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2025年度日本数学会出版賞
2025年度日本数学会出版賞は以下の方に授賞されます。
- NPO 数学みえる化プロジェクト
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数学みえる化プロジェクトは、2018年に数学的現象を体感する勉強会として北海道大学の教員らを中心に始まった。2022年夏には、北海道大学総合博物館の夏季企画展に関連する書籍として「感じる数学―ガリレイからポアンカレまで―」(共立出版)が出版された。また、展示内容をわかりやすく解説するYouTubeチャンネル「感じる数学Tangible Math」も開設された。以降、このプロジェクトは各地で展示や講演を行い、活動の幅を広げている。現在では「NPO 数学みえる化プロジェクト」に活動が引き継がれ、数学やその関連分野の普及活動が継続されている。
書籍やYouTube 動画などの本プロジェクトに関連する一連の著作は、数学の普及活動への貢献が大きく、日本数学会出版賞にふさわしい。
- 「数学のための英語教本―読むことから始めよう」服部久美子著(共立出版、2020年)
- 数学で使われる英語は簡単だと言われるが、日常では出会わない数学特有の表現や、数学そのものの難しさも相俟って、英文のテキストや論文を読むことは初学者にとっては敷居が高く、また文法を誤ることで数学的に全く異なる意味に誤読してしまうことも少なくない。本書は著者が学部2~3年生を対象にした「数学英語」の講義をもとにしたもので、初学者が英語のテキストや論文に負担なく向き合えるように、数学のテキストを読んだり英語論文を書いたりする際に注意すべき文法やよく使われる表現がコンパクトにまとめられている。国際的な科学コミュニケーションの必要性が高まる中で、本書は英語によって数学や科学を正確に理解、発信することの重要性を再認識させる良書であり、数学の国際的な普及に大きく貢献するものである。
- 野口潤次郎
- 野口氏は多変数解析関数論、複素解析幾何学を専門とし、これまでに数多くの専門書を執筆している。多変数関数論は岡潔によって理論の根幹となる様々な研究がなされた。野口氏は岡潔の数学を現代数学の中で学生たちにも理解が届くような形で根付かせようという熱意のもとで、「多変数解析関数論―学部生へおくる岡の連接定理」や「岡理論新入門―多変数関数論の基礎」などの書籍を岡潔の数学への深い理解と敬愛の念のもとで執筆している。このように多変数関数論を専門とする数学者の立場から岡潔の数学と多変数関数論の社会的認知・普及・整備に貢献し、また独自性の高い著作を意欲的に上梓しており、その功績は日本数学会出版賞に相応しいものである。