日本数学会解析学賞

日本数学会解析学賞

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最終更新日:2020 年 3 月 30 日(「第19回解析学賞候補者推薦のお願い」を追加致しました)

【解析学賞設置のお知らせ】

(「数学通信」第6巻第2号(2001年8月)より抜粋)

日本数学会の解析系5分科会,すなわち函数論分科会,函数方程式論分科会,実函数論分科会,函数解析学分科会,統計数学分科会,が「解析学賞検討委員会」を設けて「解析学賞」の設置について検討いたしてまいり,この度合意に達しました.
理事会に,解析系5分科会からの設置案の審議をお願いいたしましたが,4月の定例理事会において承認され,2002年度からこの賞を運営することが決まりました.(以下略)

解析学賞検討委員会
委員長 井川 満

【解析学賞検討委員会構成】

今吉洋一 風間英明 谷島賢二 井川満 薮田公三 
岡沢登 野村隆昭 幸崎秀樹 小谷真一 景山三平

作成責任者:足立匡義(京都大学大学院人間・環境学研究科)

規定・内規

理事会承認 2006年4月22日

理事会改定 2014年11月8日

日本数学会解析学賞基金規定

総則

この基金は日本数学会解析学賞基金と称する.

目的と事業

この基金は広い意味での解析学の進展を通して数学の発展に寄与することを目的とする.この基金は前条の目的を達成するために次の事業を行う.解析学および解析学に関連する分野において著しい業績をあげた人に,その業績を顕彰する目的で,日本数学会解析学賞(以下,解析学賞と称する)を与える.その他,前条の目的を達成するために必要な事業.

解析学賞委員会

解析学賞受賞者の選考およびこの基金の有効な運営のために解析学賞委員会を設ける.委員会は前年度委員会が推薦し日本数学会理事長が委嘱する7名の委員,及び委員会担当理事1名で構成される.委員長は委員会担当理事を除いた委員の中より委員会で選出される.委員の任期は1年とする.

解析学賞

委員会は毎年3件以内の解析学賞受賞対象を選考し,授賞は委員長がこれを行う.授賞対象者は日本数学会会員とする.授賞対象業績は過去5年程度の研究成果とし,著書についてはもう少し遡るものも考慮する.授賞式は日本数学会秋季総合分科会において行う.受賞者の氏名と業績については広くこれを公表する.

委員会

委員長は必要に応じ委員会を招集する.
委員会は解析学賞受賞者の選考のほかに次の事項を審議・決定する.

  1. この基金の解散,この規定の変更に関する事項.
  2. この基金の事業遂行上必要とみとめる事項.

資産及び会計

資産は寄付を随時受け入れ,これを基金とする.基金は日本数学会定款第52条に定める基金の取り扱いに従って日本数学会に委託する.

内規

委員会は運営上必要な事項を内規として定めることができる.

規定の変更

委員の3分の2の賛成によりこの規定を変更することができる.

付則

この解析学賞設立当初の委員会(解析学賞検討委員会)の委員は次の通りである.
今吉洋一,風間英明,谷島賢二,井川満,薮田公三,
岡沢登,野村隆昭,幸崎秀樹,小谷真一,景山三平
本規定(解析学賞規程)は2002年4月1日より施行する.
2006年3月29日解析学賞選考委員会において変更.
2006年4月22日理事会において本規定(解析学賞基金規定)を承認.本規定は同日より発効.
2014年9月27日解析学賞選考委員会において変更.
2014年11月8日理事会において本規定(日本数学会解析学賞基金規定)を承認,本規定は同日より発効.

解析学賞規程

2001年4月21日制定

現規定(解析学賞基金規定)はこちら

(目的)
1.解析学および解析学に関連する分野において著しい業績をあげた研究者に対し,その業績を顕彰する目的で,解析学賞をおく.
(対象)
2.
(あ)授賞対象者は日本数学会会員とする.
(い)授賞対象業績は過去5年程度の研究成果とし,著書についてはもう少し遡るものも考慮する.
(件数)
3.授賞選考は別に定める受賞者選考委員会において年に1度とし,件数は3件以内とする.
(授賞式)
授賞式は秋季総合分科会において行う.
(規程の変更)
5.受賞者選考委員会の3分の2以上の決議をもって本規程を変更することができる.
(付則)
6.本規程は2002年4月1日より施行する.

日本数学会解析学賞基金内規

  1. 日本数学会解析学賞(以下,解析学賞と称する)は,若手のみを対象とする奨励賞としての性格を持つものではない.また,過去の一時点における業績ではなく,選考時点で進行中の研究に連なる業績を授賞の対象とする.
  2. 解析学の範囲をできるだけ広く理解し,応用系の仕事も解析学の発展に寄与するものであれば等しく評価する.
  3. 解析学賞委員会について:

    1. 委員会は委員会担当理事を含む8名の委員で構成される.
    2. 前年度委員会は,分科会連絡責任評議員からの推薦を基に,7名の委員を日本数学会理事会に推薦する.
    3. 上記項目(い)により推薦される委員7名の構成は,函数方程式論,統計数学の両分科会から各2名,函数論,実函数論,函数解析学の3分科会から各1名とする.委員は分科会を代表するという役割は持たない.
    4. 担当理事以外の委員の任期は,6月1日から翌年5月31日までの1年とし,再任を妨げない.ただし,通算で3年を限度とする.
    5. 委員の名前を授賞式の時に公表するものとする.
  4. 受賞候補者推薦について:

    1. 日本数学会会員からの他薦によるものとする.
    2. 解析学賞推薦委員を関係各分科会(函数論,函数方程式論,実函数論,函数解析学,統計数学)より3名ずつ選ぶ(各連絡責任評議員に依頼する).推薦委員の役割は一定数の受賞候補者の推薦を確保することにある.委員の任期は1年とし,再任を妨げない.ただし,直近の10年の通算は3年を限度とする.
    3. 解析学賞委員は推薦の資格を持たないものとする.
  5. 受賞者の表彰について:

    1. 受賞者には,賞状及び1件につき賞金30万円を授賞式の時に贈呈する.
    2. 受賞講演については翌春の年会で分科会特別講演として実施できるよう,関係する分科会の連絡責任評議員に解析学賞委員長からお願いする.そのときに解析学賞受賞講演である旨およびその公告についての取り計らいもお願いする.
  6. 運営事務の円滑化を図るため,事務局を置く.

    2006年3月29日解析学賞選考委員会において変更.(旧内規(解析学賞内規)はこちら

    2013年7月28日解析学賞委員会において改定.

    2014年9月27日解析学賞委員会において改定.

解析学賞内規

  1. 解析学賞は,若手のみを対象とする奨励賞としての性格を持つものではない. また,過去の一時点における業績ではなく,選考時点で進行中の研究に連なる業績を授賞の対象とする.
  2. 解析学の範囲をできるだけ広く理解し,応用系の仕事も解析学の発展に寄与するものであれば等しく評価する.
  3. 受賞者選考委員会について:

    1. 委員の総数を8名とする.
      内訳は,函数方程式論,統計数学の両分科会から2名ずつ,函数論,実函数論,函数解析学の3分科会から1名ずつとし,これに日本数学会理事会より推薦の1名が加わるものとする.委員長は委員の互選によって選出される.
    2. 分科会からの委員は分科会責任評議員からの推薦を受けた者とするが,分科会を代表するという役割は持たない.
    3. 分科会推薦の委員の任期は1年とし,重任を妨げない.ただし,通算で3年を限度とする.理事会推薦の委員の任期は,理事会の定めるところによる.
    4. 受賞者選考委員全員の名前を受賞者発表時に公表するものとする.
  4. 授賞候補者推薦について:

    1. 他薦に限るものとする.
    2. 推薦委員を関係各分科会(函数論,函数方程式論,実函数論,函数解析学,統計数学)より3名ずつ選ぶ(各責任評議員に依頼する).委員の任期は1年とし,重任を妨げない.ただし,通算で3年を限度とする.
    3. 日本数学会一般会員からの受賞者選考委員宛の推薦も受け付ける.
    4. 受賞者選考委員は推薦の資格を持たないものとする.
  5. 授賞式について:

    1. 授賞式は秋季総合分科会において行う.
    2. 受賞講演については翌春の年会で分科会特別講演として実施できるよう,関係する分科会の責任評議員に受賞者選考委員長からお願いする.そのときに解析学賞受賞講演である旨およびその公告についての取り計らいもお願いする.

受賞者紹介

第1回(2002年度)解析学賞

受賞者 業績題目
野口潤次郎(東京大学大学院数理科学研究科) 多変数値分布論と複素解析幾何学の研究
舟木直久(東京大学大学院数理科学研究科) 界面の統計力学と確率解析
柳田英二(東北大学大学院理学研究科) 非線形拡散方程式に関する研究

【選考委員会構成】

赤平昌文,新井仁之,井川満(委員長),小谷真一,野村隆昭,藤本坦孝,向井茂(理事会推薦),
谷島賢二

受賞者 野口潤次郎(東京大学大学院数理科学研究科)
業績題目 多変数値分布論と複素解析幾何学の研究
受賞理由 野口潤次郎氏は,多変数複素関数論を中心として複素幾何学,代数幾何学,Diophantus 理論にまたがる分野を研究対象とし,成果をあげてきた.特に,高次元 Nevanlinna 理論を独自の手法によって改良し,その応用として,多様体間の有理型写像の値分布理論の構築,高次元小林双曲的多様体の構成,Serge Lang によって提唱された2つの予想の解決,関数体上の Diophantus 幾何の研究,有理点集合の考察等に卓越した成果をあげており,今後の発展が期待されている.
また,同氏は1995年の第3回 MSJ 幾何学的複素解析国際会議,2001年の岡潔生誕百年記念多変数複素解析国際会議の組織委員長を務め,また毎年冬に開催される多変数関数論葉山国際会議の提唱者であり,この葉山国際会議の世界的名声を高めてきた.このように,この分野に於いて常に指導的役割を果たしてきている.選考委員会は,これらの功績をふまえて,同氏が解析学賞に相応しいものと結論した.
受賞者 舟木直久(東京大学大学院数理科学研究科)
業績題目 界面の統計力学と確率解析
受賞理由 相転移現象を示す物理系が二つ以上の相の共存する初期状態から出発するとき,時間の推移とともにそれらを分離する境界(界面)が現れ,それが時間発展にともなって動いて行く様子が観測されます.従来このような巨視的運動は主に現象論的に考察され,その数学的記述には連続体の力学が適用されてきました.これに対し近年,確率論の立場から物理系を構成する微小粒子の運動法則に基づいて巨視的現象を理解する試みがなされるようになりました.
舟木氏は Spohn 氏や他の研究者たちとの共同研究において,時間発展する微視的粒子系から出発してその時空に関する尺度極限(scaling limit)をとることにより界面の方程式を数学的に厳密に導くことに成功しました.新しい確率論的構造を解明するためにエントロピー法を用いるに際し,局所エルゴード定理の証明において局所関数が有界でないために生じる困難を連結局所平衡状態という斬新な概念を導入して克服していました.また不変測度である Gibbs 分布の一意性を証明したことも重要であります.
以上のように,舟木氏の研究は物理学・統計力学に動機づけられた問題から出発し,その問題の解決のために,流体力学極限という確率論の新しい型の極限定理に関わる問題として捉え,その深い理解に基づいた解析を行い,解析学や確率論の成果を用いた種々の手法を開発するとともに,新たな数学的問題をも生み出してきました.これらの仕事は国際的にも高く評価されます.以上により,舟木氏に解析学賞を授与することがふさわしいと決定されました.
受賞者 柳田英二(東北大学大学院理学研究科)
業績題目 非線形拡散方程式に関する研究
受賞理由 柳田英二氏は非線形拡散方程式系に関して最近,次に述べるような多くの優れた研究成果をあげられています. まず第一に非線形拡散方程式系の定常解の線形安定性の問題を統一的に,そしてより精密に研究するための新たな手法を編み出し,拡散誘導による解の線形安定性あるいは不安定性,空間的に非一様な解の不安定性,あるいは定常パルス解の不安定性などに関して顕著な成果をあげています.
つぎに,反応拡散系には,拡散項が加わることによって,拡散項を取り除いてえられる常微分方程式の性質から常識的に期待されるとは違った,特異な現象の1つであるいわゆる拡散誘導による爆発現象があります.柳田氏は,この爆発現象をおこす反応拡散方程式系のクラスを,溝口紀子氏・二宮広和氏との共同研究によって構成し,さらにいくつかの決定的な結果を出しています. 次に,柳田氏はべき型の非線形項をもつ一次元半線形放物型方程式の解の爆発問題に関しても,溝口紀子氏との共同研究によって,初期値が $n$ 回符号を変えるすべての初期値に対して解が有限時間で爆発するような非線形項の臨界指数 $p_n$ の存在の発見と指数の特定という,著しい結果をえております.この結果は,無限次元力学系からの視点からの証明方法と共に,爆発問題に新たな展開をもたらす画期的なものと評価されています.
さらに柳田氏は半線形楕円型偏微分方程式の球対称解を,変数変換による標準形に変換し統一的に取り扱う方法の開発などの成果を四ッ谷晶二氏との共同で得ています.
このように柳田氏は優れた数学的直感力と着想によって,多くの困難な問題を新たな視点から切り開いて解決してこられました.柳田氏の得られた結果とその研究方法は非線形拡散方程式の研究の発展にきわめて重要なもので,解析学賞を授与するにまことにふさわしいものです.

第2回(2003年度)解析学賞

受賞者 業績題目
泉正己(京都大学大学院理学研究科) 作用素環の部分環と群作用の研究
福島正俊(関西大学工学部) ディリクレ形式とマルコフ過程の研究
宮嶋公夫(鹿児島大学理学部) 強擬凸 CR 構造と孤立特異点の変形理論

【選考委員会構成】

大春慎之介,織田孝幸(理事会推薦),川島秀一,重川一郎,竹村彰通,野口潤次郎(委員長),真島秀行,綿谷安男

受賞者 泉正己(京都大学大学院理学研究科)
業績題目 作用素環の部分環と群作用の研究
受賞理由 ヒルベルト空間上の有界線形作用素のつくる環の中で,共役をとる*演算について閉じていて,さらにノルム位相について閉じているものを $C^*$ 環,弱位相について閉じているものを von Neumann 環という.主にこの二つを合わせて作用素環という.泉氏はこの両者にわたって,その部分環の構造解析および準同型写像や群作用の研究を行ない,卓越した業績をあげた.
中心がスカラー作用素のみからなる von Neumann 環を因子環といい,これ以上環の直和に分解できない基本的な対象であるその部分因子環の構造の研究は,Jones による指数理論を契機におおいに発展した.それは作用素環におけるガロワ理論とでもいうべきもので,ガロワ群に対応するものは量子群よりさらに広い.泉氏は代数的場の理論に関係した Longo によるセクターを $III$ 型因子環や Cuntz 環上で巧妙に扱い,その fusion rule を解析して部分因子環の分類の深い結果を得るとともに,部分因子環の新しい構成法を見出した.また群-部分群の作る部分因子環の特徴づけを行ない,その同型問題を解決した.幸崎氏との共同研究では2次のコホモロジーの部分因子環版を考察するとともに,低次元有限次元 Kac 環(ある種の Hopf *環)の完全分類を行なった.泉氏は Longo と Popa との共同研究において,因子環のコンパクト群作用に関するガロワ対応の従来の研究では仮定されていた条件付期待値の存在が自動的に満たされることを示し,コンパクト群のガロワ対応の最終結果を確立した.さらにその対応をコンパクト Kac 環にまで拡張することに成功した.最近ではコンパクト量子群の無限テンソル積作用を解析し,その不動点環の相対可換子環を非可換なポアソン境界としてとらえる研究が興味深い.$C^*$ 環に対する研究でも,単純 $C^*$ 環上のセクター理論を構築して単純 $C^*$ 環の部分環の構造を解析したり,ある種の単純 $C^*$ 環上の Rohlin の性質を持つ有限群の作用を $K$ 理論を用いて分類するなど研究成果は著しい.
このように,作用素環理論の広い分野にわたって,斬新なアイデアと高度な技巧によって大きなインパクトをもたらした泉正己氏の研究は,解析学賞に相応しいものである.
受賞者 福島正俊(関西大学工学部)
業績題目 ディリクレ形式とマルコフ過程の研究
受賞理由 福島正俊氏は,マルコフ過程を研究対象として,ディリクレ形式理論を自在に活用し,多くの成果をあげてきた斯界における第一人者である.その成果は,著書「Dirichlet forms and Markov processes」に結実している.書中に展開された,氏自身の手による福島分解の理論は,マルコフ過程の汎関数解析に強力な手段を与え,以後の研究に与えた影響は計り知れない.この理論は,ディリクレ形式に適合するマルコフ過程の加法的汎関数に,マルチンゲールとエネルギー零の加法的汎関数との和への分解を与えるものである.それはまた半マルチンゲールの枠組みで定式化される伊藤の公式の一般化でもあり,応用に柔軟性と厚みとをもたらした.上記著書は,1994年に大島洋一氏,竹田雅好氏との共著の形で,その後の成果も取り入れ改訂版が出版され,研究者必携の書となっている.
福島氏の理論は,局所コンパクト可分距離空間上の正則ディリクレ形式をその議論の出発点としていたが,この精緻な理論を,無限次元空間に拡張することが種々試みられ,より一般な準正則ディリクレ形式が基本的であることが認識されるようになった.
そこで福島氏は原点に立ち返り,一般的なハウスドルフ空間を基礎空間として理論を再検討し,準正則ディリクレ空間は正則ディリクレ空間に準同相であることを見出し,福島分解が半マルチンゲール分解を与えるための必要十分条件をディリクレ形式に関する価式で与えた.さらにこの結果を利用し,無限次元空間において,有界変動関数の確率論的な特徴付けを与え,ユークリッド空間の部分集合がカチオッポリ集合であることを,その集合上の変形ブラウン運動で特徴付けた.
これら近年の福島氏の仕事は,準正則ディリクレ形式という一般化された正則概念が,旧来の正則ディリクレ形式と密接につながっていることを認識させ,この方向の抽象化の重要性を知らしめた画期的なものであり,解析学賞受賞に相応しいものである.
受賞者 宮嶋公夫(鹿児島大学理学部)
業績題目 強擬凸 CR 構造と孤立特異点の変形理論
受賞理由

1975年日本数学会総合講演において,倉西正武氏により提唱された「複素3次元以上の正規孤立特異点芽の変形の versal 族をその境界上の強擬凸 CR 構造の変形を通じて構成せよ」という問題は宮嶋氏により,最終的に解決された.複素2次元の場合は,実3次元 CR 多様体が高次元の場合と異なる複雑さを持つために予想される困難により倉西の問題からは除外されていた.宮嶋氏はこの困難を克服し,複素2次元の場合をも含めて問題の解決に成功した.
以下に宮嶋氏の主要な業績をあげる.

  1. 正規孤立特異点芽の変形理論を境界上の強擬凸 CR 構造の埋め込み安定的変形理論として理論化した.
  2. 通常の強擬凸 CR 解析学では versal 族の構成はうまく行かない.宮嶋氏は versal 族構成に必要な修正 CR 解析学を確立した.
  3. 実3次元 CR 多様体上の解析学を確立し,複素2次元孤立特異点も取り扱うことに成功した.
  4. 特異点の変形とその境界の CR 構造の変形との間にはギャップがあり,これが問題を複雑にしていた.これを宮嶋氏は,新たに「安定埋め込み」の概念を導入することにより解決した.さらに具体的な正規孤立特異点の変形に対して CR 解析学の研究に基づいた研究を行っており,特異点の変形理論へその境界からアプローチする実際的な応用の道を切り開いた.

宮嶋氏のこれら一連の仕事は世界的に高い評価と大きな注目を得ている.これらの理由から,同氏の業績は解析学受賞に相応しいものである.

第3回(2004年度)解析学賞

受賞者 業績題目
赤平昌文(筑波大学数学系) 統計的推定の高次漸近理論
岩崎克則(九州大学大学院数理学研究院) 多面体調和関数とパンルベ方程式の研究
西田孝明(京都大学大学院理学研究科) 非線形偏微分方程式の解の大域構造の解析的研究

【選考委員会構成】

一瀬孝,小林良和,重川一郎,高木泉,竹村彰通,野口潤次郎(委員長),宮岡洋一(理事会推薦),望月清

受賞者 赤平昌文(筑波大学数学系)
業績題目 統計的推定の高次漸近理論
受賞理由 赤平昌文氏は統計数学の推測理論の分野において,特に統計的推定の高次漸近理論の構築や非正則推測論の確立等の顕著な業績を挙げてきた.

統計的推定の理論においては標本の大きさが無限大となる漸近理論が重要である.特に最尤推定量が漸近分散を最小にする意味で一次漸近有効であることは古くから知られていた.1970年代の後半から赤平氏は竹内啓氏と共同で,漸近展開の手法を用いた統計的推定の高次漸近理論に着手し,世界の他のグループと先を争う形で高次漸近理論を構築した.そして各種の正則条件が満たされる場合の高次漸近理論をほぼ完成することに成功した.その主要な結果は,

  1. 1次漸近有効推定量は2次漸近有効である.
  2. 中央値不偏となるように修正された補正最尤推定量は3次漸近有効である.
  3. 3次漸近有効推定量は4次漸近有効である.

これらの結果は,国際的にも注目を集めた甘利俊一氏らの高次漸近理論への情報幾何学的アプローチにも大きな影響を与えた.
さらに赤平氏は確率密度関数の微分可能性等の正則条件が満たされない場合における,統計的推測の高次漸近理論の手法を確立した.特に2つの1次漸近有効推定量を比較する基準として,同等の推定精度を得るための標本数の差に対応する欠損量の概念に注目した.そして両側指数分布等の非正則な分布における1次漸近有効推定量の標準欠損量を求めることに成功し欠損量の概念の有用性を示した.
これらの精緻な諸結果は解析学的手法を駆使したものであり,同氏の業績は解析学賞にふさわしい.

