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編集委員会

遠藤 久顕(編集委員長兼編集局長)

赤木 剛朗,厚地 淳,阿部 紀行,李 聖林,石渡 聡,伊藤 哲也,遠藤 久顕,加藤 圭一,神本 丈,久保 仁,
今野 宏,高島 克幸,竹村 剛一,内藤 聡,藤野 修,増田 弘毅,三枝 洋一

既刊

Vol. 43, Naofumi Honda and Luca Prelli, Multi-normal deformation and multi-specialization, 2025. 121p, 税込価格2,630円(送料 310円)

層の多重特殊化は、複数の多様体に沿って同時に層の特殊化をおこなう手法で、例えば、ホイットニー正則関数層を正規交差する多様体の族に沿って多重特殊化すると強漸近展開可能層が得られる。この論文の目的は、同時線形化可能な多様体の族(重要な例として、クリーンな交差を持つ多様体の族や余接空間内の同時線形化可能なラグラジアン多様体の族などがある)に沿った多重特殊化に現れる新しい幾何を明らかにすること、および、この多重特殊化を用いることで関手的な手法により漸近展開の理論をより一般の場合に拡張することである。また、ホイットニー正則関数に関する岡型や楔の刃型の種々の消滅定理を示すことにより、一般化された漸近展開論にも自然に期待されるボレル-リッツ完全系列のような基本的な事実が成り立つことを示す。その証明を通して、読者は、本論文で構成する関手的な枠組みが極めて強力であることを見ることができるだろう。

Vol. 42, Osamu Fujino, Cone and contraction theorem for projective morphisms between complex analytic spaces, 2024. 94p, 税込価格2,250円(送料 215円)

1980 年頃に森重文によって始められた極小モデル理論は、高次元代数幾何学において重要な役割を果たしている。長年、極小モデル理論の複素解析的な一般化が望まれていた。本書の主な目的は、複素解析空間の間の射影的な射に対する極小モデルプログラムの厳密な基礎を与えることである。より具体的には、複素解析的設定で、正規対に対する錐定理と収縮定理を確立する。これは、複素解析的な対数的標準対に対する極小モデルプログラムの出発点である。本書に基づいて、高次元代数多様体に関する多くの結果がすでに複素解析空間に一般化されている。本書で得られた結果は、複素解析的特異点や複素射影多様体の退化などの研究に役立つと期待されている。本書におけるアプローチは、最近著者によって得られたKollárの消滅定理と捩れ不在定理の複素解析的な一般化に大きく依存している。本書は研究者だけでなく、複素解析空間の間の射影的な射に対する極小モデル理論に関心のある大学院生向けにも書かれている。

Vol. 41, Tomoki Nakanishi, Cluster Algebras and Scattering Diagrams, 2023. 279p, 税込価格5,130円(送料 360円)

本書のテーマは団代数と散乱図の関係である。団代数は2000年ごろにFominとZelevinskyにより導入された代数的組み合わせ論的構造であり、Lie理論に起源を持つ。最近、Gross、Hacking、Keel、Kontsevichは、ホモロジカルミラー対称性において導入された散乱図の手法を用いて団代数理論におけるいくつかの重要な予想を解決した。本書はこの重要な進展に関する初めての包括的な解説書である。本書は三部により構成される。第一部は団代数の知識を持たない読者に対する団代数理論の入門編である。第二部は本書の中心部分であり、FominとZelevinskyにより予想され、Gross、Hacking、Keel、Kontsevichにより散乱図の手法により証明された、団パターンに対するC行列の列符号同一性とLaurent正値性に焦点を当てる。第三部は団散乱図の様々な基本性質の自己完結的な解説であり、二重対数元と五角関係式の役割を強調する。本書の特色として、各部は他の部に直接は依存せずに書かれている。したがって、読者はそれぞれの興味と知識に応じて好きな部から読むことが可能である。

Vol. 40, Yuji Odaka and Yoshiki Oshima, Collapsing K3 Surfaces, Tropical Geometry and Moduli Compactifications of Satake, Morgan-Shalen Type, 2021. 165p, 税込価格3,280円(送料 310円)

