数学通信第10巻第4号分科会便り

[統計数学分科会]

 

1.評議員候補者の選挙結果について

 

  分科会推薦評議員である笠原勇二氏の任期満了にともなう後任の選挙を,分科会会員741名による投票として行いました.投票は往復葉書を用いて,発送10月7日,締切10月31日,開票11月2日の日程で行いました.なお選挙管理者は栗木哲,立会人は西山陽一氏(統計数理研)です.結果は下記の通りです.最高投票数の竹田雅好氏(東北大)を,同氏の了承の下で評議員候補者として理事会へ推薦いたしました.

 

               選挙結果(敬称略)

 

               竹田雅好 53票

               谷口説男 49票

               福山克司 40票

               その他    4票

               無効      1票   

 

 

 

2.日本学術会議の報告

 

柳川 堯(第19期日本学術会議第4部会員,久留米大学バイオ統計センター)

 私ども第19期学術会議会員は9月末日で辞任し, 101日から新しい体制の日本学術会議が発足した. 新しい日本学術会議の会員は, 30名の委員からなる選考委員会によって選出された. 第2回目以降は学術会議会員の推薦によって選出される (cooptation) ことになっている. 新学術会議会員の名簿は学術会議の次のホームページに与えられている.http://www.scj.go.jp/ja/info/member/index.html

統計科学関係の新会員の名は見られない. 従来第3部に設置されていた経済統計研究連絡委員会関連の新会員もゼロのようである. 日本学術会議発足以来こんなことは初めてである. ショックである. 第19期統計学研究連絡委員会は, このような事態が生じないように危機感を持ち最大の尽力を行った積りであるが, このような結果となり統計関連学会の研究者諸氏に力不足をお詫びするとともに恥じ入るところ多大である. 統計関連学会から次期会員が必ず選出されるように, 連合の力をより一層強く結集させて諸活動に高い成果を挙げていただくよう切にお願いしたい.

統計学連絡委員会は, 以下のような引継ぎ事項を「遺言」として残すこととした. 新しい学術会議の体制では, 統計学研究連絡委員会は消滅するが連携会員は必ず統計科学分野から選出され,統計学研究連絡委員会が行ってきた活動を継続・発展する力になっていただけるものと確信するからである.

ところで, 私どもの「遺言」は2通ある. 他の1通は対外報告知識創造社会に向けた統計教育の推進について」である. これは, 平成10年度の学習指導要領で 義務教育レベルで統計関連の単元が大幅削減されたことに対して, 時代の方向性に合わないことを」指摘した上で「問題解決能力・問題探求能力の育成を目指したデータ処理と確率」教育を義務教育の中で重視し,世界をリード出来る人材養成に比重を高めることが重要であるという観点から提言を行ったものである. 報告書全文は以下のHPから入手できるので, ぜひ読んでいただきたい. http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-19-t1031-10.pdf)本対外報告書は, 官房長はじめ文部科学省の関係者および中央教育委員会の会長・副会長に送付した. なお, 本報告書は, 日本統計学会統計教育分科会が主体となって作成し関係官庁関係者に提出した要望書をバックアップすることを目的としている. 渡辺美智子さんがそのリエイゾンとして果たした役割は大きい. 感謝したい. また, 学術会議報告は私見を交えた拙いものにすぎなかったが, 多くの読者から暖かいご支援と助言をいただいた. 深く感謝したします.

 

統計学研究連絡委員会 引き継ぎ事項

     平成17年9月12日 統計学研究連絡委員会委員長 柳川  堯

 

統計学研究連絡委員会は,主に次のような活動を行ってきた.

Ø         勧告

   統計学の大学院研究教育体制の改善について(勧告)(昭和58年11月)

Ø         対外報告

ü         統計学研究教育体制の整備のための具体的方策について(平2年12月)

ü         知識創造社会に向けた統計教育の推進について(平成17年7月)

Ø         公開講演会・シンポジュウム

ü       シンポジュウム「大学教育における統計学」(平成5年11月4日)

ü       公開講演会「地球環境の統計」(平成6年4月20日)

ü       公開講演会「統計の教育体制ーその国際的展望ー」(平成8年1月26日)

ü       シンポジュウム「21世紀に向けての統計科学の課題と方向―新しいパラダイムの構築」(平成11年7月31日)

ü       シンポジュウム「事例中心に見る統計科学の統計科学の現代的価値」(平成16年9月3日)

ü       シンポジュウム「統計科学の統計科学の現代的価値」(平成17年9月13日)

 

新しい体制の下で10月1日より発足する日本学術会議では,連絡委員会が解消され課題別委員会と分野別委員会の設立が予定されている.わが国における統計科学の研究教育が日本学術会議の新体制の下で円滑に振興・発展することを願い統計学研究連絡委員会は,以下の二点を引き継ぎ事項として書き残すこととした.

 

1.日本学術会議ホームページに掲載されている,日本学術会議の新しい体制の在り方に関する懇談会による「日本学術会議の新しい体制の在り方〜新体制の円滑な発足のための提案〜」の項目IV-6 設置すべき分野別委員会(案)において,統計学は「数学分野別委員会」に入っている.

統計学は,人文科学,社会科学,自然科学のあらゆる分野における数量的理解の基盤として,人文科学,理工学,生命科学のいずれとも密接に関連した複合分野の学問である.数学に密接に関連した数理統計学だけが統計学ではない.このような統計学を「数学」という分野に限定することは,統計学の健全な発展を阻害する可能性があると私たちは懸念する.そこで,1.複合分野を正当に評価した分野別委員会の設置の実現,2.現提案について根本的な変更が難しい場合は,少なくとも「数学」分野別委員会の名を「数理科学」分野別委員会に変更していただきたいこと.

 

2. また,International Statistical Institute等,統計科学に関連する国際学会の国内対応組織の構築を統計学研究連絡委員会で進めてきたが,まだ実現化されていない.この実現化をはかること.

                            以上

 

注意)上記「新体制の円滑な発足のための提案」は日本学術会議のホームページhttp://www.scj.go.jp/ja/scj/kondan/giji10.htmlに記載されています.

 

(連絡責任評議員 栗木哲,統計数理研究所)