第四回(2012年度)福原賞

受賞者

業績題目

清水扇丈(静岡大学理学部)
(2006年度函数方程式論分科会特別講演者)

放物型方程式の最大正則性原理と流体の自由境界値問題

肥田野久二男(三重大学教育学部)
(2004年度「微分方程式の総合的研究」講演者)

非線型波動方程式の時間大域解の存在とライフスパンの研究

【選考委員会構成】
林仲夫(委員長),竹井義次,中村周,中村玄,小川卓克,長澤壯之,倉田和浩,杉本充,中西賢次,足立匡義,柴田徹太郎,小林孝行,木村弘信,西原健二


受賞者

清水扇丈(静岡大学理学部)
(2006年度函数方程式論分科会特別講演者)

業績題目

放物型方程式の最大正則性原理と流体の自由境界値問題

受賞理由

清水扇丈氏は放物型偏微分方程式に対する最大正則性原理を,流体力学における非線型偏微分方程式に応用し画期的な成功を収めた.Navier-Stokes 方程式の時間大域解の構成に対しては空間次元 $n$ に対して放物型 $L^n$ 理論が有効であることは知られているが,その自由境界値問題においては,ラグランジュ座標の導入により非線形項に方程式の最高階の微分が現れ準線形の問題となる.こうした最高階の微分を取り扱うためには放物型方程式の最大正則性原理が必要であった.最大正則性原理の成り立つ必要十分条件は抽象的な枠組みで知られているが,$L^n$ 空間など具体的な問題に対しては適用しにくい.清水氏は柴田良弘氏と共に自由境界値問題の適切性を考える上で重要な Lebesgue 空間で自然で見通しの良い十分条件を与え,これを流体の自由境界値問題に組織的に用いて,これまでは困難と思われていたこれらの問題の時間局所適切性を函数解析的に証明した.このほかにも二層流体に対する自由境界値問題への最大正則性理論の適用拡大や,表面張力のある水滴問題の不安定性,さらには一般論では得られない非回帰的空間における最大正則性原理を,実補間理論を用いて確立し,2 次元渦度方程式や,移流拡散方程式などスケール不変空間が $L^1$ の場合の局所解の適切性に応用するなど,応用上の要請で必要となる問題に対して最大正則性理論を確立し適用した.これらの成果はまことに顕著であり,函数方程式論福原賞にふさわしいものである.