東京大学グローバルCOE事業の一環として,下記のサマースクールを 開催します.チュートリアル形式の講義ですので,非専門家や若手を 含む,多くの方々のご参加を歓迎します. サマースクール世話人代表           俣野 博 ------------------------------------------------------------- 東京大学 GCOEサマースクール 『非可積分系におけるソリトンの振舞いと安定性』 ------------------------------------------------------------- 日程: 2009年7月28日(火)〜30日(木) 場所: 東京大学大学院数理科学研究科棟002教室 (京王井の頭線駒場東大前駅よりすぐ) 講師(講演順): 1. Frank Merle 氏 (Cergy Pontoise 大学/IHES) 全6回講義 2. 中西 賢次 氏 (京都大学) 全2回講義 3. 水町 徹 氏 (九州大学) 全2回講義 プログラム:       (I)       (II)  (III)      (IV) 7/28(火) XXXX      Merle Merle (休憩) 中西 7/29(水) 水町 (昼食) Merle Merle (休憩) 中西 7/30(木) 水町 (昼食) Merle Merle (休憩) XXXX (I) 11:00-12:00 (II) 13:30-14:30 (III) 14:45-15:45 (IV) 16:15-17:15 【各講義の内容】 << 1. Frank Merle 氏 >> Title: "Dynamics of solitons in non-integrable systems" Part 1: Introduction Part 2: Solitons in the generalized KdV equation --- behavior after collision --- Part 3: Blow-up in the nonlinear waves equation --- singularities and solitons --- 要旨: 完全可積分系であるKdV方程式においては,多重ソリトン解の構造は すでに詳しく解明されており,ソリトンどうしが衝突した後,各ソリトン の形状がすぐに元通りに復元するなどの性質もよく知られている.しかし 方程式中の指数を変えて得られる一般化KdV方程式の場合は,非可積分系 であるため,多重ソリトン解の便利な表示式は存在せず,ソリトンどうしの 衝突後に何が起こるのか,理論的には未解明であった.Merle氏は,最近 Yvon Martel氏と共同でこの問題を解決し,衝突後にわずかな欠損が生じる もののソリトンの形状が見事に復元することを証明するとともに,大きな ソリトンが微小なソリトンと衝突した際に生じる位相(phase)のズレに 関して,KdV方程式の場合と全く違う現象が起こることも明らかにした. 本講義では,第2部(全3回)で上の結果を紹介する.第3部(全2回) では,非線形波動方程式の解の爆発に関する Hatem Zaag 氏との最近の共同 研究の成果を紹介する.とくに,これまで未解明であった爆発境界面の特性点 付近での性質が今回の研究で解明され,特異性の微細構造が多重ソリトンで 表されることが明らかになった.この結果をできるだけわかりやすく解説する. << 2. 中西 賢次 氏 >> 題名:シュレディンガー写像及び熱流における調和写像の漸近安定性と    振動現象について 要旨: 平面から球面への調和写像をシュレディンガーや熱流で時間発展させた ときの漸近安定性を回転対称下で調べる。この問題は、調和写像の写像度が低 いほど摂動部との空間遠方相互作用が大きくなる所が難しく、実際写像度2の 熱流では初期摂動に応じて非自明な時間漸近挙動が現れる。この講演では、非 線形シュディンガー方程式の場合をモデルとして比較しながら、漸近安定性を 示す一般的な手続きとそこからの変更点、必要となる線形評価などについて解 説する。 << 3. 水町 徹 氏 >> 題名: 長波長近似モデルと孤立波の安定性 要旨: KdV方程式をはじめとする長波長近似の非線形分散型方程式は,水面波の 運動やプラズマ中のイオンの運動を記述することで知られている.KdV方程式の ソリトン解は安定的に伝播することが知られていたが,近年変分法に基づいた アプローチで非可積分系のモデルの場合にもソリトン解とよく似た解が安定的 に存在することが証明された. 第1回目の講演ではに変分原理に基づいた安定性の結果について概説し, 次にFermi-Pasta-Ulam格子やある種の流体のbidirectional modelなど変分原理 から安定性がうまく説明できないモデルの場合について述べる. 第2回目の講演では,長波長近似モデルの孤立波の線形安定性の結果について 概説し,孤立波の線形安定性から漸近安定性を示す方法を紹介する. 世話人:俣野博,奈良光紀 総額は限られていますが,旅費の援助が可能です.ご希望の方は, 早めにお知らせください. -------------------------------------------------------- * 会場へのアクセスは,下記にてご確認ください. http://www.ms.u-tokyo.ac.jp/access/index.html