理事長からのごあいさつ

数学の広がりと日本数学会

日本数学会 理事長 坪井 俊

日本数学会 理事長
坪井 俊

数学は長い歴史をもつ学問です。日本の現在に至る数学は、明治時代にアラビア数字の記法を導入するとともに、本格的に始まっていますが、当時の発達した和算の素地のうえに日本社会に根付き、20世紀に入って大きく発展しました。特に、20世紀後半からの日本人数学者の活躍は目覚ましく、小平邦彦、広中平祐、森重文というフィールズ賞受賞者を輩出し、2006年に創設されたガウス賞には伊藤清が選ばれています。世界に認められている日本の数学の発展は、先人たちの努力の賜物でもありますが、数学の重要性を理解していただいた各界の皆様の支援の結果でもあります。

さて、日常生活と数学がどのようにかかわっているかを意識することは必ずしも多くありませんが、日常使っているものの製造、流通を考えても、情報化社会といわれる今日の日常のコミュニケーションをとっても、それを支える科学があり、それを記述する数学があります。数学は、物を数えること、量を測ることから始まっていますが、厳密な論理と数量に対する汎用性から社会全体を支える基盤となっています。現代の数学研究と多様化した現代社会が必要とする数学は、様々な場面で関連を持っており、新しい数学理論を創りだすとともに、数学理論の応用がますます求められています。

日本数学会は、数学の研究を盛んにし、その普及によって学術文化の向上発展に寄与しようとすることを目的として設立された社団法人です。前身の東京数学会社設立以来130年,現行の社団法人として60年の歴史を持ち,現在5000人余りの会員を擁しております。現在、数学の研究を支援する様々な企画と実行、講演会・セミナーなどによる数学の普及と啓蒙、教育の改革あるいは数学研究の基盤整備などわが国の数学的な力の向上のための提言などの活動を活発に行っております。

日本数学会は数学の研究の発展とその普及につとめ、現代社会における数学の広がりのなかで、さらなる社会への貢献を続けていこうとしております。皆さまのこれまでのご援助にあつくお礼申し上げるとともに、より一層のご支援をお願い申し上げます。

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