代数多様体や複素多様体のモジュライ空間のコンパクト化は、多様体の極限の情報を反映する。本書はAbel多様体やK3曲面、超Kähler多様体のモジュライ空間のコンパクト化についての研究論文である。コンパクト化の構成には局所対称空間の(Baily-Borelコンパクト化とは異なる)佐武コンパクト化、および複素多様体のMorgan-Shalenコンパクト化が用いられる。得られるコンパクト化は代数多様体や複素多様体ではないが、局所対称空間を用いて明示的に記述され、Ricci平坦計量の極限をパラメトライズする。ここで扱われる計量の極限はしばしば低次元に崩壊し、トロピカル多様体、つまり退化した多様体の双対グラフに一致する。このような多様体の退化はミラー対称性との関連からも近年盛んに研究されており、本書の結果の系としてK3曲面のGromov-Hausdorff極限に関するGross-WilsonとKontsevich-Soibelmanの予想が肯定的に解決される。

Vol. 39, Masaharu Taniguchi, Traveling Front Solutions in Reaction-Diffusion Equations, 2021. 170p, 税込価格3,370円(送料 310円)

自然科学にあらわれる様々な反応拡散モデルにおける伝播現象を理解するために、非線形反応拡散方程式の進行波を研究することが必要である。1次元進行波の研究は1970年代よりさかんに行われ、空間2次元以上の多次元進行波の研究が2005年ころより急速に発展してきた。これらの研究内容を大学院生がこれから学習する際のテキストとして使用されることがこの本の目的である。相平面解析をもちいて、さまざまな反応拡散方程式にたいする進行波の存在を証明する。つぎに、その中でもっとも基本的である双安定反応拡散方程式において、2次元V字型進行波と角錐型進行波の存在と安定性を証明する。角錐型進行波はその切断面が凸多角形をなす多次元進行波であり、側面の数を無限大にすることによりさまざまな多次元進行波をその極限としてもつことが知られている。このため、角錐型進行波の存在と安定性の証明を、明快に理解できるように説明が行われることが重要であり、これがこの本のさらなる目標である。読者の便宜のために、非線形反応拡散方程式の解の存在、一意性、最大値原理、Schauder評価などがその証明とともに解説されている。

Vol. 38, Alex Casella, Dominic Tate and Stephan Tillmann, Moduli spaces of real projective structures on surfaces, 2020. 122p, 税込価格2,540円(送料 310円)

本書は現在急速に進展しつつある実射影多様体論の優れた入門書であり、曲面上の実射影構造およびそのモジュライ空間の理論が包括的に述べられている。本書で取り上げる主なテーマの一つにFockとGoncharovによって発見されたモジュライ空間のパラメーター付けがある。これは、自然なポアソン構造、射影双対性、ホロノミー表現、エンドの幾何などに関する重要な諸性質の解明や具体的な記述に有用である。
本書は二種類の読者を念頭に書かれている。一つは、実射影曲面および実射影多様体について学ぼうとする読者である。もう一つは、それらに関するひととおりの知識を持っており、Fock-Goncharovによる実射影構造のモジュライ空間のパラメーター付けに興味を持つ読者である。本書の内容は、これらの話題に興味を持つすべての数学者に理解しやすく書かれている。予備知識を必要最小限にとどめ、可能な限りすべてを説明するよう心がけた。双曲構造に関するTeichmullerの結果 (1939)、閉曲面に関するGoldmanの結果 (1990)、有限面積の構造に関するMarquisの結果 (2010) の新しい証明を、Fock-Goncharovによるモジュライ空間のパラメーター付けの応用として本書に含めた。

Vol. 37, Kazuki Hiroe, Hiroshi Kawakami, Akane Nakamura and Hidetaka Sakai, 4-dimensional Painlevé-type equations, 2018. 172p, 税込価格3,350円(送料 310円)

新しい特殊関数を定める非線型常微分方程式として、パンルヴェ方程式の重要性が広く認識されるようになって久しい。そして90年代以降、パンルヴェ方程式の差分化、高次元化、量子化など様々な一般化に関する研究が多くみられるようになってきた。本書は、パンルヴェ方程式の高次元への拡張に対し、線型常微分方程式の変形理論の観点から統一的な理解を提供するものである。特に相空間が4次元の場合に的を絞って、その方法を解説する。具体的には,フックス型方程式の分類からスタートして、特異点を合流させることにより線型方程式の退化図式を構成し、その上に対応するパンルヴェ型方程式を位置づける。その際に必要となる線型方程式のスペクトルタイプ、ハミルトニアンの計算法、特異点の合流とパンルヴェ型方程式の退化、ラプラス変換による線型方程式やそのスペクトルタイプの対応なども具体例と共に説明する。また、付録1では線型方程式のモジュライ空間の対称性を議論する。その応用として、本書で得られた方程式が不分岐型線型方程式に対応する4次元パンルヴェ型方程式の完全なリストを与えることが示される。付録2では分岐型線型方程式に対応する4次元パンルヴェ型方程式のリストを挙げる。

