市民講演会

市民講演会

日時

3月27日（日）14:00--16:30

会場

埼玉大学で開催が予定されていました日本数学会市民講演会（2022年3月27日）は新型コロナ感染拡大のため、オンライン開催となりました。オンライン開催に参加ご希望の方は下記URLからご登録ください。（すでに旧登録フォームから事前登録がお済の方は改めて事前登録する必要はありません）

主催

日本数学会

後援

埼玉大学

プログラム

14:00--14:10　挨拶　清水扇丈（日本数学会理事長・京都大学）

14:10--15:10　講演　稲葉　寿（東京大学大学院数理科学研究科）

　「人口と感染症の数理」

講演概要

2020年の冬に新型コロナの流行(COVID-19)が始まってから丸二年以上がたちました．これまでにも社会活動に影響を与えるような感染症の流行は何度もありましたが，これほど深刻な影響を与えたケースは100年前のスペイン・インフルエンザ以来でしょう．しかも科学的な対策という点で，これほど早くワクチンの生産と接種が行われたことは初めてのことだと思われますが，実は今回はもうひとつこれまでと異なったことがありました．今回はじめて，流行の予測や政策提言に数理モデルが大規模に利用されるようになったことです．感染症数理モデルの利用は，諸外国ではすでに前世紀のエイズパンデミックの時から一般化してきていましたが，我が国では公式的なレベルでは今回がはじめてのことでした．
感染症の数理モデルは，18世紀のダニエル・ベルヌーイの仕事にそのルーツがあるといわれますが，とくに1927年にあらわれた，英国のケルマックとマッケンドリックによる微分方程式モデル（SIRモデル）によって，その基礎が築かれました．ケルマックとマッケンドリックは，一つの閉じた人口集団に感染症が発生した場合，どのようにそれが拡がっていくかを記述する方程式を提案したのです．それと同じ頃，米国のアルフレッド・ロトカは，年齢構造をもった一般の人口集団の変動を記述する積分方程式を研究していました．一見すると，非常に異なった現象，モデルを扱っていたように見えますが，これら二つのモデルは，共通の数学的構造をもっていて，そこから感染症数理と人口数理に共通の基本再生産数というキー概念が生まれました．そのことは，1990年代以降の感染症数理の発展に大きな意味を持っていました． いまは目前のパンデミックの影に隠れて関心が薄れていますが，少子高齢化という人口問題は21世紀日本の直面する最大の問題であり続けています．上述したように，人口問題も感染症の流行も，個体群ダイナミクスの問題であり，共通の数学的構造をもっています．本講演では，基本再生産数に基づく人口と感染症の数理を紹介したいと思います．人口にかかわる現象は社会を根底的に規定するものであり，その数理を理解することは，市民の基礎的なリテラシーとなるべきものだと思うからです．

15:30--16:30　講演　ベズ ニール（埼玉大学大学院理工学研究科）

　「数学で見る針の回転」

講演概要

1916年，東北帝国大学の掛谷宗一博士は次の幾何的問題を考えました．「長さ1の線分(以下，『針』とよびます)を1回転させてできる平面図形のうち，面積が最小となる図形は何か? 」最初に思い浮かぶのは「円盤」でしょう．針をその中心で回転させてあげると，直径が1の円盤の中で1回転することが分かります．
問題はこの円盤よりもどのくらい小さな面積で針を回転させられるかですが，その答えはとても意外なものになります
このような掛谷問題は最先端数学研究の非常に活発な一分野であり，その他の分野（量子力学，数論など）との驚くべきつながりもありますので，本講演で簡単にご紹介します．

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