日本数学会について

日本数学会 創立150周年に向かって

日本数学会 理事長 石毛和弘

一般社団法人日本数学会の歩みは、明治10年(1877年)に設立された東京数学会社に始まります。その後、東京数学物理学会、日本数学物理学会と名称を改めながら、幾多の時代の変遷を乗り越え、わが国における数学の発展と普及に力を尽くしてまいりました。昭和21年(1946年)には日本物理学会と組織を分離し、日本数学会として新たな歩みを始め、昭和27年(1952年)には社団法人、平成24年(2012年)には一般社団法人へと移行し、今日に至っております。こうして日本数学会は、来る令和9年(2027年)、東京数学会社の創立から数えて150周年という大きな節目を迎えることになりました。この長きにわたる歩みは、ひとえに数学会の会員の皆さまの、これまでのたゆまぬご尽力とご支援の賜物にほかなりません。ここに心より深く感謝申し上げます。

この150年の間に、数学の世界は大きな進展を遂げるとともに、それを取り巻く環境も大きく様変わりしました。かつては純粋な知の探究を主たる目的としていた数学は、今日では情報通信、金融、医療、さらには人工知能技術といった最先端分野において、理論的な基盤として重要な役割を果たしています。学部初年次で学ぶ線型代数や微分積分学から、代数学、幾何学、解析学、さらには応用数学の先端的領域に至るまで、幅広い数学の知見が技術革新を支えており、数学に対する社会的要請も一層高まりつつあることを実感しております。

一方で、学会運営を取り巻く状況もまた、大きく変化しております。事業支出の増加にともない、2026年度からは、実に30年ぶりとなる会費改定を実施する運びとなりました。会員の皆さまにはご負担をお願いすることとなり、誠に心苦しい限りではございますが、何卒ご理解とご協力を賜りますようお願い申し上げます。また、日本数学会では現在、事業内容の見直しを進めるとともに、持続可能な運営体制の構築に向けた取り組みを始めております。あわせて、一般財団法人数理科学振興会との共同事業にも着手し、日本数学会の事業も変化しつつあります。

これからも日本数学会は、これまで育んできた伝統を大切にしつつ、時代の変化に応じて変革を進め、数学の振興と社会への貢献に努めてまいります。

未来を見据え、次なる世代へと確かな歩みを引き継いでいくため、変わらぬご支援とご協力を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。