Vol. 36, Soichiro Katayama, Global solutions and the asymptotic behavior for nonlinear wave equations with small initial data, 2017. 298p, 税込価格5,100円(送料 360円)

非線形波動方程式の初期値問題を小さな初期値に対して考えるとき、特に興味があるのは非線形項が臨界次数を持つ場合である。この場合には非線形項の構造に応じて解は大域的に存在することも、有限時間で爆発することもある。80年代にKlainermanは臨界次数の場合を考え、小さな初期値に対して大域解が存在するための十分条件を導入した。この条件は零条件と呼ばれているが、近年はより弱い十分条件の研究も進んでいる。
本書は非線形波動方程式の理論の基礎から最近の結果まで含む解説書であり、古典的な局所解の存在定理、優臨界次数の場合の大域解の存在、臨界次数の場合の解の有限時間爆発やライフスパン、2および3次元空間での零条件下での大域解の存在などが論じられている。用いられる主な手法はいわゆるベクトル場の方法と呼ばれるものである。また、零条件よりも弱い条件下での大域解の存在に関する近年の結果も含まれ、そのような弱い条件下では大域解は漸近的に様々な挙動をすることが明らかにされている。
研究者のみならず非線形波動方程式に興味をもつ大学院生も本書の読者に想定されている。また、可能な限り本書で閉じた記述となるように配慮されており、各定理には完全な証明が与えられている。

Vol. 35, Osamu Fujino, Foundations of the minimal model program, 2017. 289p, 税込価格5,130円(送料 360円)

1980年頃森重文によって始められた高次元代数多様体の新しい理論は、極小モデルプログラムや森理論と呼ばれている。 極小モデルプログラムはその後、代数幾何学や関連分野の様々な問題への応用をもつ強力な道具として発展している。
本書では、コンパクト台コホモロジー上の混合ホッジ構造の理論を使い、可約な多様体に対してKollárの単射性定理、捻れ不在定理、消滅定理を一般化する。 これらを用いて、錐定理や固定点自由化定理などの極小モデルプログラムの基本定理を擬対数的スキームに対して確立する。 擬対数的スキームの概念はFlorin Ambroによって導入され、半対数的標準対のコホモロジー論的研究に不可欠である。 半対数的標準対は高次元代数多様体のモジュライ問題で重要な役割を果たす特異点のクラスである。 また、極小モデルプログラムの基本的な結果や小平の消滅定理の様々な一般化についても解説する。

Vol. 34, Martin T. Barlow, Tibor Jordán and Andrzej Zuk, Discrete Geometric Analysis, 2016. 157p, 税込価格3,150円(送料 310円)

本書は、2012年度京都大学数理解析研究所プロジェクト研究「離散幾何解析」で招聘された客員教授達によって行われた3つの連続講演の講義録である。「離散幾何解析」は、グラフ理論、幾何学、離散群論や確率論などの伝統的な研究分野の融合体として、砂田利一氏によって提唱された複合研究分野である。その対象となるテーマは広く、離散幾何解析は様々な分野の新しい交流を生み、発展している。
本書では、多方面に渡る離散幾何解析の研究分野のうち、特に確率論、組合せ最適化、幾何学的群論の3つのテーマについて包括的に取り扱っている。具体的には、以下の3つの章からなる。
(I) Loop Erased Walks and Uniform Spanning Trees(著者 Martin T. Barlow)
(II) Combinatorial Rigidity: Graphs and Matroids in the Theory of Rigid Frameworks(著者 Tibor Jordán)
(III) Analysis and Geometry on Groups(著者 Andrzej Zuk)
各章では、それぞれの分野の歴史や最近の発展が詳しく述べられている。個々の分野の研究を深めたい研究者にとっても、また学際的な分野の研究を行う研究者にとっても、当該研究の背景や最新の話題を離散幾何解析の観点から理解するのにふさわしいテキストである。

Vol. 33, Masaki Maruyama with collaboration of T. Abe and M. Inaba, Moduli spaces of stable sheaves on schemes
restriction theorems, boundedness and the GIT construction, 2016. 154p, 税込価格2,570円(送料 310円)

