年度)

上智大学数学講究録(上智大学大学院理工学研究科理工学専攻数学領域)
これは上智大学理工学部旧数学科により出版されていた大学院生向け講義録のシリーズである。私学の厳しい制約のある中で、幅広い分野にわたり、しかも長い年月を通じて継続的に編集・出版されてきたという点に格別な尽力が認められる。一数学教室の活動の記録に留まらず、基本的な文献として貴重なものや、成書となっていない最新の研究内容を紹介したものが含まれているなど、数学の研究・教育および普及への貢献が著しい。さらに各巻の電子化が促進されれば、引き続き大きな貢献が期待される。
受賞者のことば(「数学通信」22巻2号)
松本幸夫『多様体の基礎』、『Morse理論の基礎』、『4次元のトポロジー』、『トポロジー入門』など
どの入門書も丁寧で分かり易いと高い評価が得られており、いずれも長く読み継がれている。教科書として採用されることも多く、また自習書としても広く利用されている。読み手を楽しませるような記述や工夫された図版なども大きな特徴であり、単なる良い教科書というレベルを遥かに超えたインパクトのある解説は、初学者から専門家まで多くの人々に多大な影響を与えている。このように松本氏の著作は大学教養数学から現代先端数学への橋渡しという非常に重要な役割を果たし続けており、数学の研究・教育および普及活動への貢献が著しいと認められる。
受賞者のことば(「数学通信」22巻2号)
中村義作『マンホールのふたはなぜ丸い?』、『常識を越えた数の世界』、『美の幾何学』、『エッシャーの絵から結晶構造へ』など
組合せ数学・有限数学に関する専門的なものから、一般読者向けの平易なものまで幅広く、期間も1950年代から最近までと長きにわたり、様々な数学関連書を上梓してこられている。簡潔ながらユーモラスで、数学特有のひらめきを得たときの楽しさを雄弁に語る氏の筆致は独特である。版元を変えて長く読み継がれている解説書もあり、またオリジナリティーあふれる数学パズル集で数学の楽しさに開眼した読者も少なくない。翻訳者、翻訳監修者として携わった著作も多数有り、数学文化の普及に果たされた功績は非常に大きい。
受賞者のことば(「数学通信」22巻2号)

第12回受賞者リスト(2016年度)

秋山仁
秋山仁氏は、教育・研究の経験を生かした参考書・教科書、テレビ・ラジオ番組に関連したテキスト、グラフ理論・離散数学の専門書などの執筆により、小中学生を含めた広範囲の読者に数学の魅力や重要性を分かりやすく伝えてこられた。30年以上にわたる活動の中で著された, 他に類例をみないほど多数の著作の中には、Mari-Jo Ruiz 氏との共同の著作 A Day's Adventure in Math Wonderland (World Scientific 2008) のように、複数の言語に翻訳され、世界中の人々に愛読されているものも含まれている。秋山氏の出版活動を通じた貢献は出版賞に相応しいものである。
受賞者のことば(「数学通信」21巻2号)
内村直之 『古都がはぐくむ現代数学―京大数理解析研につどう人びと』(日本評論社)
本書は、京都大学数理解析研究所を舞台として、創立から半世紀にわたって繰り広げられてきた、戦後の日本の数学者たちによる研究最前線での活動の様子を、いきいきと描き出した書物である。綿密な取材と深い数学の理解にもとづいて書かれた本書は、現代数学の最前線の様相を、一般読者のみならず、数学をまなぶ学生たちや数学研究者からも、読み応えのある書物として迎えられている。本書は、日本の数学啓蒙書の新しい地平を切り拓いており、出版賞に相応しいものである。
受賞者のことば(「数学通信」21巻2号)
高橋礼司
高橋礼司氏は、20年を超えてフランスでの学究生活を経験し、研究者として初期のブルバキメンバーの多くと個人的に親交をもっておられる。著書『複素解析』と『線型代数講義―現代数学への誘い』はいずれも、古典に対する深い理解と透徹した理論構成に基づいて書かれており、教科書の枠を超えて数学の奥深さを平易な言葉で綴った名著である。また、J. デュドネ『人間精神の名誉のために―数学讃歌』、M. マシャル『ブルバキ―数学者達の秘密結社』や、最近のJ.-F. ダース他『謎を解く人びと―数学への旅』などの洗練された翻訳は、フランス数学への深い理解があって初めて可能となったものであり、日本の読者に現代フランスの数学の文化と思想に直に触れる機会を提供している。高橋氏の長期にわたる著作活動は、数学文化の架け橋として日本の数学界にとって貴重な貢献であり、出版賞に相応しいものである。
受賞者のことば(「数学通信」21巻2号)