受賞者 岩崎克則(九州大学大学院数理学研究院)
業績題目 多面体調和関数とパンルベ方程式の研究
受賞理由 岩崎克則氏は,解析学に端を発し代数学や幾何学と密接に関係する問題に対し,その問題の深い数学的構造を見出し,明示的公式として表現するという仕事を積み重ねている.特に,多面体調和函数とパンルベ方程式に関する研究において著しい成果を挙げてきた. 調和函数は平均値の性質をもつ,すなわち球面平均がその球面の中心における函数値と一致する連続函数として特徴づけられる.球面ではなく,与えられた多面体に関する平均値の性質をもつ連続函数を「多面体調和函数」と総称する.1962年にA.フリードマンとW.リットマンは多面体調和函数全体のなす空間は有限次元か,という基本問題を提出した.これに対し岩崎氏は,偏微分方程式論,多面体の組合せ論,群の不変式論などを用いて,肯定的な解答を与え,さらに次元公式を含む多面体調和函数の構造について多くの深い結果を導いた.
P.パンルベが見出した動く分岐点をもたない二階有理的常微分方程式に関する体系的研究は,我が国で盛んに行われ優れた結果が蓄積されてきた.岩崎氏は,近年その第 VI 方程式の非線形モノドロミーがモジュラー群の複素3次曲面への保測的な作用として書き下せることを示した.さらに,稲葉道明,齋藤政彦両氏と共同で,ベックルンド変換群のリーマン-ヒルベルト対応による特徴づけを与え,また相空間を安定放物型接続のモジュライ空間として構成することで,パンルベ第 VI 方程式の幾何学的基盤を整備し発展させた.岩崎氏の貢献は,第 VI 方程式の解の振る舞いの研究を,ある超越的なリーマン-ヒルベルト対応を経由して,簡単な2次元複素離散力学系の研究に帰着させたことである.この結果,方程式の特徴的な性質が自然にかつ正確に理解できるようになった.その意義は極めて大きく,同氏の業績は解析学賞にふさわしい.
受賞者 西田孝明(京都大学大学院理学研究科)
業績題目 非線形偏微分方程式の解の大域構造の解析的研究
受賞理由 西田孝明氏の最近の業績の特徴は,非線形偏微分方程式の解の大域構造の数学解析に,計算機援用証明の方法を本質的かつ本格的に用いたところにある.同氏は,80年代には既に様々な非線形偏微分方程式に関する数多くの業績を上げており,その名は世界的に認知されていたが,従来の多くの結果が,自明解や特殊解の周りからの小擾乱解についてのものであったことに満足せず,大振幅擾乱の解にも適用できる解析手法を模索していた.
転機は,80年代末に故山口昌哉氏との共同研究において,シナイとヴァルの1980年の論文に出会うことから訪れた.即ち,シナイとヴァルのアイデアを,ダフィン方程式等を例に含む常微分方程式系に具体的に適用すべく,方程式の近似の議論を工夫するとともに,吉原英明氏と区間演算による精度保証付きの数値計算プログラムを開発し,打ち切り誤差,丸め誤差等の評価と存在条件の検証を計算機内で実現し,様々な非自明周期軌道の存在を解析的に証明することに成功した.その後,非線形偏微分方程式系においても,その分岐現象の解析が常微分方程式の固有値問題に帰着できる場合に同様の議論を適用し,自明解からの定常分岐やホップ分岐の存在,臨界パラメータでの自明解の不安定化等について計算機支援による数学的証明を次々と成し遂げた.
21世紀に入っては,解の大域構造を解析すべく,九州大学の中尾充宏氏のグループと共同し,計算機で求めた近似解を与える毎に,シャウダーの不動点定理を適用できる近傍の構成を計算機内で実現することに成功した.これによって,自明解から大きく離れた解を含む様々な定常解の存在証明を計算機援用の下数学的に与えることが可能となった.これらの計算機援用の解析手法は,より詳しい大域構造の解析において将来の発展が大きく期待されるものであり,同氏の業績は解析学賞にふさわしい.

第4回(2005年度)解析学賞

受賞者 業績題目
中西賢次(名古屋大学大学院多元数理科学研究科) エネルギー凝縮と非線形波動の漸近解析
藤原英徳(近畿大学産業理工学部) 冪零および可解リー群のユニタリ表現と可換性予想の解決
吉田伸生(京都大学大学院理学研究科) 確率解析による統計物理学的モデルの研究

【選考委員会構成】

石井仁司(委員長),岡沢登,中村玄,野口潤次郎,舟木直久,松本堯生(理事会推薦),吉田朋広,若山正人

受賞者 中西賢次(名古屋大学大学院多元数理科学研究科)
業績題目 エネルギー凝縮と非線形波動の漸近解析
受賞理由 エネルギー空間(通常は,ソボレフ空間 $H^1(\mathbf{R}^n)$)は,非線形偏微分方程式の解を考える関数空間として,数学的にも物理的にも自然な空間である.しかし,非線形相互作用により,無限遠を含む $\mathbf{R}^n$ のある点の近傍で,解のエネルギーの塊が生じたり,あるいはさらにエネルギー凝縮が起こる可能性がある.そして,このようなエネルギーの集中は,解の大域的な性質を決定する.中西賢次氏は,Bourgain(1999)がソボレフ臨界指数の非線形性を持つ Schrödinger 方程式に用いた議論を発展させ優れた研究業績を挙げた.
中西氏の研究業績は,以下の三つに要約される.一つは,空間1次元と2次元の非線形 Klein-Gordon 方程式と Schrödinger 方程式に対するエネルギー散乱理論の構成である.これは,1985年に Ginibre と Velo が空間3次元以上を解決して以来の未解決問題であったが,中西氏は時間変数を含む新しい Morawetz 不等式を開発し,これを用いてエネルギー塊が生じないことを示した.二つ目は,Maxwell-Dirac 方程式の初期値問題に対するエネルギー空間における弱解の存在と一意性である.1994年に Klainerman と Machedon が,Maxwell-Klein-Gordon 方程式の初期値問題に対しエネルギー空間における適切性を示したが,それと類似の構造を持つ Maxwell-Dirac 方程式については未解決のままであった.中西氏は Masmoudi 氏とともに,短い時間内ではエネルギー凝縮が起こらないことを示した.三つ目は,相対論的波動方程式の光速を無限大にしたときの非相対論的極限を考え,Masmoudi 氏とともに,極限移行の際に生じる特異性(すなわち,エネルギー凝縮)を特徴付け新しい評価式を得た.これにより,どのような場合にどの極限に移行するのか,ほぼ完全に分類することに成功した.
以上,中西賢次氏の研究業績は優れたものであり,解析学賞にふさわしいものである.
受賞者 藤原英徳(近畿大学産業理工学部)
業績題目 冪零および可解リー群のユニタリ表現と可換性予想の解決
受賞理由 冪零リー群の表現論は,正準交換関係を通し量子力学の基礎を与え,Weil 表現を定義し保型形式の表現論的枠組とも深く関る. 業績題目にある冪零リー群における可換性予想とは,単項表現と呼ばれる部分群の1次元表現からの誘導表現の,既約分解における有限重複度性と不変微分作用素環の可換性の同値性を主張するものである.1992年に Corwin-Greenleaf が前者から後者が導かれることを示し,この逆の成立,即ち同値性を予想として提出した.予想が正しければ,ルート系や極大コンパクト群などの豊かな構造がある半単純リー群に比べ,構造論的にやや貧弱な冪零リー群の枠組でも,たとえばリーマン対称空間上の解析学のような豊かな世界が構築できることを強く示唆する点で,成立が大いに期待されていた.
そのようななか,藤原氏は G.Lion,B.Magneron,S.Mehdi 氏とともにこれを肯定的に解決した.さらに,表現の部分群への制限に対し,可換性予想の“双対”が成立することを A.Baklouti 氏との共同研究で明らかにした.単項表現の超関数の空間での分解は,Penney-Fujiwara の Plancherel 公式として既に有名であるが,これは冪零および可解リー群の等質空間上の解析学に対する同氏の研究の一貫した礎である.その意味で,予想の解決は,単発的ではなく極めて自然な流れにあった.事実,解決が現実性をおびるまでの同氏の10年余りの歳月は,冪零リー群,さらに指数型可解リー群のユニタリ表現の「軌道の方法」を用いた幾何学的な構造解析に捧げられている.このことが共同研究が実った最大の理由であり,同氏なくしては今回の成功はありえない.さらにこの成果は冪零リー群における Frobenius 相互律の研究や不変微分作用素環の多項式予想への足がかりも与えた.ややもすれば玉石混交なこれらの群の表現論において,このように輝きを秘めた玉を取り出した功績は非常に高く評価されるものであり,解析学賞の受賞にふさわしい.
受賞者 吉田伸生(京都大学大学院理学研究科)
業績題目 確率解析による統計物理学的モデルの研究
受賞理由 吉田伸生氏の最近の研究テーマは,「ランダムウォークの統計力学」および「格子スピン系の相転移と緩和現象」である.吉田氏は,このような統計物理学に関わる問題について,確率解析の手法を駆使し,深い理解に基づく解析を行い,近年著しい成果を挙げている.特に,統計物理学的モデルにおける新たな相転移現象の発見は,国際的に高く評価されている.
ランダムウォーク,あるいはその連続化としてのブラウン運動は,高分子の数学模型として用いられる.吉田氏は F.Comets 氏,志賀徳造氏との共同研究において,ランダム媒質中の向きづけられた高分子鎖が,3次元以上では媒質との相互作用の強弱により全く異質の形状を呈し,「超拡散/拡散」転移を起こすことを証明した.一方,2次元では常に超拡散的である.特に吉田氏はブラウン運動に基づく連続モデルを提唱し,その結果,精緻な解析が可能になり,揺らぎ指数に対する重要な不等式の導出に成功した.また,種村秀紀氏と共同で,互いに吸着力が働く複数のランダムウォークについて「局在/非局在」転移の存在を示し,さらに磯崎泰樹氏と共同で,界面モデルにおける濡れ転移の解析を行い,壁面からの吸引力の大小によるランダムウォークの「局在/非局在」転移を明らかにし,非局在時に尺度極限を論じた.
一方,緩和現象について,吉田氏は K.Alexander 氏,樋口保成氏と共同で2次元確率 Ising モデルの解析を行い,相転移領域において一般の境界条件の下で,スペクトルの跳びに関する結果を導き,緩和速度が極めて遅いことを証明した.さらに,非有界スピン系にも適用可能な手法を開発し,対数ソボレフ不等式に関わる難問を解決した.
以上のように,吉田氏は統計物理学に動機づけられた問題から出発し,確率解析を広範に応用して目覚しい成果を挙げており,同氏の業績は解析学賞にふさわしい.

第5回(2006年度)解析学賞

受賞者 業績題目
小沢登高(東京大学大学院数理科学研究科) $II_1$-型因子環の構造解析
木上淳(京都大学大学院情報学研究科) フラクタル上の解析学の基礎付け
吉田朋広(東京大学大学院数理科学研究科) 確率過程に対する漸近展開理論,統計推測理論の研究とその応用

【選考委員会構成】

赤平昌文,河東泰之,小林和夫,佐藤宏樹,中尾愼宏(委員長),二木昭人(委員会担当理事),舟木直久,柳田英二

受賞者 小沢登高(東京大学大学院数理科学研究科)
業績題目 $II_1$-型因子環の構造解析
受賞理由 小沢氏は,作用素環論において衝撃的な結果を連発しており,すでに新しい世代の世界的リーダーである.離散群の完全性の特徴づけ,可分 $C^*$-環の純粋状態空間の等質性(岸本,境両氏との共著),$AF$-環への埋め込み問題の研究,可分普遍 $II_1$-factor の非存在など,著名な結果は数多いが,ここでは業績題目「$II_1$-型因子環の構造解析」に直接関係する3編の論文について述べる.
まず,2004年に小沢氏は,双曲群の von Neumann 群環においては,極小射影を持たない部分環の相対可換子環は常に単射的であることを示した.これより前の1998年に M. Ge 氏は,自由群の von Neumann 群環が無限次元環二つのテンソル積に分解しないという有名な結果を示していたが,この Ge の定理のはるかに強い一般化が,小沢氏の結果の系として直ちに従う.証明の方法も斬新で,Ge 氏の路線とはまったく異なるものである.
ついで S. Popa 氏と共にこの結果の応用として,双曲群の von Neumann 群環のテンソル積について,しかるべき意味でのテンソル積分解の一意性を示した.これによりたとえば,自由群因子環 $n$ 個のテンソル積は $n>m$ の時,$m$ 個のテンソル積には埋め込めないことがわかる.これは有名な未解決問題をはるかに強い形で解決したことになっている.
さらに続けて,$II_1$-型因子環の自由積について,群論における Kurosh の定理の類似を得た.特に,ある種の von Neumann 群環 $M$ について,$n$ 個のコピーから自由べきを作ると,できる作用素環は $n$ ごとに異なることがわかる.自由確率論における驚異的な結果である.
以上いずれも,驚くべき方法によって,驚くべき結果があっという間に証明されており,今後の作用素環論の進むべき方向を示す,きわめて重要な結果である.解析学賞を授与するのは当然のことと言えよう.
受賞者 木上淳(京都大学大学院情報学研究科)
業績題目 フラクタル上の解析学の基礎付け
受賞理由 木上淳氏は,世界に先駆けてシェルピンスキーガスケット上にラプラス作用素を構成し,さらに有限分岐的なフラクタル上にディリクレ形式やラプラス作用素を構成するための一般論を展開した.その成果は,2001年出版の著書「Analysis on fractals」に結実している.書中で木上氏は,resistance form と呼ばれる概念を導入し,対応する拡散過程が強い再帰性をもつようなディリクレ形式を,有効抵抗を用いて効果的に解析する理論を展開している.この理論は,調和解析学・確率論・幾何学など広範囲の研究者に強い影響を与え,上記著書はフラクタル上の解析学に関する良書として,研究者必携の書となっている.
木上氏はさらに,resistance form に関する研究を深化させ,有効抵抗距離と呼ばれる距離を用いて Green 関数や調和関数の詳細な性質を調べた.Resistance form は,有限分岐的なフラクタル上の自然なディリクレ形式をはじめとして数多くの例を含んだ重要な範疇であり,木上氏の一連の研究は,様々な数学の分野で応用され発展している.
B. M. Hambly 氏,熊谷隆氏との共同研究では,フラクタル上に自己相似なディリクレ形式が与えられたとき,基礎となる測度を別の自己相似測度に変えることにより,対応する自己共役作用素のスペクトルの挙動がどのように変化するかを調べ,固有値の漸近挙動にマルチフラクタル性が現れることを解析した.2004年の論文では,解析学の重要な不等式である Nash 不等式の局所版を提唱し,熱核が上から劣ガウス型評価を持つための必要十分条件を,局所 Nash 不等式と脱出時刻に関する評価を用いて与えた.
このように木上氏は,幅広い分野の研究者に影響を与える著しい業績を挙げており,同氏の業績はまことに解析学賞にふさわしい.
受賞者 吉田朋広(東京大学大学院数理科学研究科)
業績題目 確率過程に対する漸近展開理論,統計推測理論の研究とその応用
受賞理由 統計的推測理論において,漸近解析は統計量の分布の精密な近似を与える方法で,多くの分野の理論的基礎になっている.特に,1970年代の後半から,漸近展開に基づく高次漸近理論は独立観測,時系列の場合に大きく発展したが,確率過程に対する漸近展開は1980年代の Götze-Hipp らのミキシングマルコフチェインに関する結果が知られているだけで,未開拓の領域であった.
吉田氏は,1990年代以降の一連の研究において,連続時間確率過程の汎関数に対する分布の漸近展開の3つの原理,すなわち,スモール $\sigma$-理論,マルチンゲールの漸近展開,ミキシング過程の漸近展開を提唱し,発展させた.そして,Malliavin 解析によって,マルチンゲールおよびミキシング $\epsilon$-マルコフ過程に対する漸近展開,すなわち高次極限定理を確立し,確率微分方程式などの非線形時系列に対する高次統計推測理論を展開した.特に,漸近展開では,確率変数の分布の滑らかさとして独立観測の場合に Cramér 条件が用いられるが、連続時間確率過程においてそれに対応する条件が汎関数の Malliavin 共分散の局所的な非退化性であることを示し,その容易な検証法も示した.
また,2つの拡散過程においてその共分散構造の推定はファイナンスデータ解析の基本的な問題であるが,データの修正を一切行わない非同期共分散推定法を林高樹氏とともに提案し,その推定量の漸近的性質も示した.さらに,漸近的方法によるオプション評価法をも提案し,それはファイナンスの分野において実用面でその威力を発揮している.
以上のように吉田氏の研究は,理論から応用まで多岐にわたり,特に統計的推測を確率過程に深く浸透させた意義は大きく,またその優れた成果は国際的にも高く評価されており,同氏の業績はまことに解析学賞にふさわしい.

第6回(2007年度)解析学賞

受賞者 業績題目
会田茂樹(大阪大学大学院基礎工学研究科) 無限次元空間上の確率解析
菱田俊明(新潟大学自然科学系) ナビエ・ストークス方程式における藤田・加藤理論の新展開
平井武(京都大学名誉教授) 無限対称群およびその環積の既約表現ならびに指標の研究

【選考委員会構成】

石井仁司(委員長),磯崎洋,川又雄二郎(委員会担当理事),小薗英雄,岡田正已,辻元,吉田朋広,吉田伸生

受賞者 会田茂樹(大阪大学大学院基礎工学研究科)
業績題目 無限次元空間上の確率解析
受賞理由 Riemann 多様体上のループ空間を典型例とする無限次元空間は,幾何学的構造のほかにブラウン運動から定まる Wiener 測度を持ち,幾何学,解析学,確率論,場の量子論などの多様な分野が関連する興味深い研究対象である.会田氏は特に確率解析の理論を足掛かりに無限次元空間の研究に精力的に取り組んできた.
氏の業績は多岐にわたるが,まず種々の解析的関係式の導出が挙げられる.L. Gross による Wiener 空間上の対数 Sobolev 不等式は解析に有効な道具として詳しく研究され,その後の無限次元空間における研究の雛型になっている.会田氏は Riemann 多様体上のループ空間において標準 Dirichlet 形式に関する既約性及びポテンシャル付き対数 Sobolev 不等式を証明し,この分野の研究に大きな影響を与えた.また,一般の Markov 半群に関する一様正値性の概念を一般化し,Poincaré,Sobolev 型不等式との関連を示すなど,無限次元空間における解析に有用な理論を構築した.更に,無限次元空間上の対称拡散過程の短時間漸近挙動の研究も多くの研究者の興味を引いた特筆すべき業績である.
近年,会田氏は無限次元空間における準古典近似の問題に取り組み顕著な成果を挙げている.有限次元の場合に比べ,無限次元特有の障害がこの問題には生じる.氏はこれまでに培ってきた解析的不等式の証明のテクニックに加え,T. Lyons によるラフパス解析の理論を無限次元空間に援用することで困難を克服し,有限次元の場合の類推に厳密な証明を与えた.更に無限次元空間上の微分形式に作用する Witten Laplacian を考察して準古典近似の問題を論じるなど,新たな研究分野を拓くような研究を次々に発表した.
以上のように,会田氏の研究は無限次元空間における確率解析の発展に大きく貢献しており,同氏の業績は解析学賞にふさわしい.
受賞者 菱田俊明(新潟大学自然科学系)
業績題目 ナビエ・ストークス方程式における藤田・加藤理論の新展開
受賞理由 揚力が最大,抵抗が最小となる翼の形状の設計は流体力学における古典的な課題のひとつであるが,このような課題に数学的に答えるためには,境界をもった領域でナビエ・ストークス方程式を考察することが要請される.菱田氏は,このような境界値問題として,半空間にスリットを開けたような aperture 領域においてナビエ・ストークス方程式を考察し,その時間大域的な古典解を初期データが $L^3$ において小さい場合に構成した.aperture 領域においては,線形ストークス方程式の一意可解性を考える上で,スリットを通り抜ける流量や圧力差の影響を考慮する必要があり,この結果は興味深いものである.
さらに菱田氏は回転する物体の外部における流体の解析に関して著しい業績を挙げている.回転座標系においてはコリオリ力を考慮することになり,回転する物体の外部における流体の場合の線形化作用素の解析は複雑で困難なものである.実際,菱田氏は回転の影響を考慮した線形化作用素が,$L^2$ において正則半群を生成しないことを証明してみせた.一方で,この線形化作用素がある種の平滑化効果を持つことを証明し,藤田・加藤による著名な結果と同様に,$H^{1/2}$ に属する初期データに対して時間局所的一意解の存在を示した.時間大域的古典解の存在については,定常解の存在が鍵となる.菱田氏は,Farwig,Muller 両氏との共同研究において,
Littlewood-Paley の2進分解関数族,square 関数などを駆使して $L^p$ 評価式を確立した.実関数論的手法によって,このような対称性を持たない方程式に対する解の2階偏導関数の $L^p$ 評価式の導出に成功したことは,菱田氏の非線形偏微分方程式と調和解析学の双方に亘る深い洞察力によるものといえる.更にその応用として,Farwig 氏と共に,定常ナビエ・ストークス方程式に関して,実補間空間論を駆使し,回転角速度が小さい場合に解の一意存在を証明した.
このように,菱田氏はナビエ・ストークス方程式の外部問題に対して多くの素晴らしい研究成果を挙げ,この分野の発展に大きく貢献している.同氏の研究業績は解析学賞にふさわしいものである.
受賞者 平井武(京都大学名誉教授)
業績題目 無限対称群およびその環積の既約表現ならびに指標の研究
受賞理由 平井武氏の無限対称群とその環積の既約表現及び指標に関する研究は位相群の表現論における画期的な業績といえる.これまでも,平井氏は一般ローレンツ群の既約表現の分類,実半単純群の指標の研究などの記念碑的な業績を挙げている.有限対称群については古くから盛んに研究され古典とも言える大理論が打ちたてられ,数学のみならず理論物理など多くの分野に豊かな応用をもたらしている.一方,無限対称群は,いわゆる非 I 型の群であり表現の既約表現への分解が一意でないなど,難しい研究対象といえる.そのため既約表現の代わりに因子表現を考えるわけであるが,1960年代に Thoma により無限対称群の因子表現の分類と指標の具体的な記述が与えられた.一方,因子表現の分類パラメーターを増大する Young 図形の漸近挙動により記述し,無限対称群の因子表現の指標を有限対称群の既約指標の極限として表すという結果が1970年代末に Vershik-Kerov によって得られた.これにより無限対称群と,有限対称群の古典理論が結びつき,これらの結果は,Okounkov などによって最近急速に進展しているランダム Young 図形の研究に大きく影響を与えている.
一方,平井氏は,扱いづらさゆえに無限対称群ではあまり研究されて来なかった既約表現を調べた.まず無限対称群のように帰納極限を用いて表される群に対する表現論の一般論を辰馬伸彦氏,尾畑伸明氏と下村宏彰氏の協力の下で整備し,それに基づき無限対称群の既約表現を豊富に構成し,Thoma の指標公式に対する既約表現からのアプローチを確立した.平井氏の方法の大きな長所は無限対称群とコンパクト群との環積の場合にも適用可能なことである.たとえば2次の巡回群と無限対称群の環積は無限ランクの B 型 Weyl 群になる.平井氏は洞彰人氏や平井悦子氏らとともにこのプログラムを押し進め Vershik-Kerov 理論の環積への一般化を行った.この平井氏らの結果により,コンパクト群や B 型 Weyl 群などの豊かな古典的な理論を持つ数学的対象とランダム Young 図形の漸近挙動を結びつけることができるようになり,ここに新しい道が切り拓かれた.
このように,平井武氏の無限対称群とその環積の既約表現及び指標に関する一連の研究業績は解析学賞にふさわしい優れた業績である.

