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2022年度日本数学会出版賞

2022年度日本数学会出版賞は以下の方に授賞されます。

加藤十吉
加藤十吉氏は位相空間、位相幾何学に関する良書を多数著し、数学を専門とする学部生、大学院生の教育・研究に多大な貢献をした。「集合と位相」は直感と結びつけながら無限と連続について理解を深めることを意図して著された教科書であり、見通しの良い明確な文章で書かれている。「位相幾何学」は線型代数以外の予備知識を仮定せずに読めるように構成されているが、単体的複体のホモロジー論にとどまらず特異ホモロジー論についても詳しく扱っており、さらに当時最先端であった研究対象の記述においても他の和書にはない特徴を持った書籍となっている。ここで挙げた2点以外にも「トポロジー」、「組合せ位相幾何学」を著したほか「トポロジー入門」(クゼ・コスニオフスキ著)を翻訳するなど数学の教育・研究に寄与しており、その功績は出版賞に相応しいものである。
「紀伊國屋数学叢書」
編集委員伊藤清三、戸田宏、永田雅宜、飛田武幸、吉沢尚明の各氏のもと、1974年から94年にかけて全33巻計35冊刊行された本叢書は、「現代数学の発展にとって重要であり、また既刊書で必ずしも重点が置かれていない」テーマを選ぶという方針のもと、一流の数学者によって執筆された。この様な編集方針は実に先駆的なものであり、出版された当時の最先端の成果の解説を含んだ各巻はオリジナリティが高く、現在まで活用され続けている。高水準で類を見ない本叢書は出版賞に相応しいものである。株式会社紀伊國屋書店におかれましては、本叢書刊行に比肩しうる貢献を継続していただくことを願いつつ、本叢書を現在もオンデマンド版として提供し続けていることに敬意を表したい。