第六回(2014年度)福原賞

受賞者

業績題目

赤木剛朗(神戸大学大学院システム情報学研究科)
(2013 年秋函数方程式論分科会特別講演者)

非線形拡散方程式の解の漸近形の安定性解析

砂川秀明(大阪大学大学院理学研究科)
(2006 年秋函数方程式論分科会特別講演者,2003 年,2004 年,
2012 年微分方程式の総合的研究講演者)

非線形双曲型・分散型方程式の大域解の存在と漸近挙動

【選考委員会構成】
足立匡義(委員長),杉本充,利根川吉廣,小川卓克,長澤壯之,太田雅人,清水扇丈,中西賢次,林仲夫,小池達也,柴田徹太郎,小林孝行,岩崎克則,小薗英雄


受賞者

砂川秀明(大阪大学大学院理学研究科)
(2006 年秋函数方程式論分科会特別講演者,2003 年,2004 年,2012 年微分方程式の総合的研究講演者)

業績題目

非線形双曲型・分散型方程式の大域解の存在と漸近挙動

受賞理由

 砂川秀明氏は,非線形 Klein-Gordon 方程式や非線形 Schrödinger 方程式の初期値問題に関する研究に,小澤徹氏,片山聡一郎氏,川原雄一朗氏,李春花氏らとの共同研究も交えながら取り組んできた.特にこれらの方程式系に対する質量共鳴・非共鳴現象に着目して様々な成果を挙げてきた.例えば,質量共鳴をもつ2 次元空間の非線形 Klein-Gordon 方程式系に対して Delort-Fang-Xue の零条件よりも弱い条件下で大域解の存在を示した.また,零条件の代数的な特徴付けを提示し,algebraic normal form の方法を用いることにより,零条件の下では大域解が漸近自由であることを明らかにした.さらに,質量共鳴下における微分型非線形 Schrödinger 方程式系に対する零条件も提示し,大域解の存在およびその漸近自由性を示した.小澤氏との共同研究で得られた微分型非線形 Schrödinger 方程式系の爆発解の構成もこの分野における重要な成果である.また,消散効果を持つ非線形項の特徴付けとその際の解の漸近挙動の研究にも取り組み,1 次元空間における非線形消散項を伴う Klein-Gordon 方程式に対して大域解の漸近挙動を精密に記述したのをはじめとして,非線形 Schrödinger 方程式や波動方程式に対しても様々な結果を得ている.その他にも,系全体のエネルギーは保存されるが特定の成分に全エネルギーが吸収されるような非線形項のクラスを波動方程式系に対して見出し,他の方程式系に対する類似の研究の先鞭をつけた.
 このように砂川秀明氏は非線形双曲型および分散型方程式に対して顕著な成果を多 岐にわたって挙げており,その優れた業績は函数方程式論分科会福原賞にふさわしいも のである.