数理科学振興会共同事業
在外研究奨励フェロー

Research Fellowship Promoting International Collaboration

日本数学会在外研究奨励
フェローによせて

日本数学会理事長 石毛 和弘 日本数学会理事長 石毛 和弘

数理科学振興会と日本数学会の共同事業として、「日本数学会在外研究奨励フェロー」が2025年度に発足しました。本制度は、意欲的に研究を続けている日本数学会会員の若手研究者が、海外で共同研究を行うこと、あるいは海外の機関に所属する研究者と共同研究を行うことを奨励するためのものです。毎年4人を採択し、2年間にわたり、奨励金を交付します。また、フェロー採択者は春の学会で公表します。学会での公表に合わせ、2026年度採択分からは募集期間の締切日が下記のように早まりましたのでご留意ください。それぞれの研究計画を持った若手研究者の応募を心よりお待ちしています。

かつて日本は数学の開発途上国でしたが、現在では世界の最先端を行くトップランナーを輩出する数学大国へと成長してきました。これまで日本の数学を切り開いてきた多くの数学者の中には、海外に滞在し、そこでさまざまな数学に触れることで独自の数学観を発展させてきた研究者が多くいたことは紛れもない事実です。このように発展してきた日本の数学ですが、昨今の若手数学者は海外に出て学ぶことに対して内向きではないかという懸念が一部で取り沙汰されています。一方で、現在置かれている研究環境によっては、海外に出て世界の数学に触れる機会に恵まれない研究者が多いことも事実です。

このような状況をふまえ、数学会は数理科学振興会の助けを得て、数学会会員の若手研究者が海外に出て世界の数学に接するための支援を行うこととなりました。数学会と数理科学振興会の間で、若手研究者が海外で研究することを奨励する制度の必要性が議論され、その意を受けて本制度が作られました。この制度には、これからの数学を担う若い才能たちにぜひ新しい世界を見てほしいという思いが根幹にあります。

海外滞在については、その場にいなければわからない雰囲気を感じる意味でも実際に滞在する意義は大きいのですが、一方で新しい通信手段を用いて共同研究する方法も確立されつつあります。共同研究の方法も多様化していますので、本制度では共同研究の形態にも柔軟性を持たせています。

以上は若手研究者へのメッセージですが、会員の中には若手研究者を育てる立場の方も多くいらっしゃると思います。そのような会員の皆様におかれましては、本フェローに該当する方がお近くにいらっしゃいましたら、下記募集期間にご留意の上、ぜひ声をかけて背中から後押ししていただければ幸いです。

(※)奨励金は2025年度が60万円、2026年度から100万円となります。

日本数学会理事長

石毛 和弘

日本数学会との
共同事業によせて

数理科学振興会は,1984年12月4日に財団法人として広中平祐氏により設立され,2013年11月1日に一般財団法人に移行しましたが,設立以来,数理科学の振興に努めてまいりました。

特に力を入れてまいりましたのは,高校生などの若者達への育成・啓蒙活動で,その下で育った人達によりそれらの活動は受け継がれ,現在の形に発展して来ました。また,海外での研究集会への参加や,海外からの研究者の招聘,国際研究集会開催支援にも当財団は力を注いでまいりました。日本学術振興会の科学研究費補助金(科研費)により海外から研究者を招聘することや,海外での研究を行うことは,2000年頃から可能となりましたが,それ以前は当財団による支援が海外との研究交流において大きな役割を果たしたと考えます。

国際数学者会議に関しては,1990年に京都で開催された国際数学者会議ICM90の際に,海外からの若手研究者への旅費支援を行ったのを手始めに,その後の国際数学者会議に際してのJapan Forum開催を支援してまいりました。2020年頃から,新型コロナの流行などの影響もあって,当財団の活動を制限せざるを得なくなり,選考体制や事務体制を縮小せざるを得なくなりました。そんな中でも,若者達への啓蒙活動は,従来と違った形で現在も継続しています。

数理科学振興会名誉理事 広中平祐 数理科学振興会名誉理事 広中平祐

数理科学振興会名誉理事 広中平祐

海外との学術交流に関しても,科研費ではまかなえないものに関する支援は続けておりますが,科研費の恩恵を受けられない研究者達への支援に関しては,縮小した事務体制のもとで,募集・選考が不可能でした。今回,一般社団法人日本数学会との共同事業の一環として在外研究奨励フェローを立ち上げることになり,そのような支援が可能となった次第です。また,優れた数理科学研究者に対する顕彰活動はこれまで着手できませんでしたが,日本数学会との共同事業の一環である「建部賢弘特別賞」として実施できることとなりました。

一般財団法人数理科学振興会

代表理事

ヒロナカ・エリコ

2026年度の募集予定

2026年度の募集予定

  • 202591

    募集開始
  • 20251215

    終了
  • 2026324

    採択者発表
2026年度の募集予定