第11回受賞者リスト(2015年度)

伊東俊太郎
伊東俊太郎氏は、科学史・数学史の精緻な研究により培われた素養を生かして、多くの著作を発表されている。『ギリシア人の数学』、『近代科学の源流』、『十二世紀ルネサンス』等では、数学に主眼をおいた科学史の専門的研究の成果を、一定の水準を保ちつつ、広範囲の読者層に見通しよく紹介された。日本での数学史研究の画期をなす『ユークリッド 原論』の邦訳も分担された。また『数学の歴史II 中世の数学』、『科学史技術史事典』等の編集・編纂に関わり、後進を育成しつつ、この分野に親しみ、また研究するための指針を与える書籍を送り出された。数学の歴史という分野への、著作を通じた多面的な寄与は、他者の追随を許さないものである。
受賞者のことば(「数学通信」20巻2号)
赤攝也
赤攝也氏は1950年代に『数学序説』、『集合論入門』、『確率論入門』を上梓され、多くの数学志望の学生に影響を与えた。これらの書籍はいずれも文庫化されており、時代を超えて読み継がれている。
この後も、『微分学』、『積分学』、『変分学』、『基礎論』などの教科書、概説書の執筆をはじめとして、B.H. アーノルドの『トポロジー入門』などの多数の翻訳を手掛けられた。それと同時に、培風館の『新数学シリーズ』などの叢書の編纂や日本評論社の雑誌『数学セミナー』の編集顧問も務められた。これらの多彩な出版活動を通して、我が国の数学文化の普及と発展に尽くされた功績はまことに日本数学会出版賞にふさわしいものである。
受賞者のことば(「数学通信」20巻2号)
一松信
一松信氏は、『解析学序説』などの教科書、『数値解析』などの専門書、そして『石取りゲームの数理』などの啓蒙書と、長年にわたり数学の極めて幅広い分野において、数多くの、しかも良質の専門書、教科書、啓蒙書を執筆されてきた。その中には、『正多面体を解く』や『高次元の正多面体』といった日本では先駆的な試みの著書、マーチン・ガードナーの『数学魔法館』のような多数の一般向けの啓蒙書の翻訳、そして森北出版の『数学選書』や『新数学シリーズ』のようなシリーズ本の監修も含まれている。このような精力的な著作活動による日本の数学の研究、教育、普及への寄与は非常に大きなものがある。
受賞者のことば(「数学通信」20巻2号)

第10回受賞者リスト(2014年度)

結城浩
「数学ガール」シリーズは、フェルマーの定理、ガロア理論、ゲーデルの不完全性定理といった、一般の読者にはなじみがないが、数学的には深くおもしろい題材を正面から扱いながら、青春小説としても魅力ある話としてまとめられており、多くの読者を獲得している。「数学ガール」という言葉は、本書によって社会に広まり、広く市民権を獲得するに至った。このことは特筆に値する。また結城氏は「数学文章作法基礎編」などの数学に関連した著作活動も活発に行なわれており、若い世代へ数学のおもしろさや考え方を広めた功績は大きい。これからもますます活発に活動されることを期待している。
受賞者のことば(「数学通信」19巻2号)
雑誌「現代数学」(現代数学社)
1968年に創刊され、その後「BASIC数学」「理系への数学」への名称変更を経て、再び「現代数学」の名称で刊行され続けている。数学のおもしろさを一般の読者によく理解できる形でつたえる雑誌として、40年以上奮闘し、連載記事もさまざまな形で単行本化されてきた。この雑誌が数学の普及に果たした役割を高く評価するとともに、創刊時の名称に戻った現在、さらなる飛躍を成し遂げられることを期待する。
受賞者のことば(「数学通信」19巻2号)
金重明 著『13歳の娘に語るガロアの数学』(岩波書店)
本書は13歳の娘に数学を解説する形をとりながら、ガロア理論の考え方を、数学に興味をもつ一般の人へ、多くの例を通して解説した良書である。著者は数学者ではなく、おもに歴史に題材をとる小説を著されており、和算をテーマにした小説もある。そのような著者が、ガロア理論の素晴らしさを学び、さらに歴史小説家としての経験も生かして執筆されたのが本書である。他にもガウスの平方剰余を扱った続編を刊行しておられるが、このような本は、数学を専門にしている人にはなかなか書けないかもしれない。著者のこれからの執筆活動にも期待する。
受賞者のことば(「数学通信」19巻2号)

第9回受賞者リスト(2013年度)

砂田利一
授賞理由: 「ダイアモンドはなぜ美しい」「バナッハ・タルスキーのパラドックス」などの啓蒙的著作を含む幅広い活動により、数学の魅力を多くの人々に伝えてきた功績は顕著である。
受賞者のことば(「数学通信」18巻2号)

