数学の振興、若手人材育成のためのアンケート調査報告および提言

数学の振興、若手人材育成のためのアンケート調査報告および提言

はじめに

日本数学会は、文部科学省公募委託事業「数学・数理科学と他分野の連携・協力の推進に関する調査・検討~第4期科学技術基本計画の検討に向けて~」(受託者九州大学大学院 数理学研究院、代表 若山正人)の連携協力機関の一つとして、数学・数理科学教育研究組織へのアンケート調査をおこなった。

この委託事業の目的は、「これまで行われてきた数学・数理科学に関する活動について調査・評価」、「数学・数理科学と他分野との連携・協力に関するニーズ及びシーズを、数学・数理科学と他分野の両方の視点から調査」し、それに基づいて「数学・数理科学と他分野の連携・協力の推進に向けた具体策」を提言することであった。

日本数学会が行った数学・数理科学教育研究組織へのアンケート調査では、日本数学会、応用数理学会等に関係する大学の数学・数理科学教育研究組織を対象とし、アンケート票を送り、記入を依頼するという方法をとった。

アンケートの内容は、

「数学・数理科学教育研究活動」
Ⅰ数学・数理科学教育研究活動について
「他分野と産業界との連携・協力」
Ⅱ他分野や産業界との連携・協力を目指す研究の取り組みについて
Ⅲ他分野や産業界との連携・協力による人材育成の取り組みについて
Ⅳ博士学位について
Ⅴ他分野との連携・協力について(その他)
「数学・数理科学における人材育成
VI大学院における人材育成と進路状況について

であり、アンケートの発送は10月26日、11月20日までの返送を依頼した。実際には2009年12月24日までに到着したものを集計した。発送した組織は175、回答を得たのは70であった。 数学・数理科学教育研究組織へのアンケートに引き続き、日本数学会は、数学・数理科学と他分野の連携・協力および数学・数理科学における人材育成について、当事者である大学院生に対して、意識調査を行った。この意識調査の目的は、数学・数理科学教育研究組織へのアンケート結果とあわせて、日本数学会が数学の振興、若手人材育成のための説得力のある提言を行うため、および数学・数理科学の若手人材のキャリアパスの確立のための日本数学会の今後の活動を企画するためである。

アンケートの内容は、「進路および他分野との連携」についての修士課程大学院生への調査、および「進路、他分野との連携、若手研究者支援」についての博士課程大学院生への調査であり、アンケートは、「数学通信」に修士論文題名、博士論文題名を掲載している数学・数理科学教育研究組織うちで、修士論文題名と博士論文題名の掲載数が10以上の45組織に、大学院生へのアンケート票を送り、大学院生に配布し記入してもらったアンケート票を数学会で集計分析した。アンケート票の返送を2009年12月21日までと依頼したが、実際には2010年1月16日までに回収したアンケート票を集計した。アンケート票は修士課程については、38の専攻または教室の557人(1年生288人、2年生268人、不明1人)から回答を得た。これは、対象としている修士課程大学院生のほぼ27%にあたる。博士課程については、34の専攻または教室の173人(1年生60人、2年生41人、3年生72人)から回答を得た。日本数学会発行の数学通信に掲載された2008年度博士論文題目数は164であり、ほぼ35%からの回答である。

2つのアンケートの結果を集計・分析と並行して、日本数学会では、数学・数理科学教育研究組織へのアンケート結果および大学院生へのアンケート結果を踏まえて、数学の振興、若手人材育成のための提言、および数学・数理科学の若手人材のキャリアパスの確立のための今後の活動の企画を検討してきた。

この冊子では、この2つのアンケートの集計・分析結果を報告するとともに、数学の振興、若手人材育成のための提言を明らかにし、また数学・数理科学の若手人材のキャリアパスの確立のための当面の日本数学会の活動の方向を明らかにした。このことに関する今後の日本数学会の活動については、関係諸方面のご協力をお願いするものである。

アンケートにご協力いただいた皆様に感謝するとともに、ご協力いただいた皆様の思いが伝わって、このアンケート調査が、広く数学の振興、若手人材育成のために役立てられることを期待したい。

社団法人 日本数学会
2009年度および2010年度理事会

社団法人 日本数学会
2009年度および2010年度理事会
理事長 坪 井 俊 (2009,2010)
理事 岩 崎 克 則 (2009)
小 澤 徹 (2009)
宍 倉 光 広 (2009)
中 村 周 (2009)
谷 島 賢 二 (2009)
小 磯 深 幸 (2009,2010)
小 谷 元 子 (2009,2010)
中 村 玄 (2009,2010)
前 田 吉 昭 (2009,2010)
真 島 秀 行 (2009,2010)
満 渕 俊 樹 (2009,2010)
小 川 卓 克 (2010)
齋 藤 政 彦 (2010)
戸 瀬 信 之 (2010)
平 田 典 子 (2010)
宮 岡 洋 一 (2010)

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目次

はじめに
目次
提言と日本数学会の活動の方向 1
数学・数理科学教育研究組織へのアンケート結果報告概要 5
数学・数理科学大学院生へのアンケート結果報告概要 17
数学・数理科学の教育研究にかかわる社会の動きと数学会のアンケート調査 29
資料
数学・数理科学教育研究組織へのアンケート結果報告 33
数学・数理科学教育研究組織へのアンケートの依頼文書およびアンケート票 94
数学・数理科学大学院生へのアンケート結果報告 105
数学・数理科学大学院生へのアンケートの依頼文書およびアンケート票 156