2013年度日本数学会応用数学研究奨励賞受賞者 | ||
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受賞者 |
秋山 正和 氏. | |
所属 |
北海道大学電子科学研究所 | |
受賞題目 |
「平面内細胞極性の数理モデル」 | |
略歴 |
秋山正和氏は2005年3月に広島大学理学部を卒業後,同大学大学院理学研究科数理分子生命理学専攻に進学され,2010年3月に同大学院を修了,同時に博士(理学)の学位を取得されました.その後,北海道大学電子科学研究所,九州大学大学院理学研究院等で博士研究員として研究を続け,2012年6月より北海道大学電子科学研究所助教として採用され,現在に到っております.秋山氏の研究は.数理モデリングを用いた生命現象の理論的解明であり,ウニの卵割機構に対する数理モデリング,生物ロコモーションに対する生物システムに基づく数理モデリングを行っています. | |
受賞理由 |
細胞集団の平面内極性の獲得に関して普遍的かつ最小限の数理モデルを構築するという研究である.研究の意義,動機は分野外の応用数学者にも分かりやすく,問題設定もアプローチも明快であり,生物学的に意義のある結果を得ている.細胞内・細胞外フィードバック効果と拡散的な効果を考慮したモデルはメカニズムをうまく表現しているように考えられる.また,方程式が単純であるが故に数学的に新たな構造を生み出す要素も秘めていて重要性は高い研究となっている. | |
受賞者 |
Elliott Ginder 氏. | |
所属 |
北海道大学電子科学研究所 | |
受賞題目 |
「Droplet and bubble motion: a hyperbolic free boundary problem approach」 | |
略歴 |
Elliott Ginder氏は 2005年8月にワシントン大学理学部を卒業後,2007年10月から金沢大学大学院自然科学研究科数物科学専攻に入学され,2012年9月に同大学院を修了,同時に博士(理学)の学位を取得されました.その後2012年10月より北海道大学電子科学研究所助教として採用され,現在に到っております.Ginder氏は,離散勾配流法を用いたい液滴や泡の運動を体積保存条件付き自由境界問題の数理解析,体積保存条件付き界面運動を記述するマルチフェーズ平均曲率フローに対する数値計算法の開発を行っています. | |
受賞理由 |
液滴・泡の運動の双曲型自由境界問題をEuler-Lagrange方程式を用いて導出し,ある簡略化の後に,導かれる問題に対して離散勾配流法の適用による近似弱解の構成・近似弱解の真の解への収束、という一連の結果を得ている.また,これらの数学解析に基づいて導出されるマルチフェーズBMOアルゴリズムを開発した.数学解析の背景を持つ界面追跡法に基づく液滴の数値計算手法の研究は少なく,本研究から得られる,また期待される成果は非常に重要であると考えられる. | |
受賞者 |
野口 健太 氏 | |
所属 |
慶應義塾大学大学院理工学研究科,日本学術振興会特別研究員 | |
受賞題目 |
「三角形分割から得られる四角形分割について」 | |
略歴 |
野口健太氏は2010年3月に慶應義塾大学理工学部を卒業後,同大学大学院理工学研究科基礎理工学専攻修士課程に進学され,2012年3月に修士(理学)の学位を取得されました.同年4月に同専攻博士課程に進学され,2014年3月に博士(理学)の学位を取得予定です(在学期間2年の早期修了).また,2013年4月より日本学術振興会特別研究員(DC2)に採用されております.野口氏の研究分野はグラフ理論であり,特に位相幾何学グラフ理論における彩色問題について成果をあげています. | |
受賞理由 |
閉曲面上の三角形分割は部分グラフとして四角形分割を持つが,それが2部グラフ的四角形分割か非2部グラフ的四角形分割になるかを考察した結果である.受賞者は以前より,閉曲面上の偶角形分割や偶三角形分割から定義される代数的不変量に着目し,その両者の関係を考察する様々な定理を得てきた.そして,本研究もその一つであり,閉曲面上のグラフの彩色理論への応用が期待される興味深い結果である.発表は当該分野以外の研究者にもわかりやすく述べており,報告書では,研究の流れ,他の結果との関連性がきちんと述べられていた. | |