第12回(2013年度)解析学賞

受賞者

業績題目

利根川吉廣(北海道大学大学院理学研究院)

曲面の発展方程式の正則性理論の研究

綿谷安男(九州大学大学院数理学研究院)

多角的な視点に基づく作用素環論の研究とその応用

渡部俊朗(会津大学コンピュータ理工学部)

レヴィ過程の分布の性質に関する深い研究

【選考委員会構成】
伊藤昭夫,小池茂昭,志賀啓成(委員長),西山享,福山克司,前園宜彦,宮岡洋一(委員会担当理事),柳田英二


受賞者

渡部俊朗(会津大学コンピュータ理工学部)

業績題目

レヴィ過程の分布の性質に関する深い研究

受賞理由

渡部俊朗氏の研究は,もっとも基本的な確率過程であるレヴィ過程の各時刻における分布と,レヴィ測度との関係を深く追求したものです.渡部氏は,安定分布と呼ばれる時空変換をもつレヴィ過程の分布において,その裾の状態は2次元以上の場合には豊富な多様性を持っていることを明らかにしました.また,1次元で裾の重い自己分解可能分布に対して,分布密度とレヴィ測度密度が漸近的に等しいことを証明しました.この研究を数理ファイナンスにおいて用いられる Black-Scholes モデルの分布に応用することによって,この分野の未解決問題の一つであった Bondesson 予想を肯定的に解決しました.また自己相似加法過程の上極限型の極限定理の問題に決定的な解決を与えました.これらはこの分野に大きな進歩をもたらした深い研究であると同時に,多くの応用をもち,数理ファイナンスのみならずリスク理論や保険数学における種々のモデル,さらに確率微分方程式から定まるモデルの研究に貢献するものです.また,これら渡部俊朗氏の業績は実解析を中心としたハードアナリシスを駆使したもので,解析学賞にふさわしいものです.