日本数学会の出版物

藤岡おもしろ数学教室

藤岡市主催「第8回おもしろ数学教室」報告

河澄 響矢(東京大学数理科学研究科)

 今年の藤岡市おもしろ数学教室(第8回)は 2003年10月29日(水)藤岡市立西中学校で開催された。 講演者は森田康夫理事長で、岡部恒治教育委員長と河澄響矢関東支部評議員 が同行した。

 講演は「数学と社会」と題して、 数学がこれから生きていく上で具体的にどのように役に立つか ということを多くの具体例を挙げながら解説し、 若い世代への期待を語るものであった。

 まず、日本数学会や関孝和などの紹介にはじまり、

    教育は将来生きてゆくための準備であり
数学は役立つ
ということを、豊富な具体例:
  • 毎日の生活(お金を扱うための算数、複雑な建物を歩くための幾何的認識力)
  • 科学を語るための言葉(ニュートンの法則、相対性理論、建物、機械の設計)
  • 情報科学の基礎
  • 確率と統計(臨床医学など)
  • 論理力(筋のたった説明をする力、人間社会の問題を考える)
  • 未知の問題に取り組む力を育てる(平面幾何学)

を挙げながら解説した。そして「数学の勉強の仕方」として、納得できること、 論理的に考えること、意味や関係を考えることの重要性を述べ、進路に応じて 数学の勉強の仕方にも違いが出てくることを具体的に説明した。最後に、現在の 日本のすがたと将来の問題をのべながら「若さは特権。夢を持って生きてほし い。」という言葉で講演を締めくくった。

聴衆の生徒それぞれに興味を覚える具体例があったと見え、 森田理事長のメッセージは確かに伝わっているようであった。 数学と社会の広くて深い繋がりを紹介した講演に触発されたものか 聴衆の生徒、教員、一般参加者から 「リーマン空間とはどんなものか?」から 「テレビマンガ『サザエさん』のジャンケンに必勝法はあるのか?」まで 幅広い質問が20以上よせられ、 森田理事長はそれぞれに丁寧に答えていた。

 さらに、岡部委員長への著書のファンからの質問もあり 和やかな雰囲気のなかで、おもしろ数学教室を終えることができた。 生徒たちの生き生きした興味と物怖じせず質問する積極性は 好感のもてるものだった。

 一連の行事を通じ、藤岡市教育委員会の数学振興への 強い意欲を感じることができた。 藤岡市教育委員会および藤岡市立西中学校のご尽力に感謝し、 この貴重な関係を今後とも維持発展させていきたいと考えるものである。

(「数学通信第8巻4号」より)