第三回(2011年度)福原賞

受賞者

業績題目

片山聡一郎(和歌山大学教育学部)
(2008年度函数方程式論分科会特別講演者)

非線形波動方程式の大域的古典解の研究

高橋太(大阪市立大学大学院理学研究科)
(2008年度函数方程式論分科会特別講演者)

非線形楕円型偏微分方程式に関する非退化臨界点の研究

中野史彦(学習院大学理学部)
(2004年度函数方程式論分科会特別講演者)

シュレディンガー方程式および関連する数理物理モデルの解析学的研究

【選考委員会構成】
竹井義次(委員長),中村周,中村玄,小川卓克,長澤壯之,倉田和浩,杉本充,中西賢次,林仲夫,足立匡義,柴田徹太郎,小林孝行,木村弘信,西原健二


受賞者

高橋太(大阪市立大学大学院理学研究科)
(2008年度函数方程式論分科会特別講演者)

業績題目

非線形楕円型偏微分方程式に関する非退化臨界点の研究

受賞理由

高橋太氏の研究は非線形偏微分方程式の変分法的研究を中心に幅広い分野にまたがり,$H$-system の解の多重存在,等周不等式の解析的表現,線形楕円型境界値問題の固有関数についての等周的な積分不等式,走化性方程式の解の大域存在と非一意性,ゲージ場理論の凝縮解など多岐にわたるが,とりわけ変分問題の臨界点の非退化性の研究がその中心にある.Sobolev 臨界指数と関連する Yamabe 型方程式では,典型的な場合において解が存在しないにも関わらず,非線形項を微小に摂動させた多くの問題に対してエネルギー最小解が存在する.従って摂動項を $0$ に収束させる特異摂動問題において,解がどのような挙動をするかを知ることは重要な問題である.高橋氏は重調和作用素を含む様々な問題において解の凝集に関する重要な貢献をし,多くのことが成り立っていることを明らかにした.例えば,ある場合には爆発点の位置が Robin 関数(Hamiltonian)で規定されること,また節領域の解析も含む線形化固有関数の精密な評価によって線形化作用素が非退化でモース指数 $1$ を持つことなどを示した.また近年では $2$-capacity を用いた温度無限大の集合が有界領域に閉じ込められる集合の体積評価や,$2$ 次元有界領域におけるべき乗非線形問題において指数無限大漸近問題での解の極大点の個数の評価などめざましい研究成果を挙げている.企業に在籍していた年数をまったく感じさせない研究成果はたいへん顕著で,函数方程式論の発展に大いに寄与し,福原賞授賞にふさわしいものである.