第7回(2008年度)解析学賞

受賞者 業績題目
佐藤健一(名古屋大学名誉教授) Lévy 過程と無限分解可能分布の研究
田村英男(岡山大学大学院自然科学研究科) 量子力学におけるスペクトル解析
林仲夫(大阪大学大学院理学研究科) 非線形分散型方程式の漸近解析

【選考委員会構成】

尾畑伸明,小薗英雄,児玉秋雄,柴田良弘(委員長),前島信,山口孝男(委員会担当理事),山崎昌男,吉田朋広

受賞者 佐藤健一(名古屋大学名誉教授)
業績題目 Lévy 過程と無限分解可能分布の研究
受賞理由 Lévy 過程は時間的に一様な独立増分をもつ確率過程で Brown 運動や Poisson 過程を含み,マルコフ過程やセミマルチンゲールを構成する基礎となるクラスである.無限分解可能分布と関係し分布論的にも興味深く,Lévy 過程の解明は確率論における重要な課題の一つである.
佐藤氏はこの分野に長年取り組み多くの成果をあげてきた.1999年に Cambridge University Press から出版された著書「Lévy processes and infinitely divisible distributions」は,20世紀の Lévy 過程の研究を著者の研究領域を中心に集大成したものとして,確率統計学はもとより,数理ファイナンス,保険数学,統計物理やコンピューター科学にまで引用されており,関連分野の発展に大きく貢献している.
佐藤氏の最近の研究に関して,まずLévy 過程の確率積分およびそれに関係した研究があげられる.これはLévy 過程による広義確率積分の基礎的研究であり,積分の特性関数の表現を求め,広義確率積分可能な行列値関数のクラスと分布の領域の問題を解いた.また,佐藤氏は前島信氏とともに,無限分解可能分布の入れ子のサブクラスのうち,Jurek クラス,Goldie-Steutel-Bondesson クラス,Thorin クラス,一般化された G 型分布のクラス,自己分解可能分布のクラスのそれぞれのサブクラスの極限がすべて安定分布のクラスの合成積と弱収束の意味での閉包と一致することを示した.次に Ornstein-Uhlenbeck 型過程に関連する研究がある.一般化された Ornstein-Uhlenbeck 型過程の分布の性質は未開の分野であるが,佐藤氏は A.Lindner 氏とともに,Poisson 過程に関係する特別の場合について,その定常分布が無限分解可能になるための必要十分条件を見出し,また絶対連続性及び連続特異性を徹底的に調べた.これは Bernoulli 合成積とその類似物から生じるフラクタル的測度に関する Erdos,Peres,Solomyak,渡部俊朗などの研究を Lévy 過程の確率積分に関連づけた画期的成果であり,無限分解可能分布論におけるいくつかの病的現象がここでは自然に現れる.この他,非再帰的 Lévy 過程の非再帰性の程度に関する研究,錐に時径数をもつ Lévy 過程の研究も高く評価される.
このような佐藤健一氏の研究業績は解析学賞にふさわしいものである.
受賞者 田村英男(岡山大学大学院自然科学研究科)
業績題目 量子力学におけるスペクトル解析
受賞理由 田村英男氏は,長年にわたり量子力学におけるスペクトル散乱理論の数学的研究において顕著な多くの業績をあげており,わが国おける数理物理学分野の代表的な研究者である.最近5年間は,「散乱理論におけるアハラノフ・ボーム効果(AB 効果)」と「Trotter-Kato 型の半群積公式の精密化とその応用」を精力的に研究している.
量子力学にしたがう粒子の運動にベクトルポテンシャル自身が関与する現象は AB 量子効果として知られている.田村氏は,1995年頃から AB 効果に焦点をあてた磁場による散乱問題を研究し,最近は複数のデルタ型磁場(ソレノイド磁場)による散乱において AB 効果がどのように現れるかを追及している.実際,田村氏は散乱振幅や散乱全断面積などの物理量の準古典極限における漸近公式を導き,AB 効果とデルタ型磁場の中心間で振動する古典軌道との関係を明らかにした.解析の中核となるのはレゾルベントの準古典評価であるが,振動する古典軌道が存在するため,その評価の証明には困難な計算を要する.このような状況下で田村氏は,長年培ってきた作用素論と超局所解析に関する高度な技術や知識に加え,Gauge 変換を用いた独創的なアイデアによって一連の顕著な研究結果を導出した. また,特異な磁場による Dirac 粒子の散乱においても AB 効果の数学解析に力を注いでいる.さらに,一瀬孝氏と共同研究では,Schrödinger 半群の積分核や領域上の熱核を Trotter-Kato 型作用素の積分核で近似できることを証明し,精密な誤差評価を得ている.特に,ポテンシャル関数が滑らかな場合には,半群の積公式が作用素のノルム収束にとどまらず,基本解のレベルで各点収束していることを証明したことは大いなる知見と言えよう.この結果は経路積分の分野でも注目を浴びている.
田村氏の研究の特徴は,数理物理学として興味深い問題を,数学的に自然な仮定の下での美しい定理として提唱していることである.しかし,その証明は非常に困難であり,解析学の豊富な知識および技術,卓越した計算力,独創性を駆使した後に研究成果に至っている.すなわち,これらの多くの定理の導出は,田村氏の力量がなければ成しえなかったものと言えよう.このように,田村氏の解析学者としての力量は多くの専門家が認めるところであり,ハードアナリシスを駆使したこれらの業績は解析学賞にふさわしいと言える.
受賞者 林仲夫(大阪大学大学院理学研究科)
業績題目 非線形分散型方程式の漸近解析
受賞理由 最近,楕円型,放物型,双曲型という従来の分類に属さない分散型偏微分方程式が盛んに研究されている.分散型方程式とは時間について可逆であり,伝播速度が振動数に依存し,特に振動数が大きくなるにつれて限りなく大きくなる波動の伝播を記述するもので,数理物理学には重要な非線形分散型方程式が数多く現れる.次元や指数が特定の値を取るときには可積分系として取扱えるが,一般的な場合の研究には函数空間や不等式による評価が必要となる.この方面には国内外に多くの研究者がいるが,林氏は多くの業績を上げており,グループのリーダー的な存在である.
以下,林氏の業績のうち特に重要なものについて述べる.まず KdV 型方程式の最終値問題に対する修正波動作用素を構成した.この問題は,非線形項が未知関数の微分に依存し,共鳴項と非共鳴項を含むことによる困難があるが,林氏らは新たな近似解の構成方法を発見し有効に用いることによってこの困難を克服した.
次に非線形 Schrödinger 方程式について,線形方程式の解と非線形項が共鳴現象を起こす場合の解の漸近挙動は,まず小澤徹氏らによって研究されたが,林氏らはこの方程式に対する修正散乱作用素を構成し,最終的な解決を与えた.林氏らの方法は以前と異なり,非線形項の滑らかさが不要なので,より一般の方程式や高次元にも適用可能である.また非線形 Klein-Gordon 方程式は分散型方程式ではないが,非線形 Schrödinger 方程式の相対論版と見なせるので,非線形 Schrödinger 方程式についてと同様な結果が予想されていたが未解決であった.林氏らは新たな解の時間減衰評価を発見し,さらに解を光円錐の内外に分割して詳しく評価することによって,初期値に仮定されていたコンパクト台の仮定を取り除き,この問題を解決した.
このような林氏の一連の研究業績は解析学賞にふさわしいものである.

第8回(2009年度)解析学賞

受賞者 業績題目
西谷達雄(大阪大学大学院理学研究科) 双曲型偏微分方程式の初期値問題に関する適切性の研究
相川弘明(北海道大学大学院理学研究院) 複雑領域上のポテンシャル論の研究
小川卓克(東北大学大学院理学研究科) 実解析的手法による臨界型非線形偏微分方程式の研究

【選考委員会構成】

尾畑伸明,小磯深幸(委員会担当理事),小薗英雄,小谷眞一(委員長),柴田良弘,神保雅一,平地健吾,宮地晶彦

受賞者 西谷達雄(大阪大学大学院理学研究科)
業績題目 双曲型偏微分方程式の初期値問題に関する適切性の研究
受賞理由 偏微分作用素は対応する特性方程式の幾何的な性質から楕円型,放物型,双曲型などに分類される.偏微分作用素に対する初期値問題が $C^{\infty}$ な解を一意的にもつとき $C^{\infty}$ 適切であるという.時間に関して未来にも過去にも $C^{\infty}$ 適切であれば偏微分作用素は双曲型でなくてはならないことは,Lax-Mizohata の定理として知られている.問題は双曲型方程式の $C^{\infty}$ 適切性である.定数係数作用素や,対称双曲系,Strictly hyperbolic operator に対する理論は1970年初頭までに完成した.Strictly hyperbolic operator でない場合について西谷氏は長年に亘り顕著な業績をあげてこられた.実際 Strictly hyperbolic operator でない場合の最初の顕著な結果は1970年代後半の Ivrii-Petkov による強双曲型ならば効果的双曲型であるという結果である.ここで強双曲型とは任意の低階項をつけても $C^{\infty}$ 適切になる作用素をいい,効果的双曲型とは主シンボルの幾何的な特徴付けの一つである.1980年代に岩崎氏と西谷氏により全く異なる方法により効果的双曲型ならば強双曲型であることが示された.これは双曲型方程式の適切性に関する基本命題である.
これにより非効果的双曲型の場合の問題が残された.最近西谷氏はエネルギィー積分法と超局所解析に加え幾何的に精緻な考察を重ねる方法により多くの困難を克服し,低階項に Levi 条件を付け加えれば $C^{\infty}$ または Gevrey 5 の関数クラスで適切であることや,Levi 条件がない場合は Gevrey 3 または 4 の関数クラスで適切であることを示した.これらの結果は双曲型方程式の分類を完全にするものであり,またその研究方法はこれからの研究のあり方を方向付ける重要なものである.以上に述べた西谷氏の業績は解析学賞にふさわしいものである.
受賞者 相川弘明(北海道大学大学院理学研究院)
業績題目 複雑領域上のポテンシャル論の研究
受賞理由 相川弘明氏の主な業績は,ユークリッド空間の領域の境界近傍での調和関数の解析的性質と領域の幾何学的性質との関わりを明らかにするという研究テーマに関するものである.領域が球などの場合には,調和関数に関する古典的な結果として,正値の調和関数が境界のほとんどいたるところで非接境界値を持つこと(Fatou の定理),正値調和関数は境界上の測度の Poisson 積分として一意的に表されること(Riesz-Herglotz の定理),二つの正値調和関数の境界近傍での値の比較に関する境界 Harnack 原理,などがよく知られている.1960年代以降の多くのポテンシャル論研究者の関心は,これらの基本的な結果が,滑らかでない境界を持つ領域の場合にどこまで一般化されるか,という問題であった.この問題に対して相川氏は,フラクタル状の境界をもつ領域など非常に広いクラスの複雑な境界を持つ領域において基本的な結果が成立することを示した.この一般化はそれ自身重要なポテンシャル論の成果であるが,相川氏はさらに進んで,逆に,それらの領域の幾何学的性質は調和関数のポテンシャル論的性質が成り立つために必要である,といういくつかの結果を示した.例えば,John 領域と呼ばれる領域は調和測度の或る評価によって特徴付けられ,一様領域は一様境界 Harnack 原理で特徴付けられる.また,John 領域のうち相川氏の導入した準一様領域は,調和測度の強2倍条件で特徴付けられる.また,相川氏は領域の位相的な境界点に対応する理想境界の点の個数を領域の John 定数によって評価する結果なども示している.相川氏のこれらの結果は,幾何学的解析学を含む広い分野の最近の解析学を統合し深い考察を行って得られたもので,ポテンシャル論に関する革新的かつ重要な意味をもつ成果であり,解析学賞にふさわしいものである.
受賞者 小川卓克(東北大学大学院理学研究科)
業績題目 実解析的手法による臨界型非線形偏微分方程式の研究
受賞理由 小川氏は広汎な関数空間における様々な臨界型不等式を自らの手で導出し,それを非線形偏微分方程式の解法に応用するという研究で多くの成果を挙げている.例えば,臨界型 Sobolev 空間における Gagliardo-Nirenberg 型補間不等式と,それと同値な Trudinger-Moser 型不等式を最良定数とともに導出し,その応用として,複素係数を持つ Ginzburg-Landau 方程式の初期値境界値問題の弱解が一意的であることと,粘性係数がゼロになる極限で,非線形 Schrödinger 方程式のエネルギークラスの弱解に収束することを証明した.また,優臨界における Brezis-Gallouet-Wainger-Ozawa 型不等式を斉次 Triebel-Lizorkin 空間における不等式の系として導出した.応用として,球面上に値をとる2次元調和写像流の滑らかな時間局所解の延長可能性は,関数の平均振動ノルムの有界性によって支配されることを証明した.また,同ノルムによる弱解の正則性のための十分条件についても新たな指標を与えている.小川氏が提唱したこれらの関数空間は,スケール変換の観点からも臨界ケースを取り扱っている最適なものである.
調和解析学においては,Hardy 空間論自身の研究は現在では古典論となりつつあるように見えるが,非線形偏微分方程式の研究においては,未だその有用性は健在である.小川氏は2次元 drift-diffusion 方程式について,方程式のスケール変換則を不変にする初期条件の空間と,時間大域解存在の構成に有用な entropy 汎関数を両立させる関数空間として,Hardy 空間より広いある斉次 Besov 空間を導入し,Littlewood-Paley 分解と実補間空間論を駆使して,熱半群の端点評価式を確立した.応用として,2次元 drift-diffusion 方程式の初期条件が Hardy 空間に属するとき,その時間局所解,およびノルムが小さいときの時間大域解の一意存在を示した.この熱半群の端点評価式は,今後 Navier-Stokes 方程式等他の非線形偏微分方程式への応用についても期待できるものとして注目されている.
このように,小川氏は力強い実解析学の手法により,難解な非線形偏微分方程式の解法に対してスケール不変性に代表される臨界型に肉迫する多くの素晴らしい研究成果を挙げており,これらの業績は解析学賞に相応しいといえる.

第9回(2010年度)解析学賞

受賞者 業績題目
中村周(東京大学大学院数理科学研究科) シュレーディンガー方程式の超局所解析とスペクトルの研究
長井英生(大阪大学大学院基礎工学研究科) 長時間大偏差確率最小化に関するリスク鋭感的制御を通じた研究
永井敏隆(広島大学大学院理学研究科) 走化性モデルに対する解析学的研究

【選考委員会構成】

会田茂樹,川島秀一(委員長),小磯深幸(委員会担当理事),小林良和,神保雅一,田村英男,林仲夫,宮嶋公夫

受賞者 中村周(東京大学大学院数理科学研究科)
業績題目 シュレーディンガー方程式の超局所解析とスペクトルの研究
受賞理由 シュレーディンガー方程式は,自然界における微視的現象を記述する量子力学の基礎方程式である.中村氏は,シュレーディンガー方程式およびシュレーディンガー作用素に関わる数学的問題を関数解析と偏微分方程式論の立場から独創的なアイデアを駆使し,広くかつ深く研究し,多くの著しい研究業績をあげている.最近の数年間では,超局所特異性の伝播問題やランダムシュレーディンガー作用素のスペクトル理論などの研究において精力的な活動を展開し,シュレーディンガー方程式論の世界的な指導者の一人として活躍している.シュレーディンガー方程式の超局所特異性の伝播問題は,Craig-Kappeler-Strauss の先駆的な仕事以来,長く研究が行われてきた.しかし,双曲型方程式に比して,特異性の伝播速度が無限大となるため,明快な理論の構築は困難とされてきた.中村氏は,古典力学的散乱理論と超局所解析,半古典解析の手法を組み合わせる事により,超局所的特異性の伝播問題を解決した.さらに,この手法は,André Martinez と Vania Sordoni との共同研究において解析的特異性の伝播問題に拡張された.また,伊藤健一との共同研究において,これらを Richard Melrose らにより研究されてきた散乱多様体上のシュレーディンガー作用素に拡張すると共に,標準的な時間依存型の手法による散乱多様体上の散乱理論を構築し,これまで難解とされてきた,いわゆる幾何学的散乱理論に平易で簡明な定式を与えた.また,中村氏は,Frédéric Klopp との共同研究において,不定符号の局所ポテンシャルを有するランダムシュレーディンガー作用素に対して,エネルギー下限での Lifshitz 特異性の存在とアンダーソン局在を証明した.この結果は,摂動の単調性に強く依存していたアンダーソン局在の証明に新しい視点を加える斬新なものである.以上に述べたように,シュレーディンガー方程式の数学解析に関する中村氏の多岐にわたる優れた研究業績は,解析学賞にまことにふさわしいものである.
受賞者 長井英生(大阪大学大学院基礎工学研究科)
業績題目 長時間大偏差確率最小化に関するリスク鋭感的制御を通じた研究
受賞理由
被制御確率過程が,終端時刻において,ある水準を下回る確率を考える.これに関して
  1. この確率を最小化し更にその長時間に渡る減衰率の値を調べること,
  2. この確率の長時間に渡る減衰率(これを長時間大偏差確率と呼ぶ)を最小化すること,
は近年数理ファイナンスのトピックスから興ってきた問題である.長井英生氏は,自身の研究や畑宏明氏,Shuenn-Jyi Sheu 氏(共に台北 Academia Sinica 所属)との共同研究を通して,これらの問題を解決した.制御の無い状況では,確率過程の終端時刻値に関するキュムラント母関数を計算し,その長時間極限関数の存在や微分可能性などが確認できれば,長時間大偏差確率が極限関数の Legendre 変換を用いて記述されることが知られている.(Gärtner-Ellis による.)長井氏等は,制御が存在する状況下でも“同様”に,最小化された長時間大偏差確率と関連するリスク回避的長時間リスク鋭感的制御問題との間に Legendre 変換を通した“双対性”が成立することを示した.証明に於いては,リスク鋭感的制御問題に関する Hamilton-Jacobi-Bellman 方程式の解の長時間漸近挙動の詳細な評価(リスク鋭感的パラメータに関する2階微分までの評価)が用いられており,主定理は Gärtner-Ellis の定理と最適制御理論が非自明な形で組み合わさったものと解釈される.また,この研究はモデルの不確実性(uncertainty)を考慮した長時間大偏差確率評価(Hannover,Leibniz 大学所属 Thomas Knispel 氏による研究)にも多大な影響を与えており,Knispel 氏の言葉を借りるならば,“ロバストな大偏差理論”の出発点ともみなされ,更に興味深い発展が期待されるものである.このような研究成果とその波及を鑑みて,長井英生氏の研究成果は解析学賞にふさわしいものである.
受賞者 永井敏隆(広島大学大学院理学研究科)
業績題目 走化性モデルに対する解析学的研究
受賞理由 走化性モデルは,自身の分泌する誘引物質を粘菌が探知し,その物質の濃度勾配に応じて引きつけあう数理生物モデルであり,非線形放物型偏微分方程式系によって記述される.永井氏は,走化性モデルの典型である Keller-Segel 方程式系に対する Childress-Parcus 予想を検討し,生化学的に自然な設定での非線形近似モデルを与えて,初期値が球対称の場合に,初期総質量がある閾値よりも大きければ解が有限時刻で爆発することを示した.次いで,2次元有界領域において粘菌の初期総質量が閾値よりも小さいときには,時間大域解が存在することを Trudinger-Moser 型不等式とエネルギー・エントロピー汎函数,および偏微分方程式論の正則性理論を用いて証明した.時間大域解の存在を保証する閾値は2次元 Trudinger-Moser 不等式の最良定数 $8\pi$ から自然に導かれ,CP 予想が正しいことを証明している.また有限時刻での解の爆発は,自身の手で非球対称の場合に拡張されたが,そこでは問題の背後にある対称性と臨界性が大きな役割を果たし,巧妙な重み函数の創出とともに深い洞察に支えられた結果である.これらの成果に加えて,主要部が退化した非局所系の先駆的結果,解の時間大域的な漸近挙動,爆発解の質量集中の可能性,誘引物拡散がない場合の1次元の解の爆発など,走化性モデルの解の挙動の研究で多彩な業績を挙げ研究を牽引してきた.近年では,2次元非線形放物型‐楕円型連立系で閾値 $8\pi$ より総質量の小さい初期値に対して,解の2次モーメントの有界性を仮定せずに時間大域解の存在を証明し(Velázquez 予想の解決),その大域的漸近挙動を明らかにした.そこでは自己相似解と再配列理論を応用した独創的手法が用いられている.このように永井氏の研究は,偏微分方程式論の本来の手法に加え,臨界不等式の適用や,再配列理論の応用,自己相似変換の再帰的適用など,解析学の業績として深淵にして顕著であって解析学賞にまことにふさわしいものである.

