第四回(2012年度)福原賞

受賞者

業績題目

清水扇丈(静岡大学理学部)
(2006年度函数方程式論分科会特別講演者)

放物型方程式の最大正則性原理と流体の自由境界値問題

肥田野久二男(三重大学教育学部)
(2004年度「微分方程式の総合的研究」講演者)

非線型波動方程式の時間大域解の存在とライフスパンの研究

【選考委員会構成】
林仲夫(委員長),竹井義次,中村周,中村玄,小川卓克,長澤壯之,倉田和浩,杉本充,中西賢次,足立匡義,柴田徹太郎,小林孝行,木村弘信,西原健二


受賞者

肥田野久二男(三重大学教育学部)
(2004年度「微分方程式の総合的研究」講演者)

業績題目

非線型波動方程式の時間大域解の存在とライフスパンの研究

受賞理由

肥田野久二男氏はこれまでの 20 年余に及ぶ研究歴において,非線形波動方程式の研究,特に Morawetz 型の重み付き評価式および重み付き Sobolev 不等式の改良を重ねることにより,解の大域的存在・非存在を分ける非線形項の臨界冪の数学的解明に努めてきた.未知関数の冪乗型非線形項をもつ波動方程式の小さな初期データに対する大域解存在の臨界冪に関する Strauss 予想は今日では肯定的に解決されているが,肥田野氏は J. MetcalfeH. F. SmithC. D. SoggeY. Zhou らとの共同研究により,これを外部問題の場合にまで一部拡張した.そこでは,肥田野氏がこれまでに改良してきた重み付き評価式を用いる方法が基本的アイデアとして用いられている.また,非線形項に未知関数の導関数を含む場合の同種の問題である Glassey 予想は,Strauss 予想よりもさらに難しい問題であり,低次元の場合には先行研究により肯定的に確認されているものの,高次元の場合には非線形項の微分可能性が限られるためさらに解析が困難であり,25 年以上もの間未解決なままとなっていた.肥田野氏は,最近の C. Wang 氏および横山和義氏との共同研究において,正則性の低い空間における有効な評価式を確立することにより,球対称解の枠組みの中においてではあるが,Glassey 予想に肯定的な解決を与えた.これらの成果はまことに顕著であり,函数方程式論福原賞にふさわしいものである.