代数曲線上のベクトル束の安定性はMumfordによって導入され、安定ベクトル束のモジュライ空間は主にインドの数学者たちによって深く研究された。安定ベクトル束の概念は高次元の場合に安定層の概念に拡張され、そのモジュライ空間は Gieseker、丸山正樹氏によって構成された。ベクトル束のモジュライ空間の理論は、代数幾何学に限らず、微分幾何学や数理物理学などの周辺分野との関連でも研究され、近年になってその重要度は増している。丸山正樹氏は代数的ベクトル束の研究の第一人者であり、有界性問題、モジュライ空間の一般的構成、ベクトル束の初等変換など理論の基礎部分における貢献が著しい。
本書は1章において連接層の安定性などの基礎的一般論から始まり、2章で半安定層の基本 定理である制限定理、有界性、テンソル積などが述べられる。そして3章においてquot-schemeの構成を与えた後に、半安定層のモジュライ空間の構成の証明を与えている。
本書は著者の研究の集大成のようなものであり、著者によって理論が作られていった過程を垣間見ることができる貴重な一冊である。

Vol. 32, Hiroshi Isozaki and Yaroslav Kurylev, Introduction to spectral theory and inverse problem on asymptotically hyperbolic manifolds, 2014. 251p, 品切れ

この本のテーマは無限遠においてリーマン計量が双曲計量に漸近するような非コンパクト多様体上のラプラシアンのスペクトル理論と逆問題です。古典的なユークリッド空間におけるシュレーディンガー作用素の散乱の定常理論と同様に、一般化されたフーリエ変換を議論の基礎にすえて、時間に依存する波動作用素とそれに付随するS行列を一般化されたフーリエ変換によって表します。重要なのはヘルムホルツ方程式の物理的な解のなす空間が一般化されたフーリエ変換と適当なベゾフ空間によって表現されることで、これによりS行列が多様体上でのヘルムホルツ方程式の解の無限遠での挙動を記述するものであることが分かります。このようにしてスペクトル・散乱問題と関係させながら、S行列が持つ多様体の無限遠を記述する性質を解析したのちに、散乱データから多様体を決定する逆問題を境界制御法を用いて解決します。
この本は散乱理論、双曲多様体と逆問題に興味をもつ大学院生や若い研究者に向けて書かれています。スペクトル理論や微分幾何学からの必要な事項を適切に準備し、理論の全貌をこの本を読むだけで理解できるようにしました。漸近的双曲多様体上での散乱の逆問題を分かりやすく解説した初めての本です

Vol. 31, Satoshi Takanobu, Bohr-Jessen Limit Theorem, Revisited, 2013. 216p, 品切れ

本書ではBohr-Jessenの極限定理について丁寧に解説する.この極限定理はRes=σ(ただし1/2<σ≤1)なる直線上でのリーマンゼータ関数ζ(s) の挙動にかかわっていて,1930年代初頭,Bohr-Jessenにより見出された.その後,Jessen-Wintner, Borchsenius-Jessen, Laurinčikas, 松本らによりその別証が与えられた.彼らはこの定理を確率論の枠組みで定式化し論じている.現代ではこの定式化が標準的と言ってよい.本書はこれに新しいアプローチを提案し,上記の先人達の計算を洗練する.この方法により,Bohr-Jessenの極限定理の証明のストーリーはよりすっきりし,結果,読者諸氏は証明の本質を深くしかも難なく理解できるものとなるだろう.

Vol. 30, Tatsuo Nishitani, Cauchy Problem for Noneffectively Hyperbolic Operators, 2013. 170p, 品切れ

2次の実特性点をもつ微分作用素は,その主表象のHamiltonベクトル場の特異点での線形化であるHamilton写像が,零でない実固有値を持つか否かによって,実効的双曲型と非実効的双曲型に分類される.
非実効的双曲型作用素に対しては,初期値問題がC∞適切となるためには副主表象が実でかつ絶対値においてHamilton写像の純虚数固有値の絶対値の和を超えないことが必要であることが1970年代後半に証明された.
その後次第に,初期値問題がC∞適切となるためにはHamilton写像のスペクトル構造のみならず2次特性多様体の近くでのHamilton流の軌道の挙動が重要であること,またHamilton写像だけではHamilton流の軌道の挙動を完全に知るには十分でないこと,が認識されるようになってきた.実際,驚くべきことに2次特性多様体に接するHamilton流の軌道が存在する場合には初期値問題はLevi条件の下でもC∞適切でないばかりか,より狭い関数空間,指数が5を超えるGevrey空間でも非適切となる.
本書では非実効的双曲型作用素の初期値問題の適切性や非適切性を丁寧に証明しながら,Hamilton写像とHamilton流の軌道の幾何が初期値問題の適切性や非適切性を完全に特徴づける,という立場から非実効的双曲型作用素の初期値問題の全体像を解説する.

