主要20学会声明 「我が国の将来に責任を持つ科学技術研究と若手人材育成・教育の強化」
「我が国の将来に責任を持つ科学技術研究と若手人材育成・教育の強化」
2009年12月4日
本日2009年12月4日に、日本数学会は他の19学会と共同で標記の声明を発表しました。 声明本文は以下の通りです。
東京大学において本日開催いたしました記者会見とパネル討論会に多数ご参集いただきありがとうございました。
理事長 坪井 俊
主要20学会声明 平成21年12月4日
私たち学会関係者は、今般の行政刷新会議事業仕分けの判定に対し,特に科学技術分野に関する審議状況と判定結果に関して深く憂慮し、我が国の今後の科学技術の発展と人材育成及び教育に大変な危機感を抱いております。我が国の約33万人の科学技術関連研究者をメンバーに含む主要20学会が、学会、大学・研究機関、研究分野、地域を超えて、政府関係者への以下の要望と共に、意見を表出いたします。 無駄を省いてより良い国家予算を作るため一つの方策として行われた行政刷新会議の事業仕分けは、事業判定に多くの国民が納得する一方で、我が国の国家百年の計を破壊しかねない判定もなされています。特に、長年積み重ねてきた研究者・教育者の努力と議論を科学的評価・検証もなく、国際貢献・評価も考慮せず、また、若手人材育成の展望も示さず、一握りの仕分け作業人と制限された説明者との短時間のやり取りにより大幅な予算削減や見直しを決定してしまうことに対して大きな危機感を抱かざるを得ません。世界的な科学技術と人材獲得の大競争時代において、我が国の将来の運命を決める極めて重要な科学技術と教育・若手人材育成への投資は、将来展望・国益・国際貢献を論じない事業仕分け作業には全く馴染まない国の中心的戦略政策であります。我が国の将来に禍根を残すことの無いように政策・施策を推進することをお願い申し上げます。 現在、我が国が抱える解決すべき国家課題は、持続可能社会の実現・健康、安全・環境とエネルギー・枯渇資源代替・情報通信システム・共生できる社会基盤・産業、経済、労働と雇用政策・人材確保・自然の再生・国土と地域の再生・生活可能空間拡大など、解決が困難で深刻なものが多く、これらの解決には多角的視点からの多様な先進的研究が必要です。科学技術の発展の歴史と源泉を理解せずに見掛け上類似というだけで研究予算の整理統合を行うと、科学技術の発展を根底から崩壊させてしまう恐れが高いといえます。仕分け作業のように余りにも短期的収益・成果にこだわるあまり、国際社会の中で我が国の科学技術全体の中・長期的展望が見えなくなり、気がついた時には日本の科学技術が壊滅的な打撃から立ち上がれなくなっていたでは取り返しがつきません。 科学技術研究は、中・長期的国家戦略的な政策・施策のもとに進めるべき知的文化的事業であり、収益=効率・成果という財政的視点のみからの仕分け作業からは切り離すべきものです。資源・エネルギーに乏しい我が国が先進国の中でプレゼンスを高め国際貢献を果たすことができるのは、世界を先導する科学技術のお陰といえます。こうした観点から、とりわけ以下の7点の指摘と喚起をおこない、関係方面に適切なる対応をお願いいたします。
鳩山内閣が、我が国の中・長期的国家戦略としての科学技術強化とそのための若手人材育成強化などの将来への投資の展望に立った予算の策定を実施されることを強く要望し、我が国および人類社会の将来への貢献と責任を持つ英断を切に望みます。 |