第10回(2011年度)解析学賞

受賞者 業績題目
日野正訓(京都大学大学院情報学研究科) 複雑な構造をもつ空間における確率解析
松井宏樹(千葉大学大学院理学研究科) 力学系と $C^*$-環の研究
森本芳則(京都大学大学院人間・環境学研究科) 準楕円型作用素の解析と切断近似のない Boltzmann 方程式の数学的研究

【選考委員会構成】

相川弘明,会田茂樹,河添健,河東泰之,小磯深幸(委員会担当理事),今野良彦,永井敏隆(委員長),松村昭孝

受賞者 日野正訓(京都大学大学院情報学研究科)
業績題目 複雑な構造をもつ空間における確率解析
受賞理由 日野正訓氏は,パス空間や自己相似フラクタルといった重要だが,通常のユークリッド空間とは本質的に異なる複雑な構造をもつ空間の確率解析を研究している.彼は過去数年間に,nested fractal のマルチンゲール次元に関する楠岡予想の解決,2次元 Sierpinski Carpet のマルチンゲール次元の決定,熱核に対する短時間漸近挙動についての Varadhan の結果の究極的な拡張,パス空間の反射壁ブラウン運動に関する一連の研究,ラフパス理論において出現した「新古典不等式」についての T. J. Lyons 予想の解決など,数多くの業績を上げている.特に最新の論文では,Dirichlet 形式に「指数」の概念を導入し,強局所的正則 Dirichlet 形式の場合には,この指数が,対応する拡散過程のマルチンゲール次元に等しいことを証明した.また,この概念が Dirichlet 形式の局所構造の解析に有用であることを明らかにした.従来のフラクタル上の確率解析の研究においては,Dirichlet 形式のような infinitesimal な情報をいかに表現するかが不十分であったのだが,彼のこの結果は,その方向に風穴を開けると思われる.彼は,重要だが難しい問題を長い年月をかけ解決し,しばしばこれ以上ないような透明感のある理想的な結果を得ている.彼の業績はまさに解析学賞に相応しいものである.
受賞者 松井宏樹(千葉大学大学院理学研究科)
業績題目 力学系と $C^*$-環の研究
受賞理由 力学系の理論は古くから作用素環論と密接な関係を持って進展してきた.松井氏の業績は,この関連を大きく前進させる深い結果であり,二つの大きなテーマからなっている.
一つ目は,Cantor 集合上の極小的作用において,軌道同値と呼ばれる同値関係での分類を与えるものである.これについては,Giordano,Putnam,Skau の3人が ${\mathbb Z}$-作用の場合に,$K$-理論を用いたきれいな分類定理を与えていた.群 ${\mathbb Z}^d$ の極小作用の場合も,軌道の性質を調べることにより,${\mathbb Z}$-作用の場合に帰着できるか,ということが大きな未解決問題であったが,松井氏は独自のアイディアを持ってこの問題の研究に参入し,上記の3人と共に,最終的な解決を肯定的に与えることに成功した.
もう一つのテーマは $C^*$-環上の群作用の分類である.作用素環の上の群作用の分類は Connes による1970年代の偉大な成果以来,作用素環論の中心的な問題であり続けている.たちのよい von Neumann 環の上では,離散従順群の作用についてきれいな分類定理が先行して得られており,本質的には群が ${\mathbb Z}$ の場合と同様の結果が成り立つことがわかっている.性質の良い $C^*$-環についても同様の結果を得たいのだが,そううまくはいかず,群が ${\mathbb Z}^d$($d>1$)のときですでに,${\mathbb Z}$ の場合とは本質的に違った困難が現れる.松井氏はこの困難を突破する新しいテクニックを開発し,さまざまな $C^*$-環上の ${\mathbb Z}^d$-作用の分類について,多くの深い結果を得た.
以上の二つはいずれも作用素環論の進展においてたいへん意義の深い結果であり,技術的にもきわめて困難なものである.これらより,松井氏の成果は解析学賞に十分にふさわしいものと言える.
受賞者 森本芳則(京都大学大学院人間・環境学研究科)
業績題目 準楕円型作用素の解析と切断近似のない Boltzmann 方程式の数学的研究
受賞理由 森本芳則氏はフーリエ解析,擬微分作用素論等による超局所解析の手法と関数解析の理論を用いて,準楕円型偏微分方程式の解の存在と解の構造を研究してきた.主部が非負の二階偏微分作用素が準楕円型になるための十分条件として,対数オーダーの weight をもった評価式が成立することを示すとともに,ある種の楕円型作用素についてはその条件が必要でもあることも示した.また対数オーダーの weight を持つ評価式の成立条件を,非負なポテンシャルをもつ Schrödinger 作用素の正値性の問題に帰着させることにより,様々な無限次で退化する2階楕円型作用素について,その準楕円性と解の特異性の伝播を研究する基礎を与えた.さらに,その評価式が成立する偏微分作用素の特徴づけのため,Fefferman-Phong が定式化した数学的不確定性原理を初めて導入し,いくつかの退化楕円型作用素に適用している.
そうした研究の延長線上で,気体・流体力学の最も基礎的な方程式である Boltzmann 方程式の衝突切断近似が無い場合に,解の平滑化効果に関する画期的な成果をあげ,この分野の研究を大きく進展させた.Boltzmann 方程式は相空間上の粒子密度の方程式であり,その解は,時・空変数および速度変数の関数であって,非線形作用である衝突積分作用素は速度変数にのみ関係する.切断近似のない衝突非線形項から速度変数に作用する分数べきラプラス作用素としての効果が生じ,熱方程式のように解の平滑化現象が速度変数に関して起こることが予想されるが,他方,空間変数に関しては輸送作用があり一階双曲型作用素としての効果しか期待できない.森本氏は,R. Alexandre 氏, 鵜飼正二氏, C.-J. Xu 氏, T. Yong 氏らと共同で,それまで自身が研究を進めていた準楕円型作用素に対する研究を基礎に,速度変数ラプラシアンを空間変数に対する無限次退化楕円型作用素と見なし,速度変数に関する楕円型作用素と空間変数に関する双曲型作用素の相互作用により,両変数に関する解の平滑化作用が生じることを示した.これは切断近似のない Boltzmann 方程式が解に対する $C^\infty$ 平滑化作用(smoothing effect)を初めて示したもので,この方程式の研究における新しい方向を示唆する研究として高く評価されている.
このように森本氏の研究は非常に画期的で内外でたいへん高く評価されている.解析学賞としてまことにふさわしい業績である.

第11回(2012年度)解析学賞

受賞者 業績題目
隠居良行(九州大学大学院数理学研究院) 圧縮性粘性流体の平行流の安定性解析
坂口茂(東北大学大学院情報科学研究科) 拡散方程式の不変等温面と領域の幾何学
谷口正信(早稲田大学理工学術院) 時系列解析における統計的漸近最適推測理論の研究

【選考委員会構成】

芥川和雄(委員会担当理事),小池茂昭(委員長),小林孝行,今野良彦,田中直樹,辻元,西山享,日野正訓

受賞者 隠居良行(九州大学大学院数理学研究院)
業績題目 圧縮性粘性流体の平行流の安定性解析
受賞理由 隠居良行氏は,ある無限に伸びた境界に対して発生する圧縮性粘性流体の定常流に対する安定性解析の研究を行ってきた.圧縮性ナヴィエ・ストークス方程式系は,双曲型・放物型の混合連立系であって,領域および波の伝播や粘性による拡散の影響で,解の正則性や解の時間無限大における漸近挙動等が異なるなど,その解析には多くの困難が生じる.さらに,非線形定常流の周りの安定性を議論するためには,その線形化変数係数方程式を考察する必要がある.また,扱う領域の境界が非有界であるため特有の難しさを有し,これまで未解決に残されたままであった.これらの困難を克服するためには,エネルギー法だけでなく,各々の線形化方程式の詳細な解析が必要である.特に,非線形問題を解くためには,線形化作用素のスペクトルの様子を調べ,非線形問題に固有な関数空間における消散型・分散型評価を確立することが要求される.
隠居氏は,無限層状領域の平行流である静止状態,ポアズイユ流,平面クエット流,そして無限柱状領域の静止状態などの安定性解析に対して,各々の線形化方程式の詳細なスペクトル解析を行い,それぞれの定常解に即した関数空間を設定し,その上でのレゾルベント評価を確立した.そして,その評価を利用して線形化問題の大域的消散型評価を導き,定常解の時間安定性を証明した.これらの成果は,単に定常解の周りでの線形化作用素のスペクトルを調べる線形化安定性に留まらず,非線形問題の解の漸近安定性をも証明しており,定常流への漸近速度の解析学的に詳細な結果を与えたものである.
このように隠居氏の研究は,圧縮性粘性流体方程式の数学解析,特にパターンを持った定常流の安定性解析に新境地を拓き,多大な貢献を与えた解析学賞にふさわしい業績である.
受賞者 坂口茂(東北大学大学院情報科学研究科)
業績題目 拡散方程式の不変等温面と領域の幾何学
受賞理由 坂口茂氏は,自然科学において様々な場面に現れる拡散方程式に対して,時間不変な最大点や臨界点をもつ解,または時間不変な等温面をもつ解と領域の形状との相関等の研究を行ってきた.特に,坂口茂氏は R. Magnanini 氏と共に拡散方程式の時間不変な等温面と領域の幾何の研究を行い,1960年代に提唱された Klamkin 予想をより自然な予想に変えた上での完全解決を始めとし,数多くの簡明かつ決定的な結果を与え,拡散方程式の解の幾何学に大きな貢献と展望を与えてきた.
坂口氏による時間不変な等温面と領域の幾何学の研究は,坂口氏らによって発見された拡散方程式の解の平衡条件(バランス則)を出発点とし,粘性解,確率論,微分幾何と広範な数学的内容と関連した広い数学的土壌の上,坂口氏が自らの手でストーリーを組み上げたものである.これらは,他の多くの優れた研究と同様,後から見れば自然な流れに沿った研究であるように感じられる大きな世界観をなしている.また,その議論は非線形拡散方程式への発展も視野に入れ,ここ数年において一段と深化している.
坂口茂氏の拡散方程式の不変等温面と領域の幾何学の研究は,他に類がなく他の追従を許さないきわめて独創的な研究であると同時に,数学者に夢を与えることができる研究でもあり,解析学賞に相応しいものである.
受賞者 谷口正信(早稲田大学理工学術院)
業績題目 時系列解析における統計的漸近最適推測理論の研究
受賞理由 古典的な時系列解析では,特殊なモデルに対して正規性等の理論的に扱いやすい条件を課し,そのもとで展開される統計推測理論は原始的であり,最適性への理論的な裏づけも極めて脆弱なものであった.谷口正信氏は,独立標本のもとで Le Cam により開発された局所漸近正規性に基づくアプローチを用いて,線形過程のみならず,非線形過程,局所定常過程,長期記憶モデルなどの時系列モデルにおいて,漸近最適な推定量・検定統計量・判別統計量を統一的に導出した.これは,標本数を無限大にしたとき,近接する対立仮説のもとで,対数尤度比の確率展開が central sequence と呼ばれる確率変数列と非確率的な Fisher 情報行列で近似されるという性質である局所漸近正規性をもつような確率分布族に対して,これらのふたつの言葉で時系列解析における漸近最適推測理論を統一的な観点から進めるものである.この業績の基本部分をまとめた共著書は,時系列解析の漸近最適理論の研究を進めるうえで,事実上の標準となるものと言えよう.
近年は,多変量解析でしばしば議論される縮小推定法の時系列版の研究,経験尤度法の周波数領域の漸近理論,スペクトル解析の非正則なモデルのもとでの漸近理論などの貢献がある.さらに,多次元非正規非線形あるいは局所定常な時系列に対して展開された漸近最適理論の研究成果を金融工学や医学分野の生体解析へ応用する研究も進めている.これは,谷口氏の研究成果がきわめて広汎な分野のデータに適応可能なことを示している.谷口氏の研究業績は,時系列解析の漸近最適理論の発展において意義深いものであり,世界的に高い評価を受けている.まさに,解析学賞に相応しいものである.

第12回(2013年度)解析学賞

受賞者 業績題目
利根川吉廣(北海道大学大学院理学研究院) 曲面の発展方程式の正則性理論の研究
綿谷安男(九州大学大学院数理学研究院) 多角的な視点に基づく作用素環論の研究とその応用
渡部俊朗(会津大学コンピュータ理工学部) レヴィ過程の分布の性質に関する深い研究

【選考委員会構成】

伊藤昭夫,小池茂昭,志賀啓成(委員長),西山享,福山克司,前園宜彦,宮岡洋一(委員会担当理事),柳田英二

受賞者 利根川吉廣(北海道大学大学院理学研究院)
業績題目 曲面の発展方程式の正則性理論の研究
受賞理由 利根川吉廣氏は曲面の発展方程式の弱解の正則性理論,およびそれを近似する Allen-Cahn 方程式の解の諸性質の研究において顕著な業績をあげています.平均曲率流方程式などの曲面の発展方程式の研究,特にその時間大域的挙動の研究においては弱解の導入が必要であり,その研究の中でも1978年に Brakke が提唱した変分原理に基づいた弱解は,曲面積などの幾何学的な量が評価できるという利点を持っていました.しかしながら,Brakke の正則性理論は難解で,その後は研究が停滞していました.利根川氏は Brakke による正則性の理論を,駆動力項を含む方程式に一般化し,さらにその証明を見通しの良いものにしました.その中で利根川氏は,放物型単調公式や Lipschitz 近似および様々な解の評価を開発し,その手法においても大きなインパクトを与えるものです.また,曲面の発展方程式を近似する Allen-Cahn 方程式の解について,その二層分離現象を解析し,その拡散界面の変形を記述しました.これは拡散界面と通常の界面の関係の研究に新たな指標となり,今後の研究にも大きな貢献をするものです.このように利根川吉廣氏の研究は,曲面の発展方程式における独創的かつ大きなインパクトのある研究であり,解析学賞にふさわしいものです.
受賞者 綿谷安男(九州大学大学院数理学研究院)
業績題目 多角的な視点に基づく作用素環論の研究とその応用
受賞理由 綿谷安男氏は一貫して作用素環論を研究しつつも,受賞題目が示す通り,幅広い分野の研究者と交流をもちながら作用素環論とさまざまな分野との接点を開拓してきました.Jones によって開始された von Newmann 環の指数理論の $C^*$-環における代数的な定式化を行いました.これは以後の多くの研究の先駆けとなったものです.離散群についての Serre の FA という性質と von Neumann 環の関係,因子環の部分環の束構造など,代数を始めとする様々な分野と作用素環論の関係を新たに構築してきました.近年の研究においては,グラフの一般化と考えられるヒルベルト双加群から作られる Pimsner 環の構造研究,無限次元ヒルベルト空間の部分空間とそれに関連する quiver の無限次元表現の分類を行なっています.また,複素力学系,自己相似写像などの分岐点を持つ非可逆力学系から作られる $C^*$-環の研究を行なっており,von Neumann 環と $C^*$-環の指数有限性のデリケートな解析を行なうことで分岐点のさまざまな情報が得られることを示しました.
このように綿谷安男氏のオリジナリティあふれた研究は多岐に亘るもので,かつ大きな影響を与えており,解析学賞にふさわしいものです.
受賞者 渡部俊朗(会津大学コンピュータ理工学部)
業績題目 レヴィ過程の分布の性質に関する深い研究
受賞理由 渡部俊朗氏の研究は,もっとも基本的な確率過程であるレヴィ過程の各時刻における分布と,レヴィ測度との関係を深く追求したものです.渡部氏は,安定分布と呼ばれる時空変換をもつレヴィ過程の分布において,その裾の状態は2次元以上の場合には豊富な多様性を持っていることを明らかにしました.また,1次元で裾の重い自己分解可能分布に対して,分布密度とレヴィ測度密度が漸近的に等しいことを証明しました.この研究を数理ファイナンスにおいて用いられる Black-Scholes モデルの分布に応用することによって,この分野の未解決問題の一つであった Bondesson 予想を肯定的に解決しました.また自己相似加法過程の上極限型の極限定理の問題に決定的な解決を与えました.これらはこの分野に大きな進歩をもたらした深い研究であると同時に,多くの応用をもち,数理ファイナンスのみならずリスク理論や保険数学における種々のモデル,さらに確率微分方程式から定まるモデルの研究に貢献するものです.また,これら渡部俊朗氏の業績は実解析を中心としたハードアナリシスを駆使したもので,解析学賞にふさわしいものです.

第13回(2014年度)解析学賞

受賞者 業績題目
石毛和弘(東北大学大学院理学研究科) 線形および非線形熱方程式の解の定性的解析
長田博文(九州大学大学院数理学研究院) 無限粒子系の確率力学と幾何
濱田英隆(九州産業大学工学部) 多変数の Loewner 微分方程式と等質単位球上の正則写像の研究

【選考委員会構成】

相川弘明,和泉澤正隆,梅原雅顕(委員会担当理事),小澤徹,白井朋之,中野史彦,前園宜彦,柳田英二(委員長)

受賞者 石毛和弘(東北大学大学院理学研究科)
業績題目 線形および非線形熱方程式の解の定性的解析
受賞理由 線形および非線形熱方程式の解の性質について調べることは,偏微分方程式論における基礎的かつ重要な問題の一つであるが,方程式,領域の形状,初期条件が複雑に絡み合い,その本質の解明は容易ではない.石毛和弘氏は解析学に関する豊富な知識と洞察力により,解の形状や挙動について多くの顕著な業績をあげてきている.
まず,ポテンシャル付きの線形熱方程式の解の時間大域的な挙動について,解の減衰の速さに対する最適な評価を得るとともに,ホットスポット(各時刻で解の最大値を与える点)の時間漸近挙動について明らかにした.また,ポテンシャルが空間逆二乗の次数を持つ場合に,シュレディンガー半群の解の詳細な漸近挙動の研究と組み合わせることにより,解の等位集合の凸性について肯定的・否定的双方向に重要な進歩をもたらした.次に,P. Salani 氏と共同で,有限伝播性を有する多孔質媒質方程式の解の自由境界の凸性について,初期値の台の凸性が有限時間で崩れる例を構成し,自由境界問題の研究に一石を投じた.この他,非線形熱方程式の大域解の減衰および漸近形,解の爆発点と初期値の関係,非線形動的境界条件付きの楕円型方程式における臨界指数と解の漸近挙動についても,画期的な結果を得ている.
以上の研究成果は偏微分方程式の理論に大きな進歩をもたらしたもので,まことに解析学賞にふさわしい業績である.
受賞者 長田博文(九州大学大学院数理学研究院)
業績題目 無限粒子系の確率力学と幾何
受賞理由 長田博文氏はこれまでディリクレ形式を用いたアプローチで,フラクタル上の拡散過程や相互作用をもつ無限粒子系の時間発展(干渉ブラウン運動)の構成およびそれらの詳しい解析を行ってきた.近年は特にランダム行列理論を動機とする干渉ブラウン運動の研究において著しい業績をあげている.
ガウス型ランダム行列の固有値を有限粒子系とみなすと,行列サイズを無限大とするスケール極限において,スケールの取り方に応じて Dyson 場,Ginibre 場,Airy 場など様々な重要な確率(点)場があらわれる.これらは有限粒子近似のレベルでは2体相互作用ポテンシャルが対数関数となるため,極限としてあらわれる確率場は,これまで多くの研究がなされてきた Ruelle クラスの Gibbs 測度の範疇からは大きく外れており,特にその時間発展の取り扱いは極めて困難であった.長田氏は最近の一連の研究で,従来の Gibbs 測度を含む「準 Gibbs 測度」という広いクラスを導入することにより,準 Gibbs 測度を不変とする拡散過程を構成するための一般論を展開し,Dyson 場や Ginibre 場が準 Gibbs 測度となることを示して,対応する拡散過程を構成した.さらに無限粒子系の空間の接ベクトルに相当する「確率場の対数微分」の概念を導入することにより,配置空間の幾何学的描像を明らかにするとともに,ディリクレ形式により配置空間上に構成された拡散過程がみたすべき無限次元確率微分方程式の形を決定し,それが解を持つことを示した.また,異なる表現をもつ無限次元確率微分方程式が同じ拡散過程を定め得るという無限次元特有の現象も発見している.Airy 場は,界面成長モデルやランダム行列の最大固有値の問題などとともに,最近注目を集めている KPZ 普遍性との関連で盛んに研究されている.上述の一般論の拡張により Airy 場の準 Gibbs 性の証明の枠組みを与えた論文が2013年に Itô Prize を受賞するなど,長田氏の一連の研究は国際的にも高く評価されている.
長田博文氏の業績は極めて独創的で解析学の手法を駆使したものであり,解析学賞にふさわしいものである.
受賞者 濱田英隆(九州産業大学工学部)
業績題目 多変数の Loewner 微分方程式と等質単位球上の正則写像の研究
受賞理由 Loewner 微分方程式とは等角写像の極値問題を研究するために1923年に Loewner が導入した複素発展方程式で,1985年の de Branges による Bieberbach 予想の解決に決定的な役割を果たした.さらに2000年には Schramm によって統計力学に画期的な応用が見いだされ,現代数学の中心的話題になっている.
さて,濱田氏の仕事の一つは Loewner 微分方程式の多変数複素関数への拡張である.濱田氏はユークリッド単位球上や完備双曲的複素多様体上で,Carathéodory の核収束定理を高次元化し,多変数の場合の解の存在と一意性を示した.これにより,多変数の場合は,Becker による複素1次元の場合とは異なる結果であることが解明された.特に,完備双曲的複素多様体における解の構成方法は,evolution family の direct limit を取る画期的なもので以後の様々な研究の先駆けとなった.また,有限次元における正則写像の理論が無限次元では成り立たない場合もあるが,濱田氏は無限次元回帰的複素バナッハ空間での Loewner 微分方程式の解についても調べている.
1変数の単位円板は,多変数では多重円板やユークリッド単位球に拡張される.多重円板とユークリッド単位球は双正則同型でないが,どちらも等質単位球である.濱田氏は任意の有限次元等質単位球上の線形不変族に対する歪曲定理を証明し,単位円板上での Pommerenke の結果,ユークリッド単位球上での Pfaltzgraff や Suffridge の結果を拡張した.濱田氏のアイデアは等質単位球に付随する Bergman metric から定まる定数を新しく定義し,それを用いて歪曲度の評価式を表すことにある.ユークリッド単位球上と多重円板上で得られていた歪曲度の評価式が異なる理由が等質単位球という視点から統一的に説明できるようになり,様々な有界対称領域上に拡張されていった.
このように濱田英隆氏の研究は,非常に独創的かつ多岐にわたるものであり,国内外でたいへん高く評価され,解析学賞としてまことに相応しい業績である.

