第11回(2012年度)解析学賞

受賞者

業績題目

隠居良行(九州大学大学院数理学研究院)

圧縮性粘性流体の平行流の安定性解析

坂口茂(東北大学大学院情報科学研究科)

拡散方程式の不変等温面と領域の幾何学

谷口正信(早稲田大学理工学術院)

時系列解析における統計的漸近最適推測理論の研究

【選考委員会構成】
芥川和雄(委員会担当理事),小池茂昭(委員長),小林孝行,今野良彦,田中直樹,辻元,西山享,日野正訓


受賞者

坂口茂(東北大学大学院情報科学研究科)

業績題目

拡散方程式の不変等温面と領域の幾何学

受賞理由

坂口茂氏は,自然科学において様々な場面に現れる拡散方程式に対して,時間不変な最大点や臨界点をもつ解,または時間不変な等温面をもつ解と領域の形状との相関等の研究を行ってきた.特に,坂口茂氏は R. Magnanini 氏と共に拡散方程式の時間不変な等温面と領域の幾何の研究を行い,1960年代に提唱された Klamkin 予想をより自然な予想に変えた上での完全解決を始めとし,数多くの簡明かつ決定的な結果を与え,拡散方程式の解の幾何学に大きな貢献と展望を与えてきた.
坂口氏による時間不変な等温面と領域の幾何学の研究は,坂口氏らによって発見された拡散方程式の解の平衡条件(バランス則)を出発点とし,粘性解,確率論,微分幾何と広範な数学的内容と関連した広い数学的土壌の上,坂口氏が自らの手でストーリーを組み上げたものである.これらは,他の多くの優れた研究と同様,後から見れば自然な流れに沿った研究であるように感じられる大きな世界観をなしている.また,その議論は非線形拡散方程式への発展も視野に入れ,ここ数年において一段と深化している.
坂口茂氏の拡散方程式の不変等温面と領域の幾何学の研究は,他に類がなく他の追従を許さないきわめて独創的な研究であると同時に,数学者に夢を与えることができる研究でもあり,解析学賞に相応しいものである.