Vol. 29, Takeshi Hirai, Akihito Hora and Etsuko Hirai, Projective representations and spin characters of complex reflection groups G(m,p,n) and G(m,p,∞), 2013. 272p, 品切れ

本書は次のように,1つの解説論文と2つの研究論文からなる.
[E] T. Hirai, A. Hora and E. Hirai, Introductory expositions on projective representations of groups;
[I] T. Hirai, E. Hirai and A. Hora, Projective representations and spin characters of complex reflection groups G(m,p,n) and G(m,p,∞), I;
[II] T. Hirai, A. Hora and E. Hirai, Projective representations and spin characters of complex reflection groups G(m,p,n) and G(m,p,∞), II, Case of generalized symmetric groups.
シュアの三部作(1904〜)から始まった群の射影表現(スピン表現)の理論は多くの数学者が研究してきたが,論文 [E]では,初学者のために歴史的経過を述べるとともに,この興味ある理論の種々相を解説している.論文 [I] では,複素鏡映群 G(m,p,n) と G(m,p,∞)=limn→∞G(m,p,n) に対して,そのスピン表現とスピン指標についての一般論を述べている.複素鏡映群のうちで,一般化対称群G(m,1,n), G(m,1,∞)(p=1), は母群と言え,G(m,p,n), G(m,p,∞)(p|m,p>1),はその子供群といえることを理論づけている.さらに,母群に対して,あるスピン型のスピン表現と非スピン表現(すなわち,線形表現)との密接な関係を,表現の構成・指標の計算を通して明らかにした.さらに,n→∞ の漸近的挙動に関して, いわゆるヴェルシク--ケーロフ理論の一般論を付け加えた.論文 [II] では,一般化対称群(母群)に対して,スピン表現とスピン指標について,詳しく論じている.

Vol. 28, Toshio Oshima, Fractional calculus of Weyl algebra and Fuchsian differential equations, 2012. 203p, 品切れ

N. Katzのmiddle convolutionなどを,具体的に計算できる線型微分作用素の演算として与え,Fuchs型線型常微分方程式の分類と構成とKac−Moody Weyl群の作用,解のベキ級数表示,積分表示,隣接関係式,接続係数,多項式解,モノドロミー群の可約性などの問題を新たな手法で統一的に解析して具体的結果を得る.特に「rigid local systemが見かけの特異点を持たない高階単独方程式で実現できるか」というKatzの問題を肯定的に解決し,不確定特異点や多変数超幾何函数についても触れる.今まで知られていなかった多くの具体例の計算結果や公式を与えている

Vol. 27, Suhyoung Choi, Geometric Structures on 2-Orbifolds: Exploration of Discrete Symmetry, 2012. 182p, 品切れ

本書は,1970年代にサーストンにより見いだされ,ハーケン多様体双曲化の証明の基本的な道具となった低次元軌道体と幾何の結びつきについて論じている.前半は軌道体のトポロジーの概説に,後半は,対象が2次元軌道体に限定され,タイヒミュラー(フリッケ)空間を含めた幾何構造理論の解説に当てられている.様々な文献に散逸した軌道体の理論が集約され,まず,チャートを使った軌道体の伝統的導入があり,さらに亜群を使った圏論的定義が論じられている.また,描画のためのMathematicaパッケージ集が著者のホームページに公開されている.

Vol. 26, Shinya Nishibata and Masahiro Suzuki, Hierarchy of semiconductor equations: relaxation limits with initial layers for large initial data, 2011. 109p, 品切れ

本巻では,半導体モデル方程式に関する最近の数学的成果を解説する.近年の急激な半導体デバイスの発展に伴い,デバイス中の電子流を解析する為,幾つかのモデル方程式が提唱されている.特に,流体力学的モデル,エネルギー輸送モデル,ドリフト・拡散モデルは代表的なモデルであり,半導体開発ではデバイスの使用用途に応じて数値シミュレーションに利用されている.従って,これらのモデル間の関係(階層構造)を解析することは,数学的に興味深いだけでなく応用面からも重要となる.この階層構造は,方程式に含まれる物理パラメータである緩和時間を零とする極限操作(緩和極限)により形式的には理解できるが,本巻では緩和極限に数学的な正当化を与え,モデルの階層構造を厳密に解明する.具体的には,モーメント緩和時間を零に近づけたとき,流体力学的モデルの時間大域解がエネルギー輸送モデルの時間大域解に収束することを示す.さらに,エネルギー輸送モデルの解のエネルギー緩和極限が,ドリフト・拡散モデルの解で与えられることを証明する.また,初学者向けに,デバイスの構造やモデル方程式の導出などの物理的な背景や,時間局所解の一意存在定理などの数学的な基礎も解説した.