第14回(2015年度)解析学賞

受賞者 業績題目
杉本充(名古屋大学大学院多元数理科学研究科) モデュレーション空間および分散型偏微分方程式の平滑化評価の調和解析的研究
竹村彰通(東京大学大学院情報理工学系研究科) ホロノミック勾配法に関する研究
田中和永(早稲田大学理工学術院基幹理工学部) 非線型楕円型偏微分方程式の特異摂動問題に対する多重クラスター解の変分法的研究

【選考委員会構成】

相川弘明,青嶋誠,小川卓克,小澤徹(委員長),示野信一,白井朋之,望月拓郎(委員会担当理事),横田智巳

受賞者 杉本充(名古屋大学大学院多元数理科学研究科)
業績題目 モデュレーション空間および分散型偏微分方程式の平滑化評価の調和解析的研究
受賞理由 双曲型・分散型偏微分方程式の基本解を与えるフーリエ積分作用素に対する,時空評価(いわゆるストリッカーツ型評価)や加藤型平滑化評価は,ユークリッド空間の部分多様体に台をもつ超函数のフーリエ変換,あるいは同様な多様体へのフーリエ変換の制限の双対としてとらえられ,調和解析の研究対象として盛んに研究されてきた.一方,線型シュレディンガー方程式の成すユニタリ群に対する函数解析的な枠組として,加藤敏夫,谷島賢二らによって発展した $H$-super smooth 理論は,シュレディンガー方程式の解の平滑化効果として,その後,非線型問題への広汎な応用が展開され,この分野の発展を促している.杉本氏は,M. Ruzhansky 氏らと共同で,これら二つの分野における評価を,主表象の比較と正準変換による新しい視点でとらえて,シュレディンガー型にとどまらず,様々な方程式の基本解を与えるフーリエ積分作用素に対して,重み係数・正則性・可積分性・補間指数といった重要な径数の相互関係と共に,一般化し,相互の関連を明らかにした.さらに,平滑化評価の最良定数とそれを達成する函数の存在を示し,これらの評価の空間次元に関する非一様性を明らかにするなど,深い成果を挙げた.杉本氏の結果により,各種分散型方程式の基本解に対する平滑化評価は,統一的網羅的に説明され,その双対として,例えば球面上へのフーリエ制限評価の最良定数などが同定されるなど,多彩な最良評価が得られている.
一方,モデュレーション空間とその類型であるアマルガム空間に対する杉本氏の実解析的研究も顕著である.モデュレーション空間は Feichtinger により導入され,王保祥(Baoxiang Wang)により非線型シュレディンガー方程式,非線型クライン・ゴルドン方程式の研究に初めて応用されたものである.杉本氏は冨田直人氏,小林政晴氏,王保祥氏らと共に,モデュレーション空間でのスケール則の分類を行い,応用上重要な基礎を確立した.この研究から発展して,斉次ベゾフ空間との融合を担う α-モデュレーション空間の理論を創出し,スケール則を精密に分類した.さらに,その上での擬微分作用素や交換作用素の有界性理論を整備し,非線型問題への応用を展開している.
以上のように杉本氏は,調和解析的手法を基に,函数解析学,偏微分方程式論,実函数論にまたがる広大な分野に寄与するものであり,その優れた業績は日本数学会解析学賞に誠に相応しいものである.
受賞者 竹村彰通(東京大学大学院情報理工学系研究科)
業績題目 ホロノミック勾配法に関する研究
受賞理由 竹村彰通氏は,統計的多変量解析についてこれまで多くの研究を行ってきた.近年は計算代数統計という新しい分野において,グレブナー基底に基づく計算代数手法の統計学への応用研究に著しい業績をあげてきた.特に,D 加群の理論に基づくホロノミック勾配法の提唱は,統計学における標本分布論の新たな手法として特筆すべきものである.
ホロノミック勾配法は,日比孝之氏をリーダーとする「現代の産業社会とグレブナー基底の調和」プロジェクトにおいて,サブリーダーの高山信毅氏を中心とするグループの研究を,竹村氏が統計学に応用することで生まれたもので,数学における分野融合的なプロジェクトの成果である.ホロノミック勾配法は,ホロノミック函数とよばれる函数のクラスに適用可能であり,函数の満たす微分方程式を数値計算に利用するものである.統計学で重要な正規分布を含む多くの確率密度函数や分布函数がホロノミック函数であり,統計学への応用範囲は広い.しかしながら,ホロノミック函数の概念が定義されたのは1990年のことで,統計学ではその概念自体,知られていなかった.他方,ホロノミック函数の背景にある D 加群の理論については,柏原正樹氏をはじめとする深い研究の蓄積があり,また D 加群の構成をグレブナー基底計算に帰着するアルゴリズムについては,大阿久俊則氏や高山氏による研究が進展していた.竹村氏は,これらの成果を統計学の諸問題に応用して,確率分布の基準化定数や領域確率の数値評価,最尤推定量の計算等に,微分方程式を用いた統一的な方法論を構築した.多くの適用例を与えて,数値的精度においても計算時間においても既存の手法を上回る性能が得られることを示した.竹村氏の業績は,統計学への一方向に留まらず,ホロノミック函数の特異点と微分方程式系の特異点との関係など,解析学における興味深い研究課題を提供している.
以上のように,ホロノミック勾配法という新たな研究分野を拓いた竹村彰通氏の業績は極めて独創的で解析学の手法を駆使したものであり,日本数学会解析学賞に誠に相応しいものである.
受賞者 田中和永(早稲田大学理工学術院基幹理工学部)
業績題目 非線型楕円型偏微分方程式の特異摂動問題に対する多重クラスター解の変分法的研究
受賞理由 田中和永氏は,変分法に基づいた非線型問題の研究に取り組み,対称型峠の補題による臨界値に対応する非線型楕円型方程式の無限個の解のモース指数による存在,特異ハミルトン系の周期問題,定常非線型シュレディンガー方程式の正値解の存在,最小エネルギー解の特徴付けなど,多岐にわたり優れた成果を挙げてきた.
特に,定常非線型シュレディンガー方程式の WKB 近似に代表される非線型楕円型方程式の特異摂動解の凝集,多重クラスター解(multi-cluster solution)の構造と,変分汎函数との大域解析学的・位相幾何学的関係を明らかにし,特異点理論を基礎として,特異摂動により生成される多重クラスター解と変分汎函数との関連を明らかにした業績は顕著である.定常非線型シュレディンガー方程式の特異極限の解は,方程式の持つ線型ポテンシャルの臨界点近傍で凝集し定数係数定常非線型スカラー場方程式の解に漸近することが知られていたが,田中氏は極めて一般的な枠組で凝集点と汎函数の構造をとらえ,特異極限の解に対する凝集の様子を詳細に分類する定理を示した.この方法論は,線型ポテンシャルの臨界点にまつわる,局所的にエネルギー汎函数の最小に向かう勾配流を巧みに操ることで汎函数の変型を具体的に構成して凝集解の存在を示すもので,従来の方法で必要とされていた極限方程式の解の一意性や非退化性などの様々な制約を取り除いた独創的な手法であると共に,変分法本来の直感的な方向性を備えているという点で極めて優れている. 田中氏はこれらの仕事を発展させて,ポテンシャル項の臨界点における位相幾何学的構造を反映した多重クラスター解の変分法的構成を行い,また非線型項にソボレフ臨界となる一階微分の自乗の項を含むような問題に特異摂動法を拡張して非線型楕円型偏微分方程式の解を構成するなど,興味深い成果を挙げている.
以上のように田中氏の研究は,変分法に対する深い洞察と斬新な発想に基づいており,その優れた業績は日本数学会解析学賞に誠に相応しいものである.

第15回(2016年度)解析学賞

受賞者 業績題目
片山聡一郎(大阪大学大学院理学研究科) 非線形双曲型偏微分方程式系における零構造の研究
小池茂昭(東北大学大学院理学研究科) 完全非線形楕円型・放物型偏微分方程式の $L^p$ 粘性解理論
笹本智弘(東京工業大学理学院) 非平衡確率力学系の厳密解による研究

【選考委員会構成】

青嶋誠,小川卓克,小澤徹,小磯深幸(委員会担当理事),渚勝,濱田英隆,舟木直久(委員長),横田智巳

受賞者 片山聡一郎(大阪大学大学院理学研究科)
業績題目 非線形双曲型偏微分方程式系における零構造の研究
受賞理由 一般相対論,相対論的場の理論,プラズマ物理等を担う基礎方程式は,非線形双曲型偏微分方程式の系として定式化される.相互作用を記述する非線形項は,二次あるいは三次の形で,多くの物理モデルに現れる.時間大域的に存在する解の典型例は漸近自由解であり,散乱理論においても中心的な役割を果たす.漸近自由解を想定する限り,初期値問題は,空間次元が高い程,容易になり,低い程,困難となる.発展方程式論の一般論的枠組では扱えない臨界の場合が個別の研究課題となるが,それが真に現実の物理モデルに相当することも多く,極めて興味深い研究対象となっている.低次元空間としての三次元空間において,漸近自由解の一種である小振幅解の存在を,非線形構造との関連で見出したのが1980年代半ばの Klainerman の一連の業績である.その特別な非線形構造は,現在,零構造(null structure)として広く認識されている.
片山聡一郎氏は,非線形波動方程式系や非線形クライン・ゴルドン方程式系をはじめとする非線形双曲型方程式系における零構造について,その分類や特徴付けを通して本質的な理解を与え,単独方程式でない方程式系特有の新しい零構造を見出し,解の漸近挙動と結びつけた理論体系を構築した.特に,多重伝播速度や質量共鳴を持つ零構造が,解の長時間的挙動に与える影響を散乱理論の枠組で記述した功績は優れている.
これらの研究業績の一部は,砂川秀明氏,久保英夫氏,小澤徹氏らとの共同研究によるものである.特に,二次元空間における二次のクライン・ゴルドン系の零条件を,質量共鳴との関連で代数的に完全に特徴付け,代数的正規型の方法に基づいてエネルギー散乱理論を構築した業績は顕著である.
このように,片山聡一郎氏の非線形双曲型偏微分方程式系の零構造の研究は,世界的な業績であり,日本数学会解析学賞に誠に相応しいものである.
受賞者 小池茂昭(東北大学大学院理学研究科)
業績題目 完全非線形楕円型・放物型偏微分方程式の $L^p$ 粘性解理論
受賞理由 小池茂昭氏は非線形偏微分方程式における広義解の一種である粘性解に関する研究にその黎明期より取り組んできた.Święch 氏との共同研究において,Cafferelli らによって導入された $L^p$ 粘性解を用いて完全非線形楕円型・放物型偏微分方程式に対する Aleksandrov-Bakelman-Pucci 型最大値原理(ABP 最大値原理)を示し,次いで Harnack 型不等式を証明することにより,$L^p$ 粘性解に対する Hölder 連続性評価を確立した.さらにそれを基礎に,係数や低階項への条件をほぼ限界にまで拡張して最終的な正則性理論を整備した.
これらの成果は超函数を基盤として確立された準線形楕円型偏微分方程式の正則性理論を完全非線形楕円型方程式に拡張し,最終的に $L^p$ 粘性解を経由して正則性理論を整備したことにあたる.一般に $L^p$ 粘性解は連続な粘性解より解の性質が良くなるために,偏微分方程式としての係数や低階項に対する制限が緩和される.小池氏は2階主要部の問題に対する低階項や,主要部と同等な解の微分の二乗臨界項に対する係数の正則性を緩和し,確率微分方程式の可解性や数理ファイナンス等への応用に道を開いた.例えば,Pucci 作用素に対応している確率過程である $G$-ブラウン運動の構成とそれに基づいた確率微分方程式の可解性に小池氏の研究は大きな影響を与えるものであり,これらの方面の研究が大きく進展することに寄与している.
また Lévy 過程に関連した分数べきラプラシアンに関わる完全非線形放物型問題に対する粘性解理論を構築し,優れた成果を挙げた.これらの成果は十分一般的な係数に対する確率過程論やその制御問題への応用に道を開くなど大きな影響を与える成果である. 以上のように,小池茂昭氏の研究は粘性解理論を基にした,完全非線形問題の正則性理論の一般化や数理ファイナンス理論,ゲーム理論,微分幾何学的諸問題への高度な応用が見込まれ,様々な分野に影響のある優れた業績を挙げており,日本数学会解析学賞に誠に相応しいものである.
受賞者 笹本智弘(東京工業大学理学院)
業績題目 非平衡確率力学系の厳密解による研究
受賞理由 笹本智弘氏の研究は,数理物理学,確率論,可積分系など広範囲な分野にわたるもので,近年は相互作用粒子系や界面成長模型等の確率モデルにおける揺らぎの解析を,厳密解を求めることにより行っている.中心極限定理が揺らぎを記述し,その普遍的な極限分布としてガウス分布が現れることはよく知られている.笹本氏の研究は,KPZ スケール則,KPZ 普遍性とよばれる中心極限定理とはまったく異なる極限定理について探るものである.
笹本氏は,Spohn 氏と共同で,KPZ(Kardar-Parisi-Zhang)方程式とよばれる一種の確率偏微分方程式について特殊な初期条件の下で厳密解を求めることにより,揺らぎが時間の 1/3 乗のオーダーであり,ランダム行列理論で知られていた Tracy-Widom 分布が極限分布として現れることを示した.この研究が契機となって KPZ 方程式の研究は新たな段階に入り,Hairer 氏のフィールズ賞受賞を生むきっかけともなった.この方程式は,非線形項と時空ホワイトノイズとよばれる確率項の非協調性により,数学的に意味のある解を持たず,非線形項からの発散の除去,いわゆる繰り込みの操作が不可欠になる.
また,今村氏とともに KPZ 方程式の定常状態における界面の高さ分布の厳密解を求めた.さらに,O'Connell-Yor モデルとよばれる有限温度ポリマー模型において行列式構造を見出した.Borodin 氏,Corwin 氏らとは,$q$-ボゾン粒子系,$q$-Hahn 粒子系の生成作用素とその固有関数を調べ,Plancherel 型の定理を示すことにより,双対性を用いて $q$-TASEP とよばれる一般化排他過程について,それらの分布を特徴付けるモーメント公式を得た.Spohn 氏とは,非対称な反射型相互作用を持つブラウン運動粒子系の研究を行い,双対性を用いることにより,カレントの母関数がフレドホルム行列式の形に書けることを見出した.Redig 氏らとは,量子群に関連する代数的構造を用いることにより,自己双対性を持つ非対称相互作用粒子系の構成を行っている.
以上のように,笹本智弘氏の研究は多岐にわたり独創性は際立っている.国際的な評価も極めて高い.その優れた業績は日本数学会解析学賞に誠に相応しいものである.

第16回(2017年度)解析学賞

受賞者 業績題目
柴田徹太郎(広島大学学術院(大学院工学研究科)) 非線形楕円型方程式の固有値問題の漸近解析と逆分岐問題の解析
竹井義次(同志社大学理工学部) 完全 WKB 解析による線型・非線型微分方程式の漸近解析
竹田雅好(東北大学大学院理学研究科) 対称マルコフ過程の確率解析とその応用

【選考委員会構成】

大鹿健一(委員会担当理事),長田博文,小池茂昭,寒河江雅彦,中村周(委員長),濱田英隆,松本敏隆,峯拓矢

受賞者 柴田徹太郎(広島大学学術院(大学院工学研究科))
業績題目 非線形楕円型方程式の固有値問題の漸近解析と逆分岐問題の解析
受賞理由 非線形楕円型偏微分方程式の固有値問題の研究において,分岐曲線の大域的研究は,Crandall-Rabinowitz らの研究に始まり,解構造全体を解明する上で中心的な役割を果たしている.柴田徹太郎氏は,長年,非線形楕円型固有値問題の固有値および解の漸近解析に関して, Berestycki らに始まる研究を発展させ,極めて精力的な研究成果を積み重ねてきた.特に,空間多次元の非線形楕円型 Dirichlet 境界値問題において,その解がもつ境界層の振舞に関して,領域の境界の平均曲率の効果を明示した精密な漸近公式を確立したことは顕著な業績の1つである.
近年,柴田徹太郎氏は,解の $L^q$-ノルムをパラメータとして,非線形固有値の大域的分岐曲線に関する順問題としての詳細な漸近展開公式をさらに推進し整備するとともに,分岐曲線の情報から,非線形項を決定できるかという,逆分岐問題を提唱し,数多くの深い研究成果を挙げている.
代表的なものとして,分岐曲線が振動する問題における精密な漸近展開公式の確立と asymptotic length という概念を用いた逆問題の提唱と解決,数理生態学の個体増殖数理モデルにおける固有値の無限次の漸近展開公式の確立と逆分岐問題の解決をはじめ,Holling-Tanner モデルにおける $S$ 字型分岐曲線の turning points の詳細な漸近挙動の解析とパラメータ同定の解決,parabola-like 分岐曲線が現れる数理モデルでの漸近公式の確立などがある.いずれの研究においても,順問題において,変分法や Time-map 法による方法論を元にしながらも,それぞれの問題に応じて,職人芸とも言うべき様々な工夫を凝らした議論を駆使し,従来の結果を凌駕する精密な漸近公式を導き,逆問題の解決への道しるべとした点,極めて独創的である.
以上のように,柴田徹太郎氏は一貫して,非線形楕円型方程式の固有値および分岐曲線に関する精密な漸近公式の確立と,新たな逆分岐問題という研究分野の推進に大きく寄与している.この一連の極めて独創的な研究成果は,世界でも類を見ないものであり,日本数学会解析学賞に誠に相応しいものである.
受賞者 竹井義次(同志社大学理工学部)
業績題目 完全 WKB 解析による線型・非線型微分方程式の漸近解析
受賞理由 竹井義次氏は長年にわたって,完全 WKB 解析を用いた微分方程式の漸近解析の研究に取り組んできた.河合隆裕氏らとの共同研究において完全 WKB 解析の理論的な基礎付けを行い,それは「特異摂動の代数解析学」(岩波書店)などにまとめられている.その後,特に解決困難と思われた高階線型方程式の WKB 解析の仮想変り点の問題を超局所解析のアイデアを用いて解決し,さらに Painlevé 方程式の完全 WKB 解析,高階 Painlevé 型方程式の完全 WKB 解析へと理論を大きく発展させてきた.線型・非線型を問わず,高階方程式の場合の WKB 解析は Stokes 幾何が複雑になり,2階の場合になかった困難が生じてくるが,こうした問題を解決して,Fuchs 型常微分方程式の大域問題を原理的に解く手続きを見いだし,Painlevé 方程式に対しても,高階の場合も含めて完全 WKB 解を用いて,いくつかの場合に接続係数を厳密に求めた.
こうした一連の成果は,複素領域における常微分方程式の大域解析に新しい見地からの進展をもたらし,従来,散発的に知られていた線型・非線型の WKB 解析に統一的な視点を与えるとともに数学的な基礎付けを明確にした顕著な研究結果である.候補者の理論は形式的な理論付けにとどまらず,具体的にも,線型方程式の場合なら一般には高階になる非断熱遷移問題の半古典解析を精密に扱った.また,Painlevé 型方程式に関しても,高階の野海・山田系などの大域解析を大きく進展させた.また,ここ数年はパラメタに関する漸近展開の WKB 解析を行い,Voros 係数の決定や離散 Painlevé 方程式の WKB 解析など新しいテーマを提案している.
こうした竹井氏の業績は,この分野の発展に大きく貢献した世界的な業績であり,日本数学会解析学賞に誠に相応しいものである.
受賞者 竹田雅好(東北大学大学院理学研究科)
業績題目 対称マルコフ過程の確率解析とその応用
受賞理由 ブラウン運動を含む確率過程の概念としてマルコフ過程が知られている.ブラウン運動の推移確率はラプラシアンの熱半群として古典的なディリクレ積分と対応する.この対応を一般化したものが対称マルコフ過程とディリクレ形式の理論であり,70年代に福島正俊氏と Martin Silverstein 氏によって発展してきた.その後,対称マルコフ過程の確率解析の理論が福島正俊氏によって提起され,古典的確率解析を超えた理論として拡張整備されてきた.
竹田雅好氏は対称マルコフ過程の確率解析を用いて Donsker-Varadhan 型の大偏差原理を発展させ,多くの応用を見出してきた.田原喜宏氏と共同で対称化測度がグリーン緊密な加藤クラス測度のときに正規化された滞在時間分布への大偏差原理を確立し,基底状態の一意存在を示した.さらにグリーン緊密でないときにも基底状態の一意存在への十分条件を与えた.また係数測度がある種のグリーン緊密性を持つときに,基底状態の一意存在に基づき,劣臨界性,臨界性,優臨界性の特徴付けを与えた.一方で一次元安定過程で臨界的な場合にシュレディンガー作用素による有界調和関数の存在を示し,さらにシュレディンガー半群による劣調和関数の最大値原理を特徴付けた.また,和田正樹氏とファインマン・カッツ汎関数の詳細な漸近挙動を対称安定過程の場合に調べた.
最近の特筆すべき成果は,対称化測度がグリーン緊密な加藤クラスの場合に,マルコフ半群のコンパクト性とその固有関数の有界性,さらにディリクレ形式の定義域の基礎となる $L^2$-空間へのコンパクトな埋め込みである.そのことに基づき田原喜宏氏と土田兼治氏と共同で様々な具体例においてマルコフ半群やファインマン・カッツ半群のコンパクト性への判定条件を与えた.
以上のように,竹田雅好氏の研究は,マルコフ過程やポテンシャル論を基にした解析的諸問題への高度な応用が見込まれており,その独創性は際立っている.国際的な評価も極めて高い.その優れた業績は日本数学会解析学賞に誠に相応しいものである.

