2019年度日本数学会出版賞

2019年度日本数学会出版賞

2019年度日本数学会出版賞は以下の方に授賞されます。

Tokyo Journal of Mathematics
Tokyo Journal of Mathematicsは河田敬義氏らにより1978年に刊行され、以来、東京地区の公立・私立大学により維持運営されている。国内で刊行される雑誌として非常に大きな役割を果たしており、日本における数学研究の幅と厚みの双方を拡大することに貢献してきた。多数の大学数学教室が合同して一つの数学雑誌を運営するという数学雑誌の今後の方向性を指し示すものと評価され、本賞に相応しいものである。
本間龍雄
位相幾何学・トポロジーという概念がほとんど知られていない時期から、一般向けに、これらの概念を紹介する書物を出版し、トポロジーの面白さ、不思議さを多くの人々に伝えることに大きく貢献してきた。本間氏の啓蒙書は執筆当時での最新の研究成果を盛り込んでいる点に大きな特色があり、今日でも学部生の教育に活用できる水準であることも氏の著作の特色であり、本賞に相応しいものである。
斎藤毅、河東泰之、小林俊行 編『数学の現在』(全3巻、東京大学出版会、2016年)
数学の研究を志す人や、数学を楽しみとする一般の数学ファンにとって、本当の数学はかなり遠くに位置し、それに触れる機会はほとんどない。本書は大学3年生・4年生あるいはそれらより若い読者を対象として、執筆者の各研究分野をオムニバス形式により、できる限り平易に解説している。専門的な数学を解説する書物は難度が高く、その一方で数学ファンを対象として出版される書物は単なる読み物にとどまることが多い。非専門家向けに書かれた書物で、数学の広い領域に渡り、深淵な数学の本質に迫るものは近年ほとんど見当たらなかった。本書は、この溝を埋める特徴的なものに仕上がっており、数学の教育に対する大きな貢献と評価され、本賞に相応しいものである。