第九回(2017年度)福原賞

受賞者

業績題目

足達慎二(静岡大学工学部)
(2017 年秋函数方程式論分科会特別講演者)

半線形および準線形楕円型方程式の研究

眞ア聡(大阪大学大学院基礎工学研究科)
(2008 年微分方程式の総合的研究講演者,2015 年春
函数方程式論分科会特別講演者)

調和解析と変分法的手法による非線形分散型方程式の解の時間大域的解析

若狭徹(九州工業大学大学院工学研究院)
(2014 年微分方程式の総合的研究講演者,2016 年秋
函数方程式論分科会特別講演者)

1次元非線形楕円型方程式に付随する線形化固有値問題と固有関数の明示的表示の研究

【選考委員会構成】
岩崎克則(委員長),久保英夫,石毛和弘,立川篤,熊ノ郷直人,杉本充,清水扇丈,片山聡一郎,小池達也,内藤雄基,仙葉隆,原岡喜重,小薗英雄,利根川吉廣


受賞者

足達慎二(静岡大学工学部)
(2017 年秋函数方程式論分科会特別講演者)

業績題目

半線形および準線形楕円型方程式の研究

受賞理由

 足達慎二氏は半線形および準線形楕円型方程式の研究を行っている.半線形楕円型方程式については,足達氏は物理モデルに現れるスカラーフィールド方程式等を扱い,凝集コンパクト法を,相互作用評価等と共に巧妙に用いることにより,$R^N$ 上のソボレフ空間のルベーグ空間への埋め込みがコンパクトでないため生じる種々の困難を克服し,存在,多重性を示す新たな方法を見出し,興味深い応用を得ている.
 また準線形方程式に関して,足達氏は柴田将敬氏,渡辺達也氏と共にプラズマ物理モデルにおいて現れる方程式に精力的に取り組んでいる.この方程式の主部は凸性を持たず,数学的扱いは難しい一方で,ソボレフ臨界指数を超える範囲でも非自明解が存在する興味深い問題である.足達氏らは準線形項に関するパラメーターを 0 に近づける際の解挙動の詳しい解析を行うことにより,この問題の特質を見出すと共に解の一意性の研究も行っている.非線形楕円型方程式に関する一意性は非常に難しい問題であり,非常に限られた場合にしか結果は得られていない.足達氏らは段階を踏みこの問題に取り組み,非常に一般的な状況で一意性を得ることに成功している.その際に用いられた duality 法により得られる常微分方程式に対する議論も大変優れたものである.
 足達氏はスケール不変な Trudinger-Moser の不等式の最良指数に関する基本的な研究も行っており, 非常に高く評価されている.
 以上のように足達氏の業績は大変すぐれたものであり,函数方程式論分科会福原賞にふさわしいものである.