Vol. 25, Hiroshi Sugita, Monte Carlo method, random number, and pseudorandom number, 2011. 133p, 品切れ

モンテカルロ法は非常に広い分野で活用されているものの,コンピュータでは乱数を作ることができないという根本的な問題のために,今までその数学的基盤は盤石ではなかった.本書では,コルモゴロフらの乱数の理論とブラムらの疑似乱数の理論を基にモンテカルロ法の堅固な数学的定式化を与える.その結果,モンテカルロ法には必ずしも乱数は必要でなく疑似乱数で十分かもしれないことが分かる.とくにモンテカルロ積分の場合には,乱数と代役を完全にはたす疑似乱数が存在する

Vol. 24, Taro Asuke, Godbillon-Vey class of transversely holomorphic foliations,2010. 130p, 品切れ

横断的に複素解析的な葉層構造のGodbillon-Vey類やその他の実二次特性類に関する入門書である.実・複素二次特性類について定義を含めて簡単に述べるほか,横断的に複素解析的な葉層構造の族に関する特性類の構成法について解説する.また,Godbillon-Vey類の剛性についての,これらの特性類を用いた新しい証明を与える.

Vol. 23, Armen Sergeev, Kähler geometry of loop spaces,2010. 212p, 品切れ

本書は,重要な三種のカテゴリーの無限次元ケーラー多様体を扱う.即ち,第一にコンパクトリー群のループ空間,第二にループ空間の複素構造のなすタイヒミュラー空間,そして第三にヒルベルト空間のグラースマン多様体である.これ等の多様体は,それぞれ豊かなケーラー幾何を備えており,本書の第一部で扱われる.これ等は,それぞれ対応する有限次元多様体のカテゴリーにおける普遍対象とも考えられる.
本書では,中の一章を無限次元Frechet多様体及びFrechetリー群の基本概念の入門に当て,前述の三つのカテゴリーの無限次元多様体を念頭に置いた無限次元ケーラー複素多様体への分かりやすい入門書ともなっている.無限次元複素多様体について研究する数学者および弦理論に関係する物理学者にとっても興味深い著作であろう

Vol. 22, Michael Ruzhansky; James Smith, Dispersive and Strichartz estimates for hyperbolic equations with constant coefficients,2010. 147p, 品切れ

低階項を含んだ定係数強双曲型偏微分作用素の解に関する分散型評価およびストリッカーツ評価を解説した講義録.発展作用素の(Lp−Lq) 時間減衰評価を詳細に論じ時間減衰度を特性多様体の幾何学により記述する.その応用として,定係数双曲系,フォッカー・プランク方程式,半線型双曲型方程式を扱う

Vol. 21, Gautami Bhowmik; Kohji Matsumoto; Hirofumi Tsumura (Eds.), Algebraic and Analytic Aspects of Zeta Functions and L-functions,2010. 183p, 品切れ

本書は,2008年1月に神奈川県三浦で行われた勉強会 `French-Japanese Winter School on Zeta and L-functions'の講義録である.この勉強会の主な目的は,ゼータ関数・L 関数に関する研究の最近の発展について,様々な側面から学習することであった.ここに含まれる一連の講義は,heightのゼータ関数,球関数,井草ゼータ関数,多重ゼータ関数・多重ゼータ値,ゼータ関数のEuler積,および保型形式に付随するL 関数の専門家達によって行われた.本書は,ゼータ関数・L 関数の魅力的な世界の現状を知るための格好の道しるべである.

