第12回(2013年度)解析学賞

受賞者

業績題目

利根川吉廣(北海道大学大学院理学研究院)

曲面の発展方程式の正則性理論の研究

綿谷安男(九州大学大学院数理学研究院)

多角的な視点に基づく作用素環論の研究とその応用

渡部俊朗(会津大学コンピュータ理工学部)

レヴィ過程の分布の性質に関する深い研究

【選考委員会構成】
伊藤昭夫,小池茂昭,志賀啓成(委員長),西山享,福山克司,前園宜彦,宮岡洋一(委員会担当理事),柳田英二


受賞者

綿谷安男(九州大学大学院数理学研究院)

業績題目

多角的な視点に基づく作用素環論の研究とその応用

受賞理由

綿谷安男氏は一貫して作用素環論を研究しつつも,受賞題目が示す通り,幅広い分野の研究者と交流をもちながら作用素環論とさまざまな分野との接点を開拓してきました.Jones によって開始された von Newmann 環の指数理論の $C^*$-環における代数的な定式化を行いました.これは以後の多くの研究の先駆けとなったものです.離散群についての SerreFA という性質と von Neumann 環の関係,因子環の部分環の束構造など,代数を始めとする様々な分野と作用素環論の関係を新たに構築してきました.近年の研究においては,グラフの一般化と考えられるヒルベルト双加群から作られる Pimsner 環の構造研究,無限次元ヒルベルト空間の部分空間とそれに関連する quiver の無限次元表現の分類を行なっています.また,複素力学系,自己相似写像などの分岐点を持つ非可逆力学系から作られる $C^*$-環の研究を行なっており,von Neumann 環と $C^*$-環の指数有限性のデリケートな解析を行なうことで分岐点のさまざまな情報が得られることを示しました.
このように綿谷安男氏のオリジナリティあふれた研究は多岐に亘るもので,かつ大きな影響を与えており,解析学賞にふさわしいものです.