第一回(2009年度)福原賞

受賞者

業績題目

井口達雄(慶應義塾大学理工学部)
(2009年度「微分方程式の総合的研究」講演者)

水面波方程式の数学解析の研究

石毛和弘(東北大学大学院理学研究科)
(2004年度函数方程式論分科会特別講演者)

線形・非線形熱方程式の解の挙動の研究

小池達也(神戸大学大学院理学研究科)
(2008年度函数方程式論分科会特別講演者)

完全 WKB 解析を用いた微分方程式の研究

【選考委員会構成】
小澤徹(委員長),竹井義次,中村玄,小川卓克,長澤壯之,中村周,杉本充,中西賢次,土居伸一,足立匡義,柴田徹太郎,小林孝行,坂井秀隆,西畑伸也


受賞者

石毛和弘(東北大学大学院理学研究科)
(2004年度函数方程式論分科会特別講演者)

業績題目

線形・非線形熱方程式の解の挙動の研究

受賞理由

熱方程式に線形のポテンシャル項を加えた,一般化された拡散方程式は,拡散効果とポテンシャルによる束縛によって解の漸近挙動が大きく変化し,反応拡散系や確率論におけるモデルとも密接に関連する興味深い分野であります.石毛氏は一般化拡散方程式(いわゆるシュレディンガー半群)の解の時間大域的な挙動について研究を行い,解の微分についての定量的な減衰評価,初期値境界値問題の場合の減衰の限界,解の最大値を与える点(いわゆるホットスポット)の時間漸近挙動について研究しました.ことに空間逆二乗の次数を持つポテンシャルの場合に,正値調和関数の性質,外部問題の熱方程式の解の漸近挙動などを駆使し,臨界ポテンシャルの場合に解のホットスポットの漸近挙動を明らかにした成果や,解のグラフの形状そのものの研究においても斬新な問題意識を提起しています.また線形ポテンシャル付きの拡散方程式が非線形干渉項を備えるときに,その解の爆発の臨界について研究し,ポテンシャル付きの非線形拡散方程式の解の大域存在のためのいわゆる Fujita 臨界指数を同定しました.このように石毛氏の業績は非常に優れていて函数方程式論福原賞にふさわしいものです.