第8回受賞者リスト(2012年度)

「現代数学の系譜」全14巻 15冊(共立出版)
1969年から28年間に及ぶ息の長い企画であり、ヨーロッパ近代の数学を原典に即して概観することができる貴重な叢書として、完結に導いた点を高く評価いたします。
受賞者のことば(「数学通信」17巻2号)

第7回受賞者リスト(2011年度)

勉誠出版、東アジア数学史研究会 編、代表:岡本和夫(川原秀城/渡辺純成/佐藤賢一/安大玉) 「関流和算書大成」
和算書の膨大なコレクションである「関算四伝書」は、関流の和算家集団の研究成果を知る上では質・量 ともに随一の資料群である。これを影印版として出版公開したことは和算の研究に大きく寄与するものである。
受賞者の言葉(「数学通信」16巻3号)
小学館、企画制作/ベネッセ教育研究開発センター、企画制作/慶応義塾大学佐藤雅彦研究室、 編集・執筆/佐藤雅彦+ユーフラテス「日常にひそむ数理曲線 DVD-Book」
放物線や双曲線、クロソイド曲線などの数理曲線を、身近な日常生活の中に発見し、巧みな演出で映像化した本書は、 実に見やすい上に、数学的思考の普及に資するところ大である。
受賞者の言葉(「数学通信」16巻3号)

第6回受賞者リスト(2010年度)

室井和男 著「バビロニアの数学」
古代バビロニアの数学史についての、国際的に見ても高い水準にあるすぐれた研究成果を、 一般読者にも読みやすい文章で著し発表した。
受賞者の言葉(「数学通信」15巻2号)
NHKスペシャル「100年の難問はなぜ解けたのか 天才数学者~失踪の謎~」取材班及び春日真人ディレクター
ポアンカレ予想解決に立ち向かう数学者群像を描いたドキュメンタリー番組で数学研究の内面に迫り、 テレビメディアと活字を通じて数学の魅力と研究者の情熱に触れる好機を多くの人に与えた。
受賞者の言葉(「数学通信」15巻2号)
東北大学附属図書館「東北大学和算ポータル」
東北大学が所蔵している和算関係資料は日本有数のものであり、それらを電子化し全文画像をウェッブ上に公開する ことで資料に親しむ機会を提供するとともに、和算の研究に大きく貢献している。
受賞者の言葉(「数学通信」15巻2号)

第5回受賞者リスト(2009年度)

株式会社早川書房刊「数理を愉しむシリーズ」
早川書房はポピュラーサイエンスのジャンルで、数多くの 数学書の中から新旧の良書を選んで出版し、とくに本文庫シリーズは、 社会に広く親しみやすい形で数理科学の社会普及に大きな貢献をした。
受賞者の言葉(「数学通信」14巻3号)
高瀬正仁
オイラー、ガウス、ルジャンドルなどによる古典的著作の 優れた翻訳をはじめとした数々の執筆活動を通して、数学文化の 普及に大きな貢献をした。
受賞者の言葉(「数学通信」14巻3号)
株式会社筑摩書房刊「ちくま学芸文庫 Math & Science」
本学芸文庫は数理科学の動機付け、あるいは根底に横たわ る思想に関する良書を数多く出版し、本格的な数理科学の普及に大きな貢献をした。
受賞者の言葉(「数学通信」14巻3号)

第4回受賞者リスト(2008年度)

大竹進
永年にわたり、東京図書の編集者として、また退社後は大竹出版を設 立し、ロシア語の優れ数学書の翻訳出版にたずさわり、日本における数学の進展に 大きく寄与した。
受賞者の言葉(「数学通信」13巻2号)
山内恭彦・杉浦光夫 著『連続群論入門』
本書はリー群の表現論の入門書として歴史的な役割を果たした。 行列より始めて、リー群の表現や球関数に至る高度な内容を丁寧に解説し、数学 だけでなく物理学を学ぶ読者からも高い評価を得ている。
杉浦光夫さんの受賞お祝いのことば(斎藤正彦、「数学通信」13巻2号)
北野武
番組「たけしのコマネチ大学数学科」など社会に広範な影響を与る テレビメディアを通じ、数学の魅力や美しさを娯楽性を兼ね備えた形でわかりやす く伝え、数学の普及に貢献した。
受賞者の言葉(「数学通信」13巻2号)

第3回受賞者リスト(2007年度)

