第五回(2013年度)福原賞

受賞者

業績題目

石渡通徳(福島大学共生システム理工学類)
(2009年度函数方程式論分科会特別講演者)

ソボレフ臨界指数をもつ非線形楕円型・放物型方程式に対する変分法的アプローチ

高村博之(はこだて未来大学システム情報科学部)
(2013年度函数方程式論分科会特別講演者)

半線形波動方程式の解の爆発に関する研究

田中敏(岡山理科大学理学部)
(2012年度函数方程式論分科会特別講演者)

常微分方程式に対する境界値問題と解の定性的性質の研究および中立型微分方程式の研究

【選考委員会構成】
杉本充(委員長),足立匡義,利根川吉廣,小川卓克,長澤壯之,太田雅人,清水扇丈,中西賢次,林仲夫,小池達也,柴田徹太郎,小林孝行,岩崎克則,小薗英雄


受賞者

石渡通徳(福島大学共生システム理工学類)
(2009年度函数方程式論分科会特別講演者)

業績題目

ソボレフ臨界指数をもつ非線形楕円型・放物型方程式に対する変分法的アプローチ

受賞理由

石渡通徳氏は,藤田型方程式と呼ばれる半線形熱方程式の初期値・境界値問題に関して,その時間大域解が大域的有界性を持つための必要十分条件を,付随する変分的構造に着目した簡明な形で与えた.また,臨界ソボレフ指数の場合に特徴的な現象である非有界時間大域解の時刻無限大での漸近挙動の研究を行い,初期値が球対称の場合にその時間大域解が全空間での定常解をスケールした関数に漸近することを示すとともに,非有界時間大域解に対する初期値空間の構造定理を交点数非増加定理と集中コンパクト性原理を巧妙に用いて証明した.さらに石渡氏は,臨界型変分問題に由来する半線形楕円型方程式の研究の一環として,2 次元全空間における臨界ソボレフ不等式である Trudinger-Moser 型不等式の非斉次制限下における変分問題を研究し,最良定数を与える最大化元の存在,非存在に関する決定的な結果を証明した.この結果は Ruf による先行研究のギャップを埋める決定的なものであり,通常の斉次制限の入った Trudinger-Moser 不等式とは異なり最大化元が存在しないこと,そこに Gagliardo-Nirenberg-Sobolev 型補間不等式の最良定数が関与することなどを示した.この結果は変分法における最大化函数列がコンパクト性を失う要因として,非有界領域固有の最大化列の「消失」現象が取り上げられた画期的業績である.このように石渡氏の業績は,変分法解析を通じた非線形楕円型・放物型方程式の研究において大変優れたものであり,函数方程式論分科会福原賞にふさわしいものである.