Vol. 20, Danny Calegari, scl, 2009. 217p, 品切れ

本書は,安定交換子長の理論への入門書である.安定交換子長の理論は定量的トポロジーの理論として重要性を深めており,2次元多様体,力学系理論,幾何的群論,有界コホモロジー,シンプレクティク・トポロジーなどの多くの分野における研究と深く関連している.本書では,可能な限り構成的方法を用い,基本的な明快な例を多く挙げた.Bavardの双対定理,スペクトル・ギャップ定理,有理性定理,中心極限定理を含め,安定交換子長の理論の基本的な結果には,本書内で完結した証明を与えた.本書は,安定交換子長に興味を持つすべての人に読めるように,最小限の予備知識の上で書かれており,数学の多くの分野へ応用できるように書かれている.

Vol. 19, Joseph Najnudel; Bernard Roynette; Marc Yor, A Global View of Brownian Penalisations,2009. 137p, 品切れ

確率論や数理ファイナンスにおいて,ウィーナー測度に各種の重みをつけた確率測度の長時間漸近挙動の解析が極めて重要な役割を果す.著者M. Yor氏はこれらを統一的に扱うことを提唱し,「ブラウン処罰問題」と名付けた.本書は,この包括的視点への初めての入門書である

Vol. 18, Yasutaka Ihara, On Congruence Monodromy Problems,2008. 230p, 品切れ

本書は1968, 9年に東京大学から二巻の講義録として刊行されていたものに,新たに著者により書き下ろされたノートを加え,一冊の本としてまとめられたものである.「合同モノドロミー問題」は,著者により独自の見地から構築された,有限体上の1変数関数体の非アーベル類体論に関する問題群であり,長きにわたり広く多方面に影響を与え続けてきた.理論のその後の進展や未解決問題についての詳細なノートも付された本書は,未だ興味の尽きないアイデアの宝庫である

Vol. 17, Arkady Berenstein; David Kazhdan; Cédric Lecouvey, Masato Okado;Anne Schilling; Taichiro Takagi; Alexander Veselov, Combinatorial Aspect of Integrable Systems,2007. 167p, 品切れ

本書は2004年7月に京都大学数理解析研究所で開催されたワークショップ「可積分系の組合せ論的側面」における招待講演に基づく入門的解説論文6編を集めたものである.主な内容は,量子群の結晶基底やその代数幾何的類似である幾何結晶,ロビンソン・シェンステッド対応とその拡張,ベーテ仮説とフェルミ型公式,ソリトンセルオートマトン,ヤン・バクスター写像と可積分離散力学系である.本書ではこれらの話題が多くの例や相互の関係とともにわかりやすく紹介されており,この分野に興味をもつ大学院生,研究者にとって格好の解説書となっている.

Vol. 16, Brian H. Bowditch, A course on geometric group theory,2006.104p, 品切れ

本書は,幾何学的群論の入門書である.豊富な例と演習問題で重要な概念が把握できるように工夫され,自然に双曲空間と双曲群について理解できるように配慮されている.筆者が東京工業大学でおこなった4年生大学院生向けの講義をもとして書かれたもので,教科書・セミナー用テキストとして最適である.また,関係ある分野の仕事や,関連する最近の研究への豊富な文献,およびそれらについての簡単な説明も与えられている.

Vol. 15, Valery Alexeev, Viacheslav V. Nikulin, Del Pezzo and K3 surfaces,2006. 149p, 品切れ

本書は,特異 Del Pezzo 曲面に関する基本文献と言われながら難解とされていたロシア語リサーチ・ペーパーを,初歩からわかりやすく書き直したものである.代数多様体の一般分類理論にける基本的クラスとして,Q-Fano 多様体(標準特異点のみをもち反標準因子が豊富な多様体)がある.その最も簡単な場合である2次元Q-Fano 多様体が,特異 Del Pezzo 曲面である.本書では特異 Del Pezzo 曲面とその上のある種の有効因子の組に対してK3曲面を対応させ,この対応とK3曲面に対する Torelli の定理とを用いて,指数1または2をもつ Del Pezzo 曲面を完全に分類する.双有理幾何学の俊秀である Alexeev 氏と,K3曲面に対する格子理論の応用では第一人者とされる Nikulin 氏とが著わした本書は,一般次元Q-Fano 多様体理論へのよき入門書であるとともに,曲面上の例外因子の幾何学と双曲格子理論との美しい対応関係によって読者を魅了するであろう.

Vol. 14, Noboru Nakayama, Zariski-decomposition and abundance,2004. 277p, 品切れ

代数多様体の双有理幾何学において,極小モデル理論の発展とともに多様体上の因子の数論的性質を研究することの重要性が増している.この本は代数多様体の因子の数論的側面についての著者の研究の集成であり,特にZarisky 分解の高次元での類似と数論的小平次元に関するabundance 予想について書かれている.