第17回(2018年度)解析学賞

受賞者 業績題目
川島秀一(早稲田大学理工学術院) 消散構造を持つ非線形偏微分方程式系の安定性解析
今野紀雄(横浜国立大学大学院工学研究院) 量子ウォークの数学的研究とその応用
宮地晶彦(東京女子大学現代教養学部数理科学科) ハーディー空間とフーリエ乗法作用素・擬微分作用素の有界性に関する研究

【選考委員会構成】

大鹿健一(委員会担当理事),寒河江雅彦,坂口茂(委員長),須川敏幸,谷口健二,種村秀紀,中村周,森藤紳哉

受賞者 川島秀一(早稲田大学理工学術院)
業績題目 消散構造を持つ非線形偏微分方程式系の安定性解析
受賞理由 川島秀一氏は1980年代半ば,気体力学の基礎方程式である圧縮性Navier-Stokes方程式や離散速度Boltzmann方程式を包括する一般の双曲・放物型非線形偏微分方程式系の持つ消散構造を代数的条件として定式化することに成功した.その条件は後に「川島条件」と呼ばれ,非線形解析において重要となる線形化方程式の解の減衰評価を統一的に得ることを可能にした.さらに安定性解析で重要な非線形構造の理解のために,これらの一般の双曲・放物型非線形偏微分方程式系に対して,川島氏はGodunovやFriedrichs-Laxによる数学的エントロピーの概念を一般化することに成功し,統一的な数学解析を可能にした.川島条件を有する非線形偏微分方程式系と一般化された数学的エントロピーからなる川島理論は様々な非線形波の安定性解析において重要な役割を演じてきた.
最近,川島条件の枠に収まらない新たな消散構造をもつ数理物理の偏微分方程式系が注目を集めている.線形化作用素の高周波部分のスペクトルの挙動に起因して,線形化半群の減衰評価において可微分性の損失を生じ,その数学解析に大きな困難さを伴うものである.川島氏はこれらの方程式系の中で弾性体力学に現れる梁の振動を記述するTimoshenko方程式系やプラズマ物理に現れるEuler-Maxwell方程式系を含む偏微分方程式系の可微分性損失型消散構造の定式化を川島条件に新たな条件を追加する形で与えた.さらに,対応する数学的エントロピーの概念の拡張を与えた.他方,$L_p$-$L_q$-$L_r$法という非線形問題の大域可解性を証明する解析手法を開発するなど,非線形問題に対する安定性解析の一般理論構築に向けて着実に研究を遂行している.また,Cattaneoの法則を考慮した温度入りのTimoshenko方程式系やEuler-Maxwell方程式系など,より複雑な偏微分方程式系の可微分性損失型消散構造の研究も展開している.
川島秀一氏の研究は偏微分方程式論において新たな意義深い研究分野を開拓するものであり,その業績は解析学賞に相応しい.
受賞者 今野紀雄(横浜国立大学大学院工学研究院)
業績題目 量子ウォークの数学的研究とその応用
受賞理由 量子ウォークは量子力学の応用例として1960年代からFeynmanなど何人かの物理学者によって提案され研究された.それが2001年のAmbainisらの論文によって,量子計算の典型例である量子探索を駆動するアルゴリズムとして定式化され,その優れた計算効能が示されたことにより多くの注目を集め,現在様々な分野において精力的に研究がなされている.今野紀雄氏は量子ウォークを確率過程の基礎であるランダムウォークの量子的類似として捉え,新しいタイプの極限定理を導いた.この極限定理では,時刻と空間とのスケーリングが同じ(弾道的)になっており,時刻の平方根が空間をスケールする(拡散的な)ランダムウォークの不変原理とは大きく異なっている.極限分布は一般に絶対連続部分と特異部分を持つが,絶対連続部分は,現在,今野分布とよばれている.特異部分は,量子ウォークがある点に存在する確率が時刻無限大の極限でも正となる,いわゆる局在現象に対応していることもこの極限定理で重要な点である.この“弾道性”と“局在性”は相反する現象と考えられるが,今野氏は,量子ウォークがこの二つを同時に兼ね備えていることを証明したのである.この極限定理により量子ウォークは,様々な物理現象を新たな側面から解析するために有効な確率モデルとして応用されている.一例として,トポロジカル絶縁体への応用がある.
また,今野氏は,グラフ上の量子ウォークに関する直交多項式系やスペクトル解析,および確率解析などの数学的問題を提起かつ解決し,さらに多様な応用に関しても多くの結果を導いている.それらの一部を挙げると,グラフ上の量子ウォークの特性多項式のグラフゼータの伊原型表示,量子ウォークの固有値とランダムウォークの固有値の関係を明らかにする固有値写像定理,グラフの幾何から誘導される局在化の存在決定,量子ウォークの周期性の整数論的特徴付け,などがある.
今野紀雄氏の研究は極めて独創的で多岐にわたり,その応用は他分野へも多大な影響を与えており,数学研究が他分野の研究と繋がっていく様子は,現代数学の一つの在り方を提示するものである.以上より,今野氏の業績は解析学賞にふさわしいものである.
受賞者 宮地晶彦(東京女子大学現代教養学部数理科学科)
業績題目 ハーディー空間とフーリエ乗法作用素・擬微分作用素の有界性に関する研究
受賞理由 宮地晶彦氏の最近5年間の業績は,40年間にわたる研究がそうであったように,主としてハーディー空間とフーリエ乗法作用素・擬微分作用素の有界性に関するものである.アトム分解や補間定理等を巧みに用いた職人芸が宮地氏の研究を極めて精緻なものにしている.最近5年間の業績は,L. Grafakos,H. van Nguyen,N. Tomitaらとの共同研究においてなされており,より具体的には「最小限の滑らかさのみをフーリエ・マルチプライアーに課したフーリエ乗法作用素の研究」,及び「双線型擬微分作用素に対するCalderón-Vaillancourt型の定理の研究」である.これらを少し敷衍すると以下のようになる.前者の研究はMikhlin(1956),Hörmander(1960),及びCalderón-Torchinsky(1977)のフーリエ・マルチプライアーに関する定理の多重線型版である.マルチプライアーの滑らかさの最小性を見る一つの方法として,Miyachi(1980)によって研究された特別な減衰度と振動をもつ函数が重要な役割を果たす.後者の研究の起源は,Coifman-MeyerによるCalderónの交換子の研究(1975)にある.Bényi-Torres(2004)によれば,双線型擬微分作用素の有界性は,通常の場合(Calderón-Vaillancourtの定理)のようにはいかない.それに対して精緻な解析が展開されたのである.
そのような双線型・多重線型作用素の調和解析学は,Lipschitz曲線に沿ったCauchy積分の研究に端を発し,1997年にはLacey-Thieleによる双線型ヒルベルト変換の評価に関する研究が現われ,以来20年間にわたって,この方面の研究がますます盛んになっている.特に,Grafakosと多くの共同研究者たちの貢献が大きい.宮地氏もまさにその潮流の只中にいる. 国際研究集会の開催にも積極的で,特に2013年以降,毎年「East Asian Conference in Harmonic Analysis and Applications」と題する研究集会を開催している.韓国や中国の数学者とも活発な交流を重ね,更に,若手の調和解析学者への影響も甚大で,そのことは近年の目覚ましい点である.
以上のようなことから,宮地晶彦氏は解析学賞を授与されるに相応しいと考える.

第18回(2019年度)解析学賞

受賞者 業績題目
坂井秀隆(東京大学大学院数理科学研究科) パンルヴェ型方程式系の研究
角大輝(京都大学大学院人間・環境学研究科) 1変数有理関数の生成する半群およびランダム力学系の研究
廣島文生(九州大学数理学研究院) 数学的場の量子論における汎関数積分の応用

【選考委員会構成】

金銅誠之(委員会担当理事),坂口茂,須川敏幸,高信敏,谷口健二,利根川吉廣(委員長),矢島美寛,山崎教昭

受賞者 坂井秀隆(東京大学大学院数理科学研究科)
業績題目 パンルヴェ型方程式系の研究
受賞理由 パンルヴェ方程式は,楕円関数や超幾何関数を超える新しい特殊関数を定義するために,後に首相にもなったフランスの数学者パンルヴェ(Paul Painlevé)らによって20世紀の初めに構成され,6種類に分類された2階の非自律非線形常微分方程式系である.坂井秀隆氏は,大学院の学生の時代から一貫して,明確な数学的原理に基づき,パンルヴェ方程式を離散的に,また,高次元に拡張する研究を続け,パンルヴェ方程式を有理曲面によって特徴付け幾何学的に分類を行った代数幾何学的理論(坂井理論)を始め数々の先駆的な業績をあげている.
最近,坂井氏はパンルヴェ方程式の高次元化の問題において,これまで散在的に発見されていた4階のパンルヴェ型の方程式に対して,Fuchs型方程式の変形理論の観点から分類理論に取り組み,次元を特定した場合のモノドロミー保存変形方程式の分類というかたちで統一的な視点を与えた.その結果,新たに坂井氏の発見した一つを含め,最も上流に位置する方程式系が4種類であることが示された.そして,川上拓志氏,中村あかね氏,廣惠一希氏とともに,この4種類の方程式の退化図式の研究を進め,22種類の不分岐型の方程式の完全なリストを作成するなどその下流にある方程式系の分類を行った.この結果はパンルヴェらによるパンルヴェ性を用いた2階の方程式に関する分類を100年ぶりに高次元に拡張した際立った成果である.
その後も,坂井氏は,共型場理論を応用した離散パンルヴェ方程式の解の級数表示式の導出や,ミドルコンボリューションと呼ばれる手法の離散化などパンルヴェ型方程式研究の最先端で活躍を続けており,この分野の世界的な第一人者であり国際的評価もたいへん高い.これらの功績は日本数学会解析学賞の授与にふさわしいものである.
受賞者 角大輝(京都大学大学院人間・環境学研究科)
業績題目 1変数有理関数の生成する半群およびランダム力学系の研究
受賞理由 複素力学系は20世紀初頭のJuliaとFatouによる研究に端を発するが,その後は長らく散発的にしか目立った研究は現れなかった.1980年頃のMandelbrotによるコンピュータを用いたフラクタルの描画を契機とし,その後コンピュータ技術の発展も相俟って急速に発展を遂げる.一方で戦後,リーマン面の変形理論から発展したクライン群論もThurstonやSullivanによる画期的な研究が端緒となって注目を集める分野に成長した.この2つの概念を自然に包含するものとして有理半群(rational semigroup)の概念が1990年代後半にHinkkanenとMartinにより提唱され,角氏はその頃から一貫して有理半群の複素力学系の研究に取り組んできた.有限生成有理半群のジュリア集合が,縮小写像による反復関数系(IFS)の不変集合と同様の集合方程式を満たすという発見を含め,ジュリア集合のハウスドルフ次元を与える公式やパラメータに関する依存性など基本的な結果を数多く導いてきた.
最近ではいくつかの有理関数をランダムに選んで反復合成をすることにより生ずるランダム複素力学系を考え,そのエルゴード理論的な性質を追究し,重要な貢献を数多く行っている.たとえば,多項式に対する古典的なニュートン法では初期値が根から離れている場合はどの根にも収束せず,別の安定周期点に近づくこともある.McMullenはニュートン法のようないかなる代数的なアルゴリズムも,ほとんどすべての初期値から出発した軌道がどれかの根に近づくという良い性質を持たないことを示した.角氏はニュートン法にランダム項を加えることで,有限個の例外点を除くすべての初期値から出発して確率1でどれかの根に収束することを厳密に示した.このアイデアは多項式の根を見つけるための実用的な方法を提供していると言える.
以上のように角氏の研究業績は複素解析はもとより,確率論,フラクタル幾何学,実解析など多方面に及んでおり,解析学賞を授与するにふさわしいものである.
受賞者 廣島文生(九州大学数理学研究院)
業績題目 数学的場の量子論における汎関数積分の応用
受賞理由 廣島文生氏は1990年代より一貫してHilbert空間上の自己共役作用素の解析を基礎とした数学的場の量子論の研究を行い,数多くの業績を挙げてきた.特に近年,Wiener-Itô-Segal同型および汎関数積分・確率解析を援用して量子場を解析する手法を発展させ,従来の摂動論的手法では解析が困難だった多くの問題に対して非摂動論的な手法による解決を与えた.最近5年間の顕著な業績としては,汎関数積分を用いたNelson模型における紫外発散のくり込み(Massimiliano Gubinelli氏,József Lőrinczi氏との共同研究),Semi-relativistic Pauli-Fierz模型の自己共役性や基底状態の減衰性の証明,Spin-boson模型におけるGibbs測度の構成およびそれを用いた基底状態の存在・一意性・局所性の証明(廣川真男氏,József Lőrinczi氏との共同研究)などが挙げられる.いずれの結果も業界内で高い評価を得ているが,特に初めの結果はEdward Nelsonが1960年代の論文で未解決だった問題に解決を与えたものである. 廣島氏の手法の特徴は,半群の汎関数積分表示に基礎をおき,模型に付随するGibbs測度の確率積分表示を用いて解析を行う点である.この手法では従来の摂動級数を用いた方法に見られるような“coupling constantが小さい”という仮定を必要とせず,従来よりも広いパラメータ領域での解析が可能となる.また,Nelson模型のくり込みでは元のハミルトニアンから引くべき対数発散項がpair interactionの対角項から自然に導かれる,という利点もある.特に,廣島氏の行ったcàdlàgパス空間と呼ばれる不連続パス空間上のGibbs測度の構成は,一つのブレイクスルーとなり,これを用いて様々な模型の基底状態を解析する方法が切り開かれた.また,廣島氏の手法は場の量子論に留まらず,近年若山正人氏らにより研究されている非可換調和振動子の最小固有値の重複度の問題にも応用されている(佐々木格氏との共同研究).こういった一連の手法は廣島氏とJózsef Lőrinczi氏,Volker Betz氏との共著による500ページ以上の著書においてSelf-containedな形で解説されており,今後のこの分野の発展に大きく寄与することが期待されている.これらの業績は,解析学賞の授与にふさわしいものである.

候補者推薦

第19回解析学賞候補者推薦のお願い(締切 2020.06.08)

[数学通信25-1掲載](2020.5)

【2020年度(第19回)日本数学会解析学賞候補者推薦のお願い】

“解析学および,解析学に関連する分野において著しい業績をあげた研究者に対し,その業績を顕彰する”目的で解析学賞が設置され,2002年度から運営が始まりました.この賞の授与も既に18回を数えるに至りました.昨年度の第18回の受賞者は,
坂井秀隆,角大輝,廣島文生
の各氏でありました.2020年度の日本数学会年会(於 日本大学)が生憎中止になったため,これらの受賞講演が,2020年9月22日-25日に熊本大学において開催される日本数学会秋季総合分科会において執り行われる予定です.
2020年度(第19回)日本数学会解析学賞(以下,解析学賞と称する)受賞候補者の推薦を下記の要領で募集いたしますので,ご推薦下さいますようお願いいたします.(2015年度より,名称が「日本数学会解析学賞」に変更されました.内規により,推薦委員が選ばれることになっておりますが,これは一定数の候補者を確保するための処置であり,推薦委員から推薦された候補者が,選考において優先されることはありません.)2020年度(第19回)の受賞者の発表は,2020年度秋季総合分科会(於 熊本大学)の折に行われる予定です.

  1. 推薦対象:
    過去5年間程度の間に,広い意味での解析学に関連した分野において著しい業績をあげた,日本数学会会員(詳細については,解析学賞ホーム・ページwww.mathsoc.jp/activity/awards/a-prize/の解析学賞基金規定および内規を参照)
  2. 推薦者:
    推薦出来るのは日本数学会会員とする.また他薦に限る.
  3. 推薦書:
    用紙はA4紙を用い,以下の項目について記載すること.
    1. 候補者氏名・所属・職
    2. 略歴(分かる範囲でよい)
    3. 業績の題目
    4. 推薦理由
    5. 受賞候補としての業績に関する論文リスト
    6. 受賞候補者の業績を良く知っている2-3名の方の氏名,所属,電話番号,電子メールアドレス
    7. 推薦者氏名・所属・職・連絡先

    注意.選考は提出された推薦資料に調査・検討を加えて行われる.たとえ被推薦者の重要な業績であっても,推薦書に書かれていない場合は,それが審査において考慮されない場合も起こりうることになる.従って,推薦書の作成には十分配慮し,(重要な国際会議等での招待講演等も含めた)候補者の業績が明確に分かるように作成されることが望まれる.

  4. 推薦締め切り:
    2020年6月8日(月)(締切日必着)
  5. 推薦書送付先:
    〒819-0395
    福岡市西区元岡744
    九州大学大学院数理学研究院数学部門
    日本数学会解析学賞事務局
    廣島文生
    hiroshima@math.kyushu-u.ac.jp
  6. 送付方法:
    郵送を原則とするが,海外からの送付など事情がある場合には電子メールによる推薦書送付も受け付ける.その場合は,あらかじめその旨を事務局まで連絡の上,送付について配慮を期すること.

(文責) 日本数学会解析学賞事務局 廣島文生

過去の「候補者推薦のお願い」

[数学通信24-1掲載](2019.5)

【2019年度(第18回)日本数学会解析学賞候補者推薦のお願い】

“解析学および,解析学に関連する分野において著しい業績をあげた研究者に対し,その業績を顕彰する”目的で解析学賞が設置され,2002年度から運営が始まりました.この賞の授与も既に17回を数えるに至りました.昨年度の第17回の受賞者は,
川島秀一,今野紀雄,宮地晶彦
の各氏でありました.これら三氏の受賞講演が,2019年3月17日-20日に東京工業大学において開催された日本数学会年会において執り行われました.
2019年度(第18回)日本数学会解析学賞(以下,解析学賞と称する)受賞候補者の推薦を下記の要領で募集いたしますので,ご推薦下さいますようお願いいたします.(2015年度より,名称が「日本数学会解析学賞」に変更されました.内規により,推薦委員が選ばれることになっておりますが,これは一定数の候補者を確保するための処置であり,推薦委員から推薦された候補者が,選考において優先されることはありません.)2019年度(第18回)の受賞者の発表は,2019年度秋季総合分科会(於金沢大学)の折に行われる予定です.

  1. 推薦対象:
    過去5年間程度の間に,広い意味での解析学に関連した分野において著しい業績をあげた,日本数学会会員(詳細については,解析学賞ホーム・ページwww.mathsoc.jp/activity/awards/a-prize/の解析学賞基金規定および内規を参照)
  2. 推薦者:
    推薦出来るのは日本数学会会員とする.また他薦に限る.
  3. 推薦書:
    用紙はA4紙を用い,以下の項目について記載すること.
    1. 候補者氏名・所属・職
    2. 略歴(分かる範囲でよい)
    3. 業績の題目
    4. 推薦理由
    5. 受賞候補としての業績に関する論文リスト
    6. 受賞候補者の業績を良く知っている2-3名の方の氏名,所属,電話番号,電子メールアドレス
    7. 推薦者氏名・所属・職・連絡先

    注意.選考は提出された推薦資料に調査・検討を加えて行われる.たとえ被推薦者の重要な業績であっても,推薦書に書かれていない場合は,それが審査において考慮されない場合も起こりうることになる.従って,推薦書の作成には十分配慮し,(重要な国際会議等での招待講演等も含めた)候補者の業績が明確に分かるように作成されることが望まれる.

  4. 推薦締め切り:
    2019年6月10日(月)(締切日必着)
  5. 推薦書送付先:
    〒060-0810
    札幌市北区北10条西8丁目
    北海道大学大学院理学研究院数学部門
    日本数学会解析学賞事務局
    岩崎克則
    iwasaki@math.sci.hokudai.ac.jp
  6. 送付方法:
    郵送を原則とするが,海外からの送付など事情がある場合には電子メールによる推薦書送付も受け付ける.その場合は,あらかじめその旨を事務局まで連絡の上,送付について配慮を期すること.

(文責) 日本数学会解析学賞事務局 岩崎克則

[数学通信23-1掲載](2018.5)

【2018年度(第17回)日本数学会解析学賞候補者推薦のお願い】

“解析学および,解析学に関連する分野において著しい業績をあげた研究者に対し,その業績を顕彰する”目的で解析学賞が設置され,2002年度から運営が始まりました.この賞の授与も既に16回を数えるに至りました.昨年度の第16回の受賞者は,
柴田徹太郎,竹井義次,竹田雅好
の各氏でありました.これら三氏の受賞講演が,2018年3月18日-21日に東京大学において開催された日本数学会年会において執り行われました.
2018年度(第17回)日本数学会解析学賞(以下,解析学賞と称する)受賞候補者の推薦を下記の要領で募集いたしますので,ご推薦下さいますようお願いいたします.(2015年度より,名称が「日本数学会解析学賞」に変更されました.内規により,推薦委員が選ばれることになっておりますが,これは一定数の候補者を確保するための処置であり,推薦委員から推薦された候補者が,選考において優先されることはありません.)2018年度(第17回)の受賞者の発表は,2018年度秋季総合分科会(於岡山大学)の折に行われる予定です.

  1. 推薦対象:
    過去5年間程度の間に,広い意味での解析学に関連した分野において著しい業績をあげた,日本数学会会員(詳細については,解析学賞ホーム・ページwww.mathsoc.jp/activity/awards/a-prize/の解析学賞基金規定および内規を参照)
  2. 推薦者:
    推薦出来るのは日本数学会会員とする.また他薦に限る.
  3. 推薦書:
    用紙はA4紙を用い,以下の項目について記載すること.
    1. 候補者氏名・所属・職
    2. 略歴(分かる範囲でよい)
    3. 業績の題目
    4. 推薦理由
    5. 受賞候補としての業績に関する論文リスト
    6. 受賞候補者の業績を良く知っている2-3名の方の氏名,所属,電話番号,電子メールアドレス
    7. 推薦者氏名・所属・職・連絡先

    注意.選考は提出された推薦資料に調査・検討を加えて行われる.たとえ被推薦者の重要な業績であっても,推薦書に書かれていない場合は,それが審査において考慮されない場合も起こりうることになる.従って,推薦書の作成には十分配慮し,(重要な国際会議等での招待講演等も含めた)候補者の業績が明確に分かるように作成されることが望まれる.

