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2020年度日本数学会出版賞

2020年度日本数学会出版賞は以下の方に授賞されます。

神保道夫『量子群とヤン・バクスター方程式』(丸善出版、2012年;シュプリンガー、1990年初版)
量子群の概念の登場後、早い時期に日本語による優れた教科書が存在したことはこの分野の研究者層の厚みを確保するのに貢献したものと思われる。最短コースで量子群の基礎を学ぶには現在でも最も適している。一つの分野へ大きな影響を及ぼした著作である。
冨永星
一般読者向けに書かれた海外の啓蒙書や数学入門書を数多く翻訳し、数学の普及に大きく貢献していると評価できる。翻訳は適確かつ分かりやすく、たいへん読みやすいものである。氏の訳本は数学の様々な分野におよび、良質で特徴のある原著が選ばれている。
山本義隆『小数と対数の発見』(日本評論社、2018年)
著者は科学史方面に多数の著作があり、例えば「古典力学の形成」では微分積分学の成立の過程を深く考察している。対象作では、天文学をはじめとする科学の発展に伴って、小数と対数の概念が確立していく様子が丁寧に描かれている。一次資料に丹念にあたりながら、分かりやすい説明によって読者を導く良書である。