Vol. 13, Shigeaki Koike, A Beginners' Guide to the Theory of Viscosity Solutions,2004. 132p, 品切れ

粘性解の理論は数理ファイナンスを含んだ(確率)最適制御や微分ゲームだけでなく,最近では曲率流方程式・相転移・画像処理・保存則などへの適用範囲が拡がってきています.本書は非発散型非線形偏微分方程式に有効な弱解の概念「粘性解」の理論の学部学生・大学院生向きの入門書です.

Vol. 12, Yves Andre, Period mappings and differential equations. From C to Cp,2003. 250p, 品切れ

この本では,代数幾何や数論幾何における周期写像を,複素数体上とP進数体上の理論の比較を主眼として,幾何,解析や数論的視点から扱う.微分方程式や一意化といった,背景にある豊かな数学的構造が,複素解析とp進解析の立場から,出来る限り同等に扱われ,それによって単なる比較にとどまらない周期写像への新たな視点を提供している.

Vol. 11, John R. Stembridg; Jean-Yves Thibon; Marc A. A. van Leeuwen; Interaction of Combinatorics and Representation Theory,2001. 145p, 品切れ

Vol. 10, Yuri G. Prokhorov, Lectures on Complements on LogSurfaces,2001. 130p, 品切れ

近年 complement に関する研究が盛りに行われているが,本書はこの概念についての初めての意義ある解説書である.pair の特異点についての基礎知識だけでなく,この方面のまだ解かれてない問題に取り組む励みも盛り込まれている.

Vol. 9, Peter Orli, Hiroaki Terao, Arrangements and hypergeopmetric integrals,2001. 112p, 品切れ

本講義録は超平面配置の理論の視点から書かれた超幾何積分への初等的入門書である.また,両者の深い関係を示す最近の結果をも丁寧に解説している.

Vol. 8, Eric M.Opdam, Lecture notes on Dunkl opera for real and complex reflection groups,2000. 112p, 品切れ

Dunkl作用素を用いて,Heckman-Opdamの超幾何系を最初から丁寧に解説し,調和解析や複素鏡映群への最近の応用まで含む著者の連続講演をまとめた講義録である.

Vol. 7, Vladimir Georgiev, Semilinear hyperbolic equations,2000. 209p, 品切れ

負の定曲率多様体上でのフーリエ変換を用い双曲型方程式の基本解の重みつき評価を導出し,さらにその評価を用い,半線形双曲型方程式の時間大域解取り扱いを丁寧に解説した優れた講義録である.

Vol. 6, Kong De-xing, Cauchy problem for quasilinear hyperbolic systems,2000. 213p, 品切れ

減衰する小さい初期値に対しての準線形双曲型方程式系の滑らかな解の大域存在性,時間無限大での挙動について統一的な扱いを与えた本理論は幾何学や物理学のさまざまな例に適用ができて興味深い.

Vol. 5, Daryl Cooper; Craig D.Hodgson; Steven P.Kerckhoff, Three-dimensional orbifolds and cone-manifolds,2000. 170p, 品切れ

本巻は,1981年末にThurston により発表された3次元軌道体の幾何化定理の定式化および証明のアイディアを著者の連続講演に基づきまとめた講義録である.大学院生をも視野におき丁寧に解説した好書.

Vol. 4, Atsushi Matsuo, Kiyokazu Nagatomo, Axioms for a vertex algebra and the locality of quantum fields, 1999. 110p, 品切れ

本書は,頂点代数の理論において基本的な諸事実を初等的かつ系統的に論じた好著であり,頂点代数の基礎を手短に学びたいと考える読者に最適な入門書でもある.

Vol. 3, Tomotada Ohtsuki, Combinatorial quantum method in 3-dimensional topology, 1999. 83p, 品切れ

本書は,結び目と3次元多様体の量子不変量とそれに関連する不変量について包括的に概説する著者の連続講演をまとめた講義録である.量子不変量,Kontsevich不変量,Vassiliev不変量,摂動的不変量,LMO不変量,有限型不変量とそれらの間の関係について解説されている.

Vol. 2, Masako Takahashi, Mitsuhiro Okada, Mariangiola Dezani-Ciancaglini (Eds.), Theories of typesand proofs,1998. 295p, 品切れ

Vol. 1, Ivan Cherednik; Peter J.Forrester; Denis Uglov, Quantum many-body problems and representation theory,1998. 241p, 品切れ

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