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日本数学会

「大学生数学基本調査」に基づく数学教育への提言

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「大学生数学基本調査」に基づく数学教育への提言

2012年2月21日

社団法人 日本数学会

「大学生数学基本調査」の狙い

日本数学会は、2011 年 4 月から 7 月にかけて全国の大学生約 6000 人を対象 に、テスト形式の「大学生数学基本調査」を行いました。目的は、高等教育を 受ける前提となる数学的素養と論理力を大学生がどの程度身につけているのか、 その実態を把握し、大学教育の改善に活用するとともに、初等中等教育に対する提言の材料とすることでした。

基本調査に至る経緯

日本数学会に所属する約 5000 名の大学教員の間では 1990 年代初頭から、大学初年次における数学の学力低下が言われていました。それを受けて日本数学会は 1994 年に大学基礎教育ワーキンググループを立ち上げ、1996 年に大学教員を対象とする「大学基礎教育アンケート調査」を実施しました。この調査 によって、 (1)読解・表現など国語力 (2) 抽象的・論理的思考力 (3)知識に対する意欲や忍耐力といった、ごく基本的な能力が学生の間で低下しつつあるという現実が浮き彫りにされました。次いで 1998 年には同ワーキンググループを解散し、代わりに設置した日本数学会教育委員会で、より広汎な数学教育全般について調査・提言を行うことといたしましたが、その後も学生の学力低下は深刻化しております。2000 年代になると多くの大学では、大学本来の数学教育を始めるための前提条件として、高校数学の補習授業を行うことが必要となりました。ここ数年に至っては多くの会員から、「入学試験や1年生の期末試験における数学の答案にまったく意味の通じないものが増え、どう対処したらよいか当惑している」という声が寄せられています。教育委員会メンバーがさまざまな大学の教員から意見を集めたところ、論理的文章を理解する力、論理を組み立て表現する力が学生から失われつつあるのではないか、との危惧が教育現場に広がっていることがわかり、今回「大学生数学基本調査」を実施することとなりました。

基本調査の内容

問題は別紙にある通り、3問からなっています。基本的に、問1は文章に含まれる論理を的確に読み取れるか、問2は論理的に正しい記述ができるか、問3は数学の基本である比例と作図を理解しているか、をテストしています。

基本調査の結果とその分析

日本数学会からの提言

基本調査によって明らかとなった問題点を踏まえ、日本数学会は以下の提言をいたします。

将来へ向けて

日本数学会は基本調査の結果を会員に周知させ大学教育に活かしていくとともに、今後とも調査を継続したいと考えております。資源に恵まれず災害の多い日本は、国民一人一人の知的水準を上げなければ生き残ることができません。 数学は科学・技術を支える基盤です。また数学教育が育む論理力は、国際交渉 のなかで不可欠です。日本数学会は数学と数学教育を通じて、国民生活の向上 に寄与できることを願っております。

添付文書

日本数学会「大学生数学基本調査」に関する報告書(概要版)に一部訂正を加えましたので、ファイルを差し替えました (2012年4月18日)。

日本数学会「大学生数学基本調査」に関する報告書(概要版)に一部訂正を加えましたので、ファイルを差し替えました (2012年6月25日)。

具体的な修正箇所については、ファイル FAQ の末尾にある「修正の記録」をご覧ください。