日本数学会賞小平邦彦賞
日本数学会賞小平邦彦賞
日本数学会小平賞は,生涯にわたって世界的学術業績を挙げた当会会員を顕彰する賞です。わが国の数学の水準がさらに高いものとなって欲しいとの願いから当会に遺産を寄贈された故岡田敬夫氏の遺志に沿い,2019年に創設されました。授賞は4年に1回行い,受賞者は各回4名を原則とします。
この賞の名称は,20世紀を代表する数学者の一人である小平邦彦博士にちなみます。博士は複素多様体論を創始し,代数幾何学・複素関数論・数理物理をはじめとする多くの分野に巨大な影響をおよぼしました。
太平洋戦争下の困難な時期に研究の道を歩み始めた博士でしたが,その調和解析の研究に瞠目したヘルマン・ワイルの招聘を受け,1949年プリンストン高等研究所のフェローに就任,1954 年には小平消滅定理をはじめとする業績に対し,非欧米人として初のフィールズ賞を受賞しました。
さらに当時最新の手法であった層のコホモロジー論に調和解析を適用して,複素構造の変形理論,複素曲面の分類理論といった画期的な業績を挙げました。
1968年に帰国し母校東京大学に復職すると,1975 年の退官まで7年余の間に十数名の研究者が博士の下から巣立ち,わが国が代数幾何・複素多様体論の一大研究センターとなる大きな要因となりました。晩年の博士は数学教育の重要性を訴え,模範的な教科書や味わい深いエッセイの執筆を通じて数学の普及に貢献しました。
第1回日本数学会賞小平邦彦賞
氏名 | 所属・職名 | 業績題目 |
石井 仁司 | 津田塾大学・研究員 早稲田大学・名誉教授 |
完全非線形偏微分方程式の粘性解理論 Viscosity solution theory for fully nonlinear partial differential equations |
砂田 利一 | 明治大学・教授 東北大学・名誉教授 |
幾何解析及び関連する諸分野の研究 Study on geometric analysis and related fields |
藤田 宏 | 東京大学・名誉教授 | 非線形偏微分方程式に対する関数解析学的手法の研究 Study of functional analytic methods in nonlinear partial differential equations |
森 重文 | 京都大学高等研究院・院長/特別教授 | 代数多様体の双有理分類 Birational classification of algebraic varieties |
(所属・職名は授賞発表時(2019年3月)のものです。)