2007年度日本数学会賞関孝和賞

広報委員会

2007年度日本数学会賞関孝和賞

(English)

2007年度日本数学会賞関孝和賞はInstitut des Hautes Études Scientifiques (IHES) に「長年に亘る数学界への貢献」により授賞されます。なお、表彰式は9月22日に東北大学で開催されます。2007年度秋季総合分科会において下記の次第で行われます。

日時
2007年9月22日14:45--15:15
場所
東北大学(川内北キャンパス)マルチメディア棟M206

受賞理由

2007年度 日本数学会 関孝和賞
フランス高等科学研究所 (IHÉS)
'長年に亘る数学界への貢献'

2007年度日本数学会関孝和賞は, 長年に亘る数学会への貢献により, Institut des Hautes Études Scientifiques(IHÉS,フランス高等科学研究所) に授賞致します. また授賞式は, 諸般の事情により秋季総合分科会期間中に開催致します.

IHÉS は, 1958年に, 数学と理論物理学を中心とした研究所としてレオン・モチャーン氏により設立され, プリンストン高等研究所,マックス・プランク研究所,MSRI と並ぶ数学の研究所として, 世界の数学研究をリードしてきました. レオン・モチャーン氏自身が初代の所長に就任し, ロバート・オッペンハイマーとジャン・デゥドネの協力の下に アレクサンダー・グロータンディックを教授に迎え, その後1971年からはニコラス・カイパー, マーセル・ベルジェ, ジャン・ピエール・ブルギニヨンが歴代の所長を務めています. アレクサンダー・グロータンディック, ルネ・トム, ピエール・ルネ・ドリーニュ, アラン・コンヌ, ジョン・ブルガン, マクシム・コンツェビッチ, ローラン・ラフォルグのフィールズ・メダリスト, 京都賞受賞のミカエル・グロモフ, また, ピエール・カルティエやデニス・サリバンといった 数学界にきわめて大きな影響を与えた比類のない研究者を常勤教授として擁し, 国際的に評価の高い優秀な研究者, 若手研究者を招き, 研究者が独自の研究に邁進できる研究環境を与えてきました. IHÉS を訪れた研究者の中から世界の数学研究のリーダーが多く育っていることは, その歴史が証明しています.

IHÉS は, 日本の数学研究者の優秀性を当初から認識し, 日本の数学研究者との交流を盛んに行ってきました. そもそも, IHÉS に開設直後の1959年に外国人研究者として初めて招かれたのは フィールズ賞受賞以前の廣中平祐氏です. 歴代の所長はとくに日本人の知人を多く持つ親日家であり, 多くの日本人研究者が IHÉS を訪れました. この10年間でも60名を超える日本人研究者が招かれています. IHÉS は優秀な研究者の研究を支援するために, 場所と時間を提供し, 多くの研究者の交流を促進することで世界の数学研究の進展に貢献してきました. この世界的な研究機関に滞在した多くの日本人数学研究者は, これを大きな機会として, その後目覚ましい研究を展開し, 数学研究のリーダーとして活躍しています.

一方, IHÉS は 若手研究者の育成にも積極的に取り組んでおり, たとえば日本を含めたアジアの若手研究者が毎年5-6名招かれています. とくに2003年から, 日本学術振興会との協調の下に, EPDI(European Post-Doctoral Institute for Mathematical Sciences)の枠内で, 日本人博士課程修了直後の若手研究者のフェローシッププログラムが開始され, 毎年1名以上の若手数学研究者が IHÉS を訪れています. また, 新しい数学研究分野や女性数学者の研究者の積極的な招聘により招かれた研究者もおります.

現在の所長であるジャン・ピエール・ブルギニヨン氏は, 20年来の知日家として, 日本の数学者との連携の拡大に力を注いできました. また, 日本の企業や財団による資金援助を得て, 若手研究者の育成にも力を注いでいます. 平成18年度は, アジア年と位置づけ, 「整数論の若手育成のための夏の学校」の開催, 昨年11月には, 日本数学会とIHÉS 共催による 「MSJ-IHÉS Workshop on Noncommutativity」や パリ日本文化会館での一般講演会が行われました. 

以上のように, IHÉS は, 50年近くに亘り日本人数学研究者との研究交流を育み, その結果多くの日本人数学者が育ち, 相互の文化交流の進展が行なわれてきました. このような貢献は, 関孝和賞に誠に相応しいものであります.

日本数学会
理事長 小島 定吉(こじま さだよし)

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