日本数学会のあゆみ

現代数学入門市民講座 (1995年)

幾何学の場合/代数学の場合/解析学の場合

講師
カリフォルニア大学バークレイ校 小林昭七教授
東京工業大学 加藤和也教授
ドイツ・ヴッパータール大学 クラス・ディーダリッヒ教授

幾何学の場合
小林昭七教授
 ユークリッドの平行線公理を証明しようという2千年の努力の結果、19世紀初期に双曲幾何が発見され、また、同じ頃発表されたガウスの曲面論、それに続くリーマン幾何の導入と、我々の幾何学的対象はより一般的なものになった。それと、同時に幾何は、群論、微分方程式、複素解析、理論物理などと結びつくことにより更に発展した。
 また解析において研究が個々の関数から関数空間へと発展したように、幾何においても個々の空間、計量などの研究だけでなく、空間の集まり、計量の集まりを考えるようになった。このような移り変わりを歴史的に眺めてみたい。
代数学の場合
加藤和也教授
 17世紀の数学者フェルマーが本の余白にのこした、フェルマーの最終定理「n≧3のとき、xn+yn=znをみたす整数 x,y,z は存在しない」は、長い間証明が与えられぬ言明であった。350年を経てついにアンドリュー・ワイルス氏によって証明されたようである。フェルマーの最終定理を証明しようとする努力が、数学、特に整数論に大きな進歩をもたらしてきた。その長い歴史をかえりみ、また今回のワイルス氏の研究の周辺を眺め、整数論の歴史や現在の様子について解説したい。
解析学の場合
クラス・ディーダリッヒ教授
"The Mathematics of the Complex Numbers - A Perfect Synthesis between Analysis and Algebra"
「複素数の数学 - 解析と代数の完全な結合」
 レオンハルド・オイラー(1707-83)等はそれを単に"想像のもの"("虚なるもの")と呼んだ。その後、カール・フリードリッヒ・ガウス(1777ー1855)はその代数的、幾何学的そして解析的性質について深い研究をした。しかしながら、それでもまだ彼はその様な"存在しない"ものについて考えるなどということは気違い沙汰だと人々に思われるのではないかと恐れていた。20世紀の最も優れた数学者の一人である、カール・ルードウィヒ・ジーゲル(1896-1981)は、それを"神が数学者に与え給うた最も完全な贈り物"と呼んだ。それとは"複素数"である。実際、数学の世界における多くのものが、複素数によりその性質が明らかにされる。この講義では、現代数学にとって興味のある幾つかのそのような現象について解説する。
開催日時  1995年3月24日(金)13:00~17:00
開催場所 湘南国際村センター 国際会議場
募集人員 150名 (応募多数の場合は抽選)
参加費 無料
主催 日本数学会
共催 湘南国際村オープニング・イヤー実行委員会
協賛 株式会社 湘南国際村協会
■文部省 科学研究費補助対象事業