第12回(2013年度)解析学賞

受賞者

業績題目

利根川吉廣(北海道大学大学院理学研究院)

曲面の発展方程式の正則性理論の研究

綿谷安男(九州大学大学院数理学研究院)

多角的な視点に基づく作用素環論の研究とその応用

渡部俊朗(会津大学コンピュータ理工学部)

レヴィ過程の分布の性質に関する深い研究

【選考委員会構成】
伊藤昭夫,小池茂昭,志賀啓成(委員長),西山享,福山克司,前園宜彦,宮岡洋一(委員会担当理事),柳田英二


受賞者

利根川吉廣(北海道大学大学院理学研究院)

業績題目

曲面の発展方程式の正則性理論の研究

受賞理由

利根川吉廣氏は曲面の発展方程式の弱解の正則性理論,およびそれを近似する Allen-Cahn 方程式の解の諸性質の研究において顕著な業績をあげています.平均曲率流方程式などの曲面の発展方程式の研究,特にその時間大域的挙動の研究においては弱解の導入が必要であり,その研究の中でも1978年に Brakke が提唱した変分原理に基づいた弱解は,曲面積などの幾何学的な量が評価できるという利点を持っていました.しかしながら,Brakke の正則性理論は難解で,その後は研究が停滞していました.利根川氏は Brakke による正則性の理論を,駆動力項を含む方程式に一般化し,さらにその証明を見通しの良いものにしました.その中で利根川氏は,放物型単調公式や Lipschitz 近似および様々な解の評価を開発し,その手法においても大きなインパクトを与えるものです.また,曲面の発展方程式を近似する Allen-Cahn 方程式の解について,その二層分離現象を解析し,その拡散界面の変形を記述しました.これは拡散界面と通常の界面の関係の研究に新たな指標となり,今後の研究にも大きな貢献をするものです.このように利根川吉廣氏の研究は,曲面の発展方程式における独創的かつ大きなインパクトのある研究であり,解析学賞にふさわしいものです.