  4. 推薦締め切り:
    2018年6月11日(月)(締切日必着)
  5. 推薦書送付先:
    〒060-0810
    札幌市北区北10条西8丁目
    北海道大学大学院理学研究院数学部門
    日本数学会解析学賞事務局
    相川弘明
    aik@math.sci.hokudai.ac.jp
  6. 送付方法:
    郵送を原則とするが,海外からの送付など事情がある場合には電子メールによる推薦書送付も受け付ける.その場合は,あらかじめその旨を事務局まで連絡の上,送付について配慮を期すること.

(文責) 日本数学会解析学賞事務局 相川弘明

[数学通信22-1掲載](2017.5)

【2017年度(第16回)日本数学会解析学賞候補者推薦のお願い】

“解析学および,解析学に関連する分野において著しい業績をあげた研究者に対し,その業績を顕彰する”目的で解析学賞が設置され,2002年度から運営が始まりました.この賞の授与も既に15回を数えるに至りました.昨年度の第15回の受賞者は,
片山聡一郎,小池茂昭,笹本智弘
の各氏でありました.これら三氏の受賞講演が,3月24日-27日に首都大学東京において開催された日本数学会年会において執り行われました.
2017年度(第16回)日本数学会解析学賞(以下,解析学賞と称する)受賞候補者の推薦を下記の要領で募集いたしますので,ご推薦下さいますようお願いいたします(2015年度より,名称が「日本数学会解析学賞」に変更されました.内規により,推薦委員が選ばれることになっておりますが,これは一定数の候補者を確保するための処置であり,推薦委員から推薦された候補者が,選考において優先されることはありません).2017年度(第16回)の受賞者の発表は,2017年度秋季総合分科会(於山形大学)の折に行われる予定です.

  1. 推薦対象:
    過去5年間程度の間に,広い意味での解析学に関連した分野において著しい業績をあげた,日本数学会会員(詳細については,解析学賞ホーム・ページwww.mathsoc.jp/activity/awards/a-prize/の解析学賞基金規定および内規を参照)
  2. 推薦者:
    推薦出来るのは日本数学会会員とする.また他薦に限る.
  3. 推薦書:
    用紙はA4紙を用い,以下の項目について記載すること.
    1. 候補者氏名・所属・職
    2. 略歴(分かる範囲でよい)
    3. 業績の題目
    4. 推薦理由
    5. 受賞候補としての業績に関する論文リスト
    6. 受賞候補者の業績を良く知っている2-3名の方の氏名,所属,電話番号,電子メールアドレス
    7. 推薦者氏名・所属・職・連絡先

    注意.選考は提出された推薦資料に調査・検討を加えて行われる.たとえ被推薦者の重要な業績であっても,推薦書に書かれていない場合は,それが審査において考慮されない場合も起こりうることになる.従って,推薦書の作成には十分配慮し,(重要な国際会議等での招待講演等も含めた)候補者の業績が明確に分かるように作成されることが望まれる.

  4. 推薦締め切り:
    2017年6月12日(月)(締切日必着)
  5. 推薦書送付先:
    〒980-8578
    仙台市青葉区荒巻字青葉6番3号
    東北大学大学院理学研究科数学専攻
    日本数学会解析学賞事務局
    小川卓克
    ogawa@math.tohoku.ac.jp"
  6. 送付方法:
    郵送を原則とするが,海外からの送付など事情がある場合には電子メールによる推薦書送付も受け付ける.その場合は,あらかじめその旨を事務局まで連絡の上,送付について配慮を期すること.

(文責) 日本数学会解析学賞事務局 小川卓克

[数学通信21-1掲載](2016.5)

【2016年度(第15回)日本数学会解析学賞候補者推薦のお願い】

“解析学および,解析学に関連する分野において著しい業績をあげた研究者に対し,その業績を顕彰する”目的で解析学賞が設置され,2002年度から運営が始まりました.この賞の授与も既に14回を数えるに至りました.昨年度の第14回の受賞者は,
杉本充,竹村彰通,田中和永
の各氏でありました.これらの受賞講演が,3月16-19日に筑波大学において開催された年会において行われました.
2016年度(第15回)日本数学会解析学賞(以下,解析学賞と称する)受賞候補者の推薦を下記の要領で募集いたしますので,ご推薦下さいますようお願いいたします.(2015年度より,名称が「日本数学会解析学賞」に変更されました.内規により,推薦委員が選ばれることになっておりますが,これは一定数の候補者を確保するための処置であり,推薦委員から推薦された候補者が,選考において優先されることはありません.)2016年度(第15回)の受賞者の発表は,2016年度秋季総合分科会の折に行われる予定です.

  1. 推薦対象:
    過去5年間程度の間に,広い意味での解析学に関連した分野において著しい業績をあげた,日本数学会会員(詳細については,解析学賞ホーム・ページwww.mathsoc.jp/activity/awards/a-prize/の解析学賞基金規定および内規を参照)
  2. 推薦者:
    推薦出来るのは日本数学会会員とする.また他薦に限る.
  3. 推薦書:
    用紙はA4紙を用い,以下の項目について記載すること.
    1. 候補者氏名・所属・職
    2. 略歴(分かる範囲でよい)
    3. 業績の題目
    4. 推薦理由
    5. 受賞候補としての業績に関する論文リスト
    6. 受賞候補者の業績を良く知っている2-3名の方の氏名,所属,電話番号,電子メールアドレス
    7. 推薦者氏名・所属・職・連絡先

    注意.選考は提出された推薦資料に調査・検討を加えて行われる.たとえ被推薦者の重要な業績であっても,推薦書に書かれていない場合は,それが審査において考慮されない場合も起こりうることになる.従って,推薦書の作成には十分配慮し,(重要な国際会議等での招待講演等も含めた)候補者の業績が明確に分かるように作成されることが望まれる.

  4. 推薦締め切り:
    2016年6月10日(金)(締切日必着)
  5. 推薦書送付先:
    〒980-8578
    宮城県仙台市青葉区荒巻字青葉6番3号
    東北大学大学院理学研究科
    日本数学会解析学賞事務局
    石毛 和弘
  6. 送付方法:
    郵送を原則とするが,海外からの送付など事情がある場合には電子メールによる推薦書送付も受け付ける.その場合は,あらかじめその旨を事務局まで連絡の上,送付について配慮を期すること.

(文責) 日本数学会解析学賞事務局 石毛 和弘

[数学通信20-1掲載](2015.5)

【2015年度(第14回)日本数学会解析学賞候補者推薦のお願い】

 “解析学および,解析学に関連する分野において著しい業績をあげた研究者に対し,その業績を顕彰する”目的で解析学賞が設置され,2002年度から運営が始まりました.この賞の授与も既に13回を数えるに至りました.昨年度の第13回の受賞者は,
石毛和弘,長田博文,濱田英隆
の各氏でありました.これらの受賞講演が,3月21-24日に明治大学において開催された年会において行われました.
2015年度(第14回)日本数学会解析学賞(以下,解析学賞と称する)受賞候補者の推薦を下記の要領で募集いたしますので,ご推薦下さいますようお願いいたします.(名称が「日本数学会解析学賞」に変更されました.内規により,推薦委員が選ばれることになっておりますが,これは一定数の候補者を確保するための処置であり,推薦委員から推薦された候補者が,選考において優先されることはありません.)2015年度(第14回)の受賞者の発表は,2015年度秋季総合分科会の折に行われる予定です.

  1. 推薦対象:
    過去5年間程度の間に,広い意味での解析学に関連した分野において著しい業績をあげた,日本数学会会員(詳細については,解析学賞ホーム・ページhttp://www.math.kobe-u.ac.jp/a-prize/の解析学賞基金規定および内規を参照)
  2. 推薦者:
    推薦出来るのは日本数学会会員とする.また他薦に限る.
  3. 推薦書:
    用紙はA4紙を用い,以下の項目について記載すること.
    1. 候補者氏名・所属・職
    2. 略歴(分かる範囲でよい)
    3. 業績の題目
    4. 推薦理由
    5. 受賞候補としての業績に関する論文リスト
    6. 受賞候補者の業績を良く知っている2-3名の方の氏名,所属,電話番号,電子メールアドレス
    7. 推薦者氏名・所属・職・連絡先

    注意.選考は提出された推薦資料に調査・検討を加えて行われる.たとえ被推薦者の重要な業績であっても,推薦書に書かれていない場合は,それが審査において考慮されない場合も起こりうることになる.従って,推薦書の作成には十分配慮し,(重要な国際会議等での招待講演等も含めた)候補者の業績が明確に分かるように作成されることが望まれる.

  4. 推薦締め切り:
    2015年6月12日(金)(締切日必着)
  5. 推薦書送付先:
    〒153-8914
    東京都目黒区駒場3-8-1
    東京大学大学院数理科学研究科
    日本数学会解析学賞事務局
    吉田 朋広
  6. 送付方法:
    郵送を原則とするが,海外からの送付など事情がある場合には電子メールによる推薦書送付も受け付ける.その場合は,あらかじめその旨を事務局まで連絡の上,送付について配慮を期すること.

(文責) 日本数学会解析学賞事務局 吉田 朋広

[数学通信19-1掲載](2014.5)

【2014年度(第13回)解析学賞候補者推薦のお願い】

“解析学および,解析学に関連する分野において著しい業績をあげた研究者に対し,その業績を顕彰する”目的で解析学賞が設置され,2002年度から運営が始まりました.この賞の授与も既に12回を数えるに至りました.昨年度の第12回の受賞者は,
利根川吉廣,綿谷安男,渡部俊朗
の各氏でありました.これらの受賞講演が,3月15-18日に学習院大学において開催された年会において行われました.
2014年度(第13回)解析学賞受賞候補者の推薦を下記の要領で募集いたしますので,ご推薦下さいますようお願いいたします.(内規により,推薦委員が選ばれることになっておりますが,これは一定数の候補者を確保するための処置であり,推薦委員から推薦された候補者が,選考において優先されることはありません.)2014年度(第13回)の受賞者の発表は,2014年度秋季総合分科会の折に行われる予定です.

  1. 推薦対象:
    過去5年間程度の間に,広い意味での解析学に関連した分野において著しい業績をあげた,日本数学会会員(詳細については,解析学賞ホーム・ページhttp://www.math.kobe-u.ac.jp/a-prize/の解析学賞基金規定および内規,あるいは「数学通信」6巻2号65ページの解析学賞規程および内規を参照)
  2. 推薦者:
    推薦出来るのは日本数学会会員とする.また他薦に限る.
  3. 推薦書:
    用紙はA4紙を用い,以下の項目について記載すること.
    1. 候補者氏名・所属・職
    2. 略歴(分かる範囲でよい)
    3. 業績の題目
    4. 推薦理由
    5. 受賞候補としての業績に関する論文リスト
    6. 受賞候補者の業績を良く知っている2-3名の方の氏名,所属,電話番号,電子メールアドレス
    7. 推薦者氏名・所属・職・連絡先

    注意.選考は提出された推薦資料に調査・検討を加えて行われる.たとえ被推薦者の重要な業績であっても,推薦書に書かれていない場合は,それが審査において考慮されない場合も起こりうることになる.従って,推薦書の作成には十分配慮し,(重要な国際会議等での招待講演等も含めた)候補者の業績が明確に分かるように作成されることが望まれる.

  4. 推薦締め切り:
    2014年6月13日(金)(締切日必着)
  5. 推薦書送付先:
    〒153-8914
    東京都目黒区駒場3-8-1
    東京大学大学院数理科学研究科
    解析学賞事務局
    中村 周
  6. 送付方法:
    郵送を原則とするが,海外からの送付など事情がある場合には電子メールによる推薦書送付も受け付ける.その場合は,あらかじめその旨を事務局まで連絡の上,送付について配慮を期すること.

(文責) 解析学賞事務局 中村 周

[数学通信18-1掲載](2013.5)

【2013年度(第12回)解析学賞候補者推薦のお願い】

 “解析学および,解析学に関連する分野において著しい業績をあげた研究者に対し,その業績を顕彰する”目的で解析学賞が設置され,2002年度から運営が始まりました.この賞の授与も既に11回を数えるに至りました.昨年度の第11回の受賞者は,
隠居良行,坂口茂,谷口正信
の各氏でありました.これらの受賞講演が,3月20-23日に京都大学において開催された年会において行われました.
2013年度(第12回)解析学賞受賞候補者の推薦を下記の要領で募集いたしますので,ご推薦下さいますようお願いいたします.(内規により,推薦委員が選ばれることになっておりますが,これは一定数の候補者を確保するための処置であり,推薦委員から推薦された候補者が,選考において優先されることはありません.)2013年度(第12回)の受賞者の発表は,2013年度秋季総合分科会の折に行われる予定です.

  1. 推薦対象:
    過去5年間程度の間に,広い意味での解析学に関連した分野において著しい業績をあげた,日本数学会会員(詳細については,解析学賞ホーム・ページhttp://www.math.kobe-u.ac.jp/a-prize/の解析学賞基金規定および内規,あるいは「数学通信」6巻2号65ページの解析学賞規程および内規を参照)
  2. 推薦者:
    推薦出来るのは日本数学会会員とする.また他薦に限る.
  3. 推薦書:
    用紙はA4紙を用い,以下の項目について記載すること.
    1. 候補者氏名・所属・職
    2. 略歴(分かる範囲でよい)
    3. 業績の題目
    4. 推薦理由
    5. 受賞候補としての業績に関する論文リスト
    6. 受賞候補者の業績を良く知っている2-3名の方の氏名,所属,電話番号,電子メールアドレス
    7. 推薦者氏名・所属・職・連絡先

    注意.選考は提出された推薦資料に調査・検討を加えて行われる.たとえ被推薦者の重要な業績であっても,推薦書に書かれていない場合は,それが審査において考慮されない場合も起こりうることになる.従って,推薦書の作成には十分配慮し,(重要な国際会議等での招待講演等も含めた)候補者の業績が明確に分かるように作成されることが望まれる.

  4. 推薦締め切り:
    2013年6月19日(水)(締切日必着)
  5. 推薦書送付先:
    〒464-8602
    名古屋市千種区不老町
    名古屋大学大学院多元数理科学研究科
    解析学賞事務局
    杉本 充
  6. 送付方法:
    郵送を原則とするが,海外からの送付など事情がある場合には電子メールによる推薦書送付も受け付ける.その場合は,あらかじめその旨を事務局まで連絡の上,送付について配慮を期すること.

(文責) 解析学賞事務局 杉本 充

[数学通信17-1掲載](2012.5)

【2012年度(第11回)解析学賞候補者推薦のお願い】

“解析学および,解析学に関連する分野において著しい業績をあげた研究者に対し,その業績を顕彰する”目的で解析学賞が設置され,2002年度から運営が始まりました.この賞の授与も既に10回を数えるに至りました.昨年度の第10回の受賞者は,
日野正訓,松井宏樹,森本芳則
の各氏でありました.これらの受賞講演が,3月26-29日に東京理科大学において開催された年会において行われました.
2012年度(第11回)解析学賞受賞候補者の推薦を下記の要領で募集いたしますので,ご推薦下さいますようお願いいたします.(内規により,推薦委員が選ばれることになっておりますが,これは一定数の候補者を確保するための処置であり,推薦委員から推薦された候補者が,選考において優先されることはありません.)2012年度(第11回)の受賞者の発表は,2012年度秋季総合分科会の折に行われる予定です.

  1. 推薦対象:
    過去5年間程度の間に,広い意味での解析学に関連した分野において著しい業績をあげた,日本数学会会員(詳細については,解析学賞ホーム・ページhttp://www.math.kobe-u.ac.jp/a-prize/の解析学賞基金規定および内規,あるいは「数学通信」6巻2号65ページの解析学賞規程および内規を参照)
  2. 推薦者:
    推薦出来るのは日本数学会会員とする.また他薦に限る.
  3. 推薦書:
    用紙はA4紙を用い,以下の項目について記載すること.
    1. 候補者氏名・所属・職
    2. 略歴(分かる範囲でよい)
    3. 業績の題目
    4. 推薦理由
    5. 受賞候補としての業績に関する論文リスト
    6. 受賞候補者の業績を良く知っている2-3名の方の氏名,所属,電話番号,電子メールアドレス
    7. 推薦者氏名・所属・職・連絡先

    注意.選考は提出された推薦資料に調査・検討を加えて行われる.たとえ被推薦者の重要な業績であっても,推薦書に書かれていない場合は,それが審査において考慮されない場合も起こりうることになる.従って,推薦書の作成には十分配慮し,(重要な国際会議等での招待講演等も含めた)候補者の業績が明確に分かるように作成されることが望まれる.

  4. 推薦締め切り:2012年6月20日(水)(締切日必着)
  5. 推薦書送付先:
    〒464-8602
    名古屋市千種区不老町
    名古屋大学大学院多元数理科学研究科
    解析学賞事務局
    山上 滋
  6. 送付方法:
    郵送を原則とするが,海外からの送付など事情がある場合には電子メールによる推薦書送付も受け付ける.その場合は,あらかじめその旨を事務局まで連絡の上,送付について配慮を期すること.

(文責) 解析学賞事務局 山上 滋

[数学通信16-1掲載](2011.5)

【2011年度(第10回)解析学賞候補者推薦のお願い】

“解析学および,解析学に関連する分野において著しい業績をあげた研究者に対し,その業績を顕彰する”目的で解析学賞が設置され,2002年度から運営が始まりました.この賞の授与も既に9回を数えるに至りました.昨年度の第9回の受賞者は,
中村周,長井英生,永井敏隆
の各氏でありました.これらの内容は2011年度年会のアブストラクト集に発表されました.
2011年度(第10回)解析学賞受賞候補者の推薦を下記の要領で募集いたしますので,ご推薦下さいますようお願いいたします.(内規により,推薦委員が選ばれることになっておりますが,これは一定数の候補者を確保するための処置であり,推薦委員から推薦された候補者が,選考において優先されることはありません.)
2011年度(第10回)の受賞者の発表は,2011年度秋季総合分科会の折に行われる予定です.

  1. 推薦対象:
    過去5年間程度の間に,広い意味での解析学に関連した分野において著しい業績をあげた,日本数学会会員(詳細については,解析学賞ホーム・ページhttp://www.math.kobe-u.ac.jp/a-prize/の解析学賞基金規定および内規,あるいは「数学通信」6巻2号65ページの解析学賞規程および内規を参照)
  2. 推薦者:
    推薦出来るのは日本数学会会員とする.また他薦に限る.
  3. 推薦書:
    用紙はA4紙を用い,以下の項目について記載すること.
    1. 候補者氏名・所属・職
    2. 略歴(分かる範囲でよい)
    3. 業績の題目
    4. 推薦理由
    5. 受賞候補としての業績に関する論文リスト
    6. 受賞候補者の業績を良く知っている2-3名の方の氏名,所属,電話番号,電子メールアドレス
    7. 推薦者氏名・所属・職・連絡先

    注意.選考は提出された推薦資料に調査・検討を加えて行われる.たとえ被推薦者の重要な業績であっても,推薦書に書かれていない場合は,それが審査において考慮されない場合も起こりうることになる.従って,推薦書の作成には十分配慮し,(重要な国際会議等での招待講演等も含めた)候補者の業績が明確に分かるように作成されることが望まれる.

  4. 推薦締め切り:2011年6月17日(金)(締切日必着)
  5. 推薦書送付先:
    〒606-8502
    京都市左京区北白川追分町
    京都大学大学院理学研究科 数学・数理解析専攻
    解析学賞事務局
  6. 送付方法:
    郵送を原則とするが,海外からの送付など事情がある場合には電子メールによる推薦書送付も受け付ける.その場合は,あらかじめその旨を事務局まで連絡の上,送付について配慮を期すること.

(文責) 解析学賞事務局 重川 一郎

[数学通信15-1掲載](2010.5)

【2010年度(第9回)解析学賞候補者推薦のお願い】

“解析学および,解析学に関連する分野において著しい業績をあげた研究者に対し,その業績を顕彰する”目的で解析学賞が設置され,2002年度から運営が始まりました.この賞の授与も既に8回を数えるに至りました.昨年度の第8回の受賞者は,
相川弘明,小川卓克,西谷達雄
の各氏でありました.これらの受賞講演が,3月24日-27日に慶応大学において開催された年会において行われました.
2010年度(第9回)解析学賞受賞候補者の推薦を下記の要領で募集いたしますので,ご推薦くださいますようお願いいたします.(内規により,推薦委員が選ばれることになっておりますが,これは一定数の候補者を確保するための処置であり,推薦委員から推薦された候補者が,選考において優先されることはありません.)
2010年度(第9回)の受賞者の発表は,2010年度秋季総合分科会の折りに行われる予定です.

  1. 推薦対象:
    過去5年間程度の間に,広い意味での解析学に関連した分野において著しい業績をあげた,日本数学会会員(詳細については,解析学賞ホーム・ページhttp://www.math.kobe-u.ac.jp/a-prize/の解析学賞基金規定および内規,あるいは「数学通信」6巻2号65ページの解析学賞規程および内規を参照)
  2. 推薦者:
    推薦出来るのは日本数学会会員とする.また他薦に限る.
  3. 推薦書:
    用紙はA4紙を用い,以下の項目について記載すること.
    1. 候補者氏名・所属・職
    2. 略歴(分かる範囲でよい)
    3. 業績の題目
    4. 推薦理由
    5. 受賞候補としての業績に関する論文リスト
    6. 受賞候補者の業績を良く知っている2-3名の方の氏名,所属,電話番号,電子メールアドレス
    7. 推薦者氏名・所属・職・連絡先

    注意.選考は提出された推薦資料に調査・検討を加えて行われる.たとえ被推薦者の重要な業績であっても,推薦書に書かれていない場合は,それが審査において考慮されない場合も起こりうることになる.従って,推薦書の作成には十分配慮し,(重要な国際会議等での招待講演等も含めた)候補者の業績が明確に分かるように作成されることが望まれる.