青木薫
サイモン・シン著「フェルマーの最終定理」、ジョージ・G・スピーロ著「ケプラ予想」等、幅広い層に数学への興味を抱かせる本を翻訳して、数学の普及に大きく貢献している。
受賞者の言葉(「数学通信」12巻2号)
荒井秀男
長年にわたって岩波書店の数学分野の企画・編集に携わり、岩波講座「基礎数学をはじめ、入門書から専門書まで多くの優れた数学書を世に送り出し、日本の数学の発展に大きく貢献した。
受賞者の言葉(「数学通信」12巻2号)
小林昭七・野水克己著「Foundations of Differential Geometry, I, II 」
本書は邦人が著わした世界的名著のひとつである。「接続」の概念を中心に据えることによって微分幾何の面目を一新し、純粋数学のみならず、理論物理学など数学外の諸分野にも多大の影響を与えた。
受賞者の言葉 (小林昭七) (野水克己)(「数学通信」12巻2号)
奈良女子大学附属図書館「岡潔文庫」
数学者岡潔博士の公表論文から日記や色紙に至るまでも電子化し、数学の研究や発見についての興味深い内容をウェッブ上に公開、岡潔博士の全貌に迫る一般向けにも魅力あふれた表現構成をなす優れた文庫である。
受賞者の言葉(「数学通信」12巻2号)
野崎昭弘
ユーモアあふれる、明晰な文章で著された多彩な著書により、数学者を含む多数の読者を魅了した。特に大人でさえ楽しめる「赤いぼうし」や「πの話」など青少年向けの啓蒙書は特筆に価する。
受賞者の言葉(「数学通信」12巻2号)

第2回受賞者リスト(2006年度)

齋藤正彦 著「線型代数入門」
本書は、幾何的な理解を重視し、解析的側面にも配慮のなされた、バランスの良い線型代数の教科書として、1966 年の初版以来、大学における数学教育に大きな寄与をもたらした。
受賞者の言葉(「数学通信」11巻2号)
株式会社サイエンス社刊「数理科学」
本誌は、1963 年7 月の創刊以来、数学および数学と関連する諸分野に関する解説記事を載せ、純粋数学と応用数学の啓蒙に貢献し、日本における数学とその関連分野の進展に大きく寄与した。
受賞者の言葉(「数学通信」11巻2号)
佐武一郎 著「線型代数学」
本書は、1958 年の初版以来、線形代数学の教科書としての標準を確立し、我が国の大学・理工系における数学教育の水準の向上に著しく貢献した。
受賞者の言葉(「数学通信」11巻2号)
株式会社日本評論社刊「数学セミナー」
本誌は、1962 年4 月の創刊以来、数学に関する分かりやすく工夫された解説記事を掲載し、高校生から社会人まで広く数学の魅力を伝えてきた。それによって、多数の数学愛好者を養成し、日本の数学の発展に幅広く貢献した。
受賞者の言葉(「数学通信」11巻2号)
安野光雅
自由な発想の画集やエッセイを通して、数学の考え方や不思議さを広く紹介し、さらに大人の鑑賞にもたえる幼児向けの教育的な数学の絵本を通して、数学の啓蒙活動に大きく貢献した。
受賞者の言葉(「数学通信」11巻2号)
鳴海風
著書「円周率を計算した男」,「算聖伝-関孝和の生涯」等の優れた和算家を題材とした歴史小説により、数学の魅力を多くの読者に巧みに伝え、数学の普及に大きく貢献した。
受賞者の言葉(「数学通信」11巻2号)

第1回受賞者リスト(2005年度)

楠葉隆徳、林隆夫、矢野道雄
これまであまり詳しく知られていなかった内容を、初心者にも配慮しつつ高度の専門書「インド数学研究」で紹介し、数学の研究・教育・普及に大きく貢献されました。
受賞者の言葉 (楠葉隆徳)(「数学通信」10巻3号) ・ (林隆夫)(「数学通信」10巻2号) ・ (矢野道雄)(「数学通信」10巻2号)
岡部恒治、戸瀬信之、西村和雄
学力低下に関して著書「分数ができない大学生」により極めて効果的に問題提起し、数学教育を巡る議論の発展に大きく貢献されました。
受賞者の言葉(西村和雄、「数学通信」10巻2号)
志賀浩二
数多くの数学啓発書の執筆および編集により数学の研究・教育・普及に大きく貢献されました。
受賞者の言葉(「数学通信」10巻2号)
亀井哲治郎
編集者として、数学の面白さを伝えることにより数学の裾野を広げ、また数学の最前線を一般に判り易く紹介し、数学の研究・教育・普及に大きく貢献されました。
受賞者の言葉(「数学通信」10巻2号)
小川洋子
著書「博士の愛した数式」により数学の魅力を判り易く紹介し、数学の普及に大きく貢献されました。
受賞者の言葉(「数学通信」10巻2号)