  4. 推薦締め切り:2010年6月11日(金)(締め切り日必着)
  5. 推薦書送付先:
    〒606-8502
    京都市左京区北白川追分町
    京都大学大学院理学研究科数学教室
    解析学賞事務局
  6. 送付方法:
    郵送を原則とするが,海外からの送付など事情がある場合には電子メールによる推薦書送付も受け付ける.その場合は,あらかじめその旨を事務局まで連絡の上,送付について配慮を期すること.

(文責) 解析学賞事務局 堤 誉志雄

[数学通信14-1掲載](2009.5)

【2009年度(第8回)解析学賞候補者推薦のお願い】

“解析学および,解析学に関連する分野において著しい業績をあげた研究者に対し,その業績を顕彰する”目的で解析学賞が設置され,2002年度から運営が始まりました.この賞の授与も既に7回を数えるに至りました.昨年度の第7回の受賞者は,
佐藤健一,田村英男,林仲夫
の各氏でありました.これらの受賞講演が,3月26-29日に東京大学において開催された年会において行われました.
2009年度(第8回)解析学賞受賞候補者の推薦を下記の要領で募集いたしますので,ご推薦下さいますようお願いいたします.(内規により,推薦委員が選ばれることになっておりますが,これは一定数の候補者を確保するための処置であり,推薦委員から推薦された候補者が,選考において優先されることはありません.)
2009年度(第8回)の受賞者の発表は,2009年度秋季総合分科会の折に行われる予定です.

  1. 推薦対象:
    過去5年間程度の間に,広い意味での解析学に関連した分野において著しい業績をあげた,日本数学会会員(詳細については,解析学賞ホーム・ページhttp://www.math.kobe-u.ac.jp/a-prize/の解析学賞基金規定および内規,あるいは「数学通信」6巻2号65ページの解析学賞規程および内規を参照)
  2. 推薦者:
    推薦出来るのは日本数学会会員とする.また他薦に限る.
  3. 推薦書:
    用紙はA4紙を用い,以下の項目について記載すること.
    1. 候補者氏名・所属・職
    2. 略歴(分かる範囲でよい)
    3. 業績の題目
    4. 推薦理由
    5. 受賞候補としての業績に関する論文リスト
    6. 受賞候補者の業績を良く知っている2-3名の方の氏名,所属,電話番号,電子メールアドレス
    7. 推薦者氏名・所属・職・連絡先

    注意.選考は提出された推薦資料に調査・検討を加えて行われる.たとえ被推薦者の重要な業績であっても,推薦書に書かれていない場合は,それが審査において考慮されない場合も起こりうることになる.従って,推薦書の作成には十分配慮し,(重要な国際会議等での招待講演等も含めた)候補者の業績が明確に分かるように作成されることが望まれる.

  4. 推薦締め切り:2009年6月12日(金)(締切日必着)
  5. 推薦書送付先:
    〒560-0043
    豊中市待兼山町1-1
    大阪大学大学院理学研究科
    数学専攻
    解析学賞事務局
  6. 送付方法:
    郵送を原則とするが,海外からの送付など事情がある場合には電子メールによる推薦書送付も受け付ける.その場合は,あらかじめその旨を事務局まで連絡の上,送付について配慮を期すること.

(文責) 解析学賞事務局 西谷 達雄

[数学通信13-1掲載](2008.5)

【2008年度(第7回)解析学賞候補者推薦のお願い】

“解析学および,解析学に関連する分野において著しい業績をあげた研究者に対し,その業績を顕彰する”目的で解析学賞が設置され,2002年度から運営が始まりました.この賞の授与も既に6回を数えるに至りました.昨年度の第6回の受賞者は,
会田茂樹,菱田俊明,平井武
の各氏でありました.これらの受賞講演が,3月23-26日に近畿大学において開催された年会において行われました.
2008年度(第7回)解析学賞受賞候補者の推薦を下記の要領で募集いたしますので,ご推薦下さいますようお願いいたします.(内規により,推薦委員が選ばれることになっておりますが,これは一定数の候補者を確保するための処置であり,推薦委員から推薦された候補者が,選考において優先されるということはありません.)
2008年度(第7回)の受賞者の発表は,2008年度秋季総合分科会の折に行われる予定です.

  1. 推薦対象:
    過去5年間程度の間に,広い意味での解析学に関連した分野において著しい業績をあげた,日本数学会会員(詳細については,解析学賞ホーム・ページhttp://www.math.kobe-u.ac.jp/a-prize/の解析学賞基金規定および内規,あるいは「数学通信」6巻2号65ページの解析学賞規程および内規を参照)
  2. 推薦者:
    推薦出来るのは日本数学会会員とする.また他薦に限る.
  3. 推薦書:
    用紙はA4紙を用い,以下の項目について記載すること.
    1. 候補者氏名・所属・職
    2. 略歴(分かる範囲でよい)
    3. 業績の題目
    4. 推薦理由
    5. 受賞候補としての業績に関する論文リスト
    6. 受賞候補者の業績を良く知っている2-3名の方の氏名,所属,電話番号,電子メールアドレス
    7. 推薦者氏名・所属・職・連絡先

    注意.選考は提出された推薦資料に調査・検討を加えて行われる.たとえ被推薦者の重要な業績であっても,推薦書に書かれていない場合は,それが審査において考慮されない場合も起こりうることになる.従って,推薦書の作成には十分配慮し,(重要な国際会議等での招待講演等も含めた)候補者の業績が明確に分かるように作成されることが望まれる.

  4. 推薦締め切り:2008年6月13日(締切日必着)
  5. 推薦書送付先:
    〒560-0043
    豊中市待兼山町1-1
    大阪大学大学院情報科学研究科
    情報基礎数学専攻
    解析学賞事務局
  6. 送付方法:
    郵送を原則とするが,海外からの送付など事情がある場合には電子メールによる推薦書送付も受け付ける.その場合は,あらかじめその旨を事務局まで連絡の上,送付について配慮を期すること.

(文責) 解析学賞事務局 松村 昭孝

[数学通信12-1掲載](2007.5)

【2007年度(第6回)解析学賞候補者推薦のお願い】

“解析学および,解析学に関連する分野において著しい業績をあげた研究者に対し,その業績を顕彰する”目的で解析学賞が設置され,2002年度から運営が始まりました.この賞の授与も既に5回を数えるに至りました.昨年度の第5回の受賞者は,
小沢登高,木上淳,吉田朋広
の各氏でありました.これらの受賞講演が,3月27-30日に埼玉大学において開催された年会において行われました.
2007年度(第6回)解析学賞受賞候補者の推薦を下記の要領で募集いたしますので,ご推薦下さいますようお願いいたします.(内規により,推薦委員が選ばれることになっておりますが,これは一定数の候補者を確保するための処置であり,推薦委員から推薦された候補者が,選考において優先されるということはありません.)
2007年度(第6回)の受賞者の発表は,2007年度秋季総合分科会の折に行われる予定です.

  1. 推薦対象:
    過去5年間程度の間に,広い意味での解析学に関連した分野において著しい業績をあげた,日本数学会会員(詳細については,解析学賞ホーム・ページhttp://www.math.kobe-u.ac.jp/a-prize/の解析学賞基金規定および内規,あるいは「数学通信」6巻2号65ページの解析学賞規程および内規を参照)
  2. 推薦者:
    推薦出来るのは日本数学会会員とする.また他薦に限る.
  3. 推薦書:
    用紙はA4紙を用い,以下の項目について記載すること.
    1. 候補者氏名・所属・職
    2. 略歴(分かる範囲でよい)
    3. 業績の題目
    4. 推薦理由
    5. 受賞候補としての業績に関する論文リスト
    6. 受賞候補者の業績を良く知っている2-3名の方の氏名,所属,電話番号,電子メールアドレス
    7. 推薦者氏名・所属・職・連絡先

    注意.選考は提出された推薦資料に調査・検討を加えて行われる.たとえ被推薦者の重要な業績であっても,推薦書に書かれていない場合は,それが審査において考慮されない場合も起こりうることになる.従って,推薦書の作成には十分配慮し,(重要な国際会議等での招待講演等も含めた)候補者の業績が明確に分かるように作成されることが望まれる.

  4. 推薦締め切り:2007年6月29日(締切日必着)
  5. 推薦書送付先:
    〒812-8581
    福岡市東区箱崎6-10-1
    九州大学数理学研究院
    解析学賞事務局
  6. 送付方法:
    郵送を原則とするが,海外からの送付など事情がある場合には電子メールによる推薦書送付も受け付ける.その場合は,あらかじめその旨を事務局まで連絡の上,送付について配慮を期すること.

(文責) 解析学賞事務局 幸崎 秀樹

[数学通信11-1掲載](2006.5)

【2006年度(第5回)解析学賞候補者推薦のお願い】

“解析学および,解析学に関連する分野において著しい業績をあげた研究者に対し,その業績を顕彰する”目的で解析学賞が設置され,2002年度から運営が始まりました.この賞の授与も既に4回を数えるに至りました.昨年度の第4回の受賞者は,
中西賢次,藤原英徳,吉田伸生
の各氏でありました.これらの受賞講演が,3月26日から29日にわたって中央大学理工学部において開催されました年会において行われました.
2006年度(第5回)解析学賞受賞候補者の推薦を下記の要領で募集いたしますので,ご推薦下さいますようお願いいたします.(内規により,推薦委員が選ばれることになっておりますが,これは一定数の候補者を確保するための処置であり,推薦委員から推薦された候補者が,選考において優先されるということはありません.)
2006年度(第5回)の受賞者の発表は,2006年度秋季総合分科会の折に行われる予定です.

  1. 推薦対象:
    過去5年間程度の間に,広い意味での解析学に関連した分野において著しい業績をあげた,日本数学会会員(詳細については,解析学賞ホーム・ページhttp://www.math.kobe-u.ac.jp/a-prize/の解析学賞基金規定および内規,あるいは「数学通信」6巻2号65ページの解析学賞規程および内規を参照)
  2. 推薦者:
    推薦出来るのは日本数学会会員とする.また他薦に限る.
  3. 推薦書:
    用紙はA4紙を用い,以下の項目について記載すること.
    1. 候補者氏名・所属・職
    2. 略歴(分かる範囲でよい)
    3. 業績の題目
    4. 推薦理由
    5. 受賞候補としての業績に関する論文リスト
    6. 受賞候補者の業績を良く知っている2-3名の方の氏名,所属,電話番号,電子メールアドレス
    7. 推薦者氏名・所属・職・連絡先

    注意.選考は提出された推薦資料に調査・検討を加えて行われる.たとえ被推薦者の重要な業績であっても,推薦書に書かれていない場合は,それが審査において考慮されない場合も起こりうることになる.従って,推薦書の作成には十分配慮し,(重要な国際会議等での招待講演等も含めた)候補者の業績が明確に分かるように作成されることが望まれる.

  4. 推薦締め切り:2006年6月30日
  5. 推薦書送付先:
    〒812-8581
    福岡市東区箱崎6-10-1
    九州大学数理学研究院
    解析学賞事務局
  6. 送付方法:
    郵送を原則とするが,海外からの送付など事情がある場合には電子メールによる推薦書送付も受け付ける.その場合は,あらかじめその旨を事務局まで連絡の上,送付について配慮を期すること.

(文責) 解析学賞事務局 幸崎 秀樹

[数学通信10-1掲載](2005.5)

【第4回解析学賞候補者推薦のお願い】

“解析学および,解析学に関連する分野において著しい業績をあげた研究者に対し,その業績を顕彰する”目的で解析学賞が設置され,2002年度から運営が始まりました.この賞の授与も既に3回を数えるに至りました.昨年度の第3回の受賞者は,
赤平昌文,岩崎克則,西田孝明
の各氏でありました.これらの受賞者のうち,赤平氏と岩崎氏の受賞講演が,3月27日から30日にわたって日本大学理工学部において開催されました年会において行われました.また,西田氏の受賞講演は秋季総合分科会において行われる予定です.
第4回(2005年度)の解析学賞受賞候補者の推薦を下記の要領で募集いたしますので,ご推薦下さいますようお願いいたします.(内規により,推薦委員が選ばれることになっておりますが,これは一定数の候補者を確保するための処置であり,推薦委員から推薦された候補者が,選考において優先されるということはありません.)
第4回目の受賞者の発表は,2005年度秋季総合分科会の折に行われる予定です.

  1. 推薦対象:
    過去5年間程度の間に,広い意味での解析学に関連した分野において著しい業績をあげた,日本数学会会員(詳細については,解析学賞ホーム・ページhttp://www.math.kobe-u.ac.jp/a-prize/の解析学賞基金規定および内規,あるいは「数学通信」6巻2号65ページの解析学賞規程および内規を参照)
    なお,第3回まで被推薦の資格がありませんでした10名の解析学賞検討委員会委員も,今回から推薦される資格があります.
  2. 推薦者:
    推薦出来るのは日本数学会会員とする.また他薦に限る.
  3. 推薦書:
    用紙はA4紙を用い,以下の項目について記載すること.
    1. 候補者氏名・所属・職
    2. 略歴(分かる範囲でよい)
    3. 業績の題目
    4. 推薦理由
    5. 受賞候補としての業績に関する論文リスト
    6. 受賞候補者の業績を良く知っている2-3名の方の氏名,所属,電話番号,電子メールアドレス
    7. 推薦者氏名・所属・職・連絡先

    注意.選考は提出された推薦資料に調査・検討を加えて行われる.たとえ被推薦者の重要な業績であっても,推薦書に書かれていない場合は,それが審査において考慮されない場合も起こりうることになる.従って,推薦書の作成には十分配慮し,(重要な国際会議等での招待講演等も含めた)候補者の業績が明確に分かるように作成されることが望まれる.

  4. 推薦締め切り:2005年6月30日
  5. 推薦書送付先:
    〒606-8502
    京都市左京区北白川追分町
    京都大学大学院理学研究科数学教室内
    解析学賞事務局宛
  6. 送付方法:
    郵送を原則とするが,海外からの送付など事情がある場合には電子メールによる推薦書送付も受け付ける.その場合は,あらかじめその旨を事務局まで連絡の上,送付について配慮を期すること.

(文責:解析学賞事務局 井川 満)

[数学通信9-1掲載](2004.5)

【第3回解析学賞候補者推薦のお願い】

“解析学および,解析学に関連する分野において著しい業績をあげた研究者に対し,その業績を顕彰する”目的で解析学賞が設置され,2002年度から運営が始まりました.第1回(2002年度)の解析学賞受賞者は,野口潤次郎,舟木直久,柳田英二の3氏,第2回(2003年度)の受賞者は,泉正己,福島正俊,宮嶋公夫の3氏でありました.第2回受賞者の受賞講演が,3月28日から31日にわたって筑波大学において開催されました年会において行われました.
第3回(2004年度)の解析学賞受賞候補者の推薦を下記の要領で募集いたしますので,ご推薦下さいますようお願いいたします.(内規により,推薦委員が選ばれることになっておりますが,これは一定数の候補者を確保するための処置であり,推薦委員から推薦された候補者が,選考において優先されるということはありません)
第3回目の受賞者の発表は,2004年度秋季総合分科会の折に行われる予定です.

  1. 推薦対象:
    過去5年間程度の間に,広い意味での解析学に関連した分野において著しい業績をあげた日本数学会会員(この詳細については,「数学通信」6巻2号65ページの解析学賞規程および内規を参照のこと).
    なお,解析学賞検討委員会の委員であった下記の10名は,今回も被推薦の資格がありません(今回でこの制限は終了します).
    今吉洋一 風間英明 谷島賢二 井川満 薮田公三
    岡沢登 野村隆昭 幸崎秀樹 小谷真一 景山三平
  2. 推薦者:
    推薦出来るのは日本数学会会員とする.また他薦に限る.
  3. 推薦書:
    用紙はA4紙を用い,以下の項目について記載すること.
    1. 候補者氏名・所属・職
    2. 略歴(分かる範囲でよい)
    3. 業績の題目
    4. 推薦理由
    5. 受賞候補としての業績に関する論文リスト
    6. 受賞候補者の業績を良く知っている2-3名の方の氏名,所属,電話番号,電子メールアドレス
    7. 推薦者氏名・所属・職・連絡先

    注意.選考は提出された推薦資料に調査・検討を加えて行われる.たとえ被推薦者の重要な業績であっても,推薦書に書かれていない場合は,それが審査において考慮されない場合も起こりうることになる.従って,推薦書の作成には十分配慮し,(重要な国際会議等での招待講演等も含めた)候補者の業績が明確に分かるように作成されることが望まれる.

  4. 推薦締め切り:2004年6月30日
  5. 推薦書送付先:
    〒606-8502
    京都市左京区北白川追分町
    京都大学大学院理学研究科数学教室内
    解析学賞事務局宛
  6. 送付方法:
    郵送を原則とするが,海外からの送付など事情がある場合には電子メールによる推薦書送付も受け付ける.その場合は,あらかじめその旨を事務局まで連絡の上,送付について配慮を期すること.

(文責:解析学賞事務局 井川 満)

[数学通信8-1掲載](2003.5)

【第2回解析学賞候補者推薦のお願い】

“解析学および,解析学に関連する分野において著しい業績をあげた研究者に対し,その業績を顕彰する”目的で解析学賞が設置され,2002年度から運営が始まりました.第1回の解析学賞受賞者は,野口潤次郎,舟木直久,柳田英二の3氏でありました.その受賞講演が,3月23日から26日にわたって東京大学において開催されました年会において行われました.
第2回(2003年度)の解析学賞受賞候補者の推薦を下記の要領で募集いたしますので,ご推薦下さいますようお願いいたします.(内規により,推薦委員が選ばれることになっておりますが,これは一定数の候補者を確保するための処置であり,推薦委員から推薦された候補者が,選考において優先されるということはありません)
第2回目の受賞者の発表は,2003年度秋季総合分科会の折に行われる予定です.

  1. 推薦対象:
    過去5年間程度の間に,広い意味での解析学に関連した分野において著しい業績をあげた日本数学会会員(この詳細については,「数学通信」6巻2号65ページの解析学賞規程および内規を参照のこと).
    なお,解析学賞検討委員会の委員であった下記の10名は,今回も被推薦の資格がありません(今回でこの制限は終了します).
    今吉洋一 風間英明 谷島賢二 井川満 薮田公三
    岡沢登 野村隆昭 幸崎秀樹 小谷真一 景山三平
  2. 推薦者:
    推薦出来るのは日本数学会会員とする.また他薦に限る.
  3. 推薦書:
    用紙はA4紙を用い,以下の項目について記載すること.
    1. 候補者氏名・所属・職
    2. 略歴(分かる範囲でよい)
    3. 業績の題目
    4. 推薦理由
    5. 受賞候補としての業績に関する論文リスト
    6. 受賞候補者の業績を良く知っている2-3名の方の氏名,所属,電話番号,電子メールアドレス
    7. 推薦者氏名・所属・職・連絡先

    注意.選考は提出された推薦資料に調査・検討を加えて行われる.たとえ被推薦者の重要な業績であっても,推薦書に書かれていない場合は,それが審査において考慮されない場合も起こりうることになる.従って,推薦書の作成には十分配慮し,(重要な国際会議等での招待講演等も含めた)候補者の業績が明確に分かるように作成されることが望まれる.

  4. 推薦締め切り:2003年6月30日
  5. 推薦書送付先:
    〒606-8502
    京都市左京区北白川追分町
    京都大学大学院理学研究科数学教室内
    解析学賞事務局宛
  6. 送付方法:
    郵送を原則とするが,海外からの送付など事情がある場合には電子メールによる推薦書送付も受け付ける.その場合は,あらかじめその旨を事務局まで連絡の上,送付について配慮を期すること.

(文責:解析学賞事務局 井川 満)

[数学通信6-4掲載](2002.2)

【解析学賞候補者推薦のお願い】

「数学通信」第6巻2号においてお知らせいたしましたように,“解析学および,解析学に関連する分野において著しい業績をあげた研究者に対し,その業績を顕彰する”目的で解析学賞が設置されました.
この賞は,2002年度から運営されます.つきましては,受賞候補者の推薦を下記の要領で募集いたしますので,ご推薦下さいますようお願いいたします.(内規により,推薦委員が選ばれることになっておりますが,これは一定数の候補者を確保するための処置であり,推薦委員から推薦された候補者が,選考において優先されるということはありません)
第1回目の受賞者の発表は,2002年度秋季総合分科会の折に行われる予定です.

  1. 推薦対象:
    過去5年間程度の間に,広い意味での解析学に関連した分野において著しい業績をあげた日本数学会会員(この詳細については,「数学通信」6巻2号65ページの解析学賞規程および内規を参照のこと).
  2. 推薦者:
    推薦出来るのは日本数学会会員とする.また他薦に限る.
  3. 推薦書:
    用紙はA4紙を用い,以下の項目について記載すること.
    1. 候補者氏名・所属・職
    2. 略歴(分かる範囲でよい)
    3. 業績の題目
    4. 推薦理由
    5. 受賞候補としての業績に関する論文リスト
    6. 受賞候補者の業績を良く知っている2-3名の方の氏名,所属,電話番号,電子メールアドレス
    7. 推薦者氏名・所属・職・連絡先

    注意.選考は提出された推薦資料に調査・検討を加えて行われる.たとえ被推薦者の重要な業績であっても,推薦書に書かれていない場合は,それが審査において考慮されない場合も起こりうることになる.従って,推薦書の作成には十分配慮し,(重要な国際会議等での招待講演等も含めた)候補者の業績が明確に分かるように作成されることが望まれる.

  4. 推薦締め切り:2002年6月30日
  5. 推薦書送付先:
    〒606-8502
    京都市左京区北白川追分町
    京都大学大学院理学研究科数学教室内
    解析学賞事務局宛
  6. 送付方法:
    郵送を原則とするが,海外からの送付など事情がある場合には電子メールによる推薦書送付も受け付ける.その場合は,あらかじめその旨を事務局まで連絡の上,送付について配慮を期すること.

(文責:解析学賞検討委員会 委員長 井川 満)

反省